児童福祉司ってどうしてこんなに辛いのかな?続ける自信がないし辞めたい。どうしたらいいの?
児童福祉司に興味のある方、児童福祉司がつらくて辞めたくなっている方へ。
私は児童相談所の児童福祉司(ケースワーカー)を3年ほど経験しており、担当は虐待・初期対応でした。
児童福祉司は、地方公務員。公務員といえば『高校生のなりたい職業ランキング』などで1位となる人気の職業ですね。
なので、「児童相談所のケースワーカーも公務員だから人気では?」と思われているかもしれません。
ところが実際は、
- 児童相談所で働くのは嫌だ。
- 児童相談所で働くくらいなら、公務員になりたくない。
- 児童相談所のケースワーカーにだけは、なりたくない。
このように敬遠されがちだったりします。
ほんとに?
児童福祉司は、自治体が募集をかけても『定員割れ』がよく起きてるんだよ。
児童相談所の職員不足はニュースにもなっています。こちらは子ども家庭庁。
現場の児童福祉司が口からもらすのは、
- つらい
- しんどい
- 激務・・・
- 責められる
- 病む・・・
このようなネガティブワードだったりします。
私が知るかぎりでも、児童相談所のケースワーカーは「異動したい」と言っている人がよくいます。
なぜなのでしょう?児童福祉司をよく知らない人には、不思議かもしれません。
そこで私は、児童福祉司を経験した者として、言いうる限りのことを書いてみようと思いました。
この記事の結論は次のとおりです。
この記事の結論
- 児童福祉司は、工夫しないと辛くて幸福感を得にくい仕事 → 辞めたくなる
- 児童福祉司は、工夫すれば幸福度を高められる仕事 → 辛いけどやりがいがある
私は虐待への対応を担ってきたので、『児童福祉司の虐待担当について』という条件付きですが。
この記事は、「なぜ児童福祉司はつらいのか?辞めたくなるのか?」「どうすれば児童福祉司(ケースワーカー)を続けられるのか?」といったギモンについて、
著書『科学的な適職』を頼りに、私の現場経験をまぜて展開する自論です(笑)
興味のない方には全く役に立たない話だと思います。でも、次のような方には新たな視点となる話でしょう。
この記事が役立つ方
- 児童福祉司になろうか迷っている方
- 児童福祉司の方
- 児童福祉司が辛い方、辞めたくなっている方
それではまいりましょう!
【児童相談所の児童福祉司の真実】つらい&辞めたくなる理由と対処法
『科学的な適職』は「自分にぴったりの仕事」を見つけるのに役立つノウハウを、科学的根拠をもとに解説した本。
次の7つの視点で仕事を選んでも、幸せにはなれないといいます。
間違った適職選び
- 好きを仕事にする
- 給料の多さで選ぶ
- 業界や業種で選ぶ
- 仕事の楽さで選ぶ
- 性格テストで選ぶ
- 直感で選ぶ
- 適性に合った仕事を求める
仕事えらび間違った。今までボクたちが信じてきたのは何だったの・・・
私は、上記の7つに踊らされてきた平凡な人間なので、度肝をぬかれたし、「この人生選択で良かったんだろうか?」と不安にもなりました。
学生のころは、先生方から「好きなことを仕事にしたら良い」「自分の適性に合った仕事を探そう」とか言われたもの。
しかし、上記の指摘をみるに、先生方も間違っていたのかな。きっと、多くの日本人の方々も、間違った視点で仕事を選んでしまっているのではないでしょうか?
かくいう私は、「給料の多さ」が仕事選びで大切だと思い、このブログで児童福祉司などの給料・年収、お金にまつわる記事をたくさん書いてきました。
しかも、こうした記事は、けっこう読まれていたりして。
読まれるってことは、ニーズがあるってことで、「いいじゃないか」と思っていたフシが私にはあります。
とにもかくにも、お金は私たちを惹きつけます。給料だって、多ければ多いほど幸せになれるイメージがあります。でも、実際は違うようですね。
では、どんな視点で仕事をえらんだらいいのか?正しいポイントは何なのか?
『科学的な適職』では、次の7つが徳目とされます。
適職選びの徳目7つ
- 自由 その仕事に裁量権があるか?
- 達成 前に進んでいる感覚を得られるか?
- 焦点 自分のモチベーションタイプに合っているか?
- 明確 なすべきことやビジョン、評価軸はハッキリしているか?
- 多様 作業の内容にバリエーションはあるか?
- 仲間 組織内に助けてくれる友人はいるか?
- 貢献 どれだけ世の中の役に立つか?
意外な7つかもしれないけれど、社会人にとっては「確かに」と思うポイントではないでしょうか?
続けて、これら7つをもとに児童福祉司を(私の独断で)5段階評価すると、次のようになりました。
7つの徳目 | 児童福祉司の評価 (5段階評価で5が最高) |
自由 | 2~4 |
達成 | 1~4 |
焦点 | 2~4 |
明確 | 1~4 |
多様 | 3~4 |
仲間 | 1~5 |
貢献 | 1~5 |
評価の数値に幅がけっこうあるので、「ハッキリしてないな」と思われたかもしれません。
振れ幅をつくったワケは、それぞれの人の環境や認識による違いを想定したからです。
言いかえると、私たちが工夫すれば、児童福祉司の仕事の満足度は、最大値まで高められます。
もしあなたが児童福祉司をやめたくなっても、まずはそれぞれの項目の値を最大値まで高められるように、工夫をしてみる価値はあると思います。
辞めるのは、それからでも遅くないはず。
ではでは、7つの徳目と児童福祉司の現場を比べていきましょう。
『自由』 その仕事に裁量権があるか?
『科学的な適職』では、例えば次のような点が『自由』の内容とされています。
- スケジュールを自由に設定できる
- タスク内容を好きに選べる
- 収入や社内ルールに好きな意見を言える
児童福祉司(ケースワーカー)の仕事に、自由はあるのか?裁量権はいかほどか?
私の答えはそこそこ自由だが、そこそこ不自由。5段階評価で「2~4」としました。
実際はケースバイケースであり、私たちの職階・人間関係・人員配置・担当職務などによると思います。
それでも、最低の1にも最高の5にもならないことには、ワケがあるのです。
スケジュールの自由について
児童福祉司は平時であれば、相手と自分の都合に合わせて、面接や訪問のスケジュールを設定できます。
よほどの事情がなければ、相手のペースに完全には合わせなくて構わない。だから、スケジュール設定にはそこそこの裁量権があります。
ただし、全くの自由とまではいかないですね。
対人支援の仕事だし、マイペースにはできない。相手のペースに合わせることも求められる専門職です。
例えば、保護者が昼間に仕事をしているなら、面接や家庭訪問は夜しかできません。(昼間に時間をつくってもらうこともありますが)
特に自由を制限されるのは、緊急対応。これが入ると、もともと組んでいた予定の調整にせまられます。
例えば、0歳の子どもが自宅にいて、保護者はいなくて連絡もつかないという虐待通告があれば、すぐにかけつけないといけないことがあります。
そこまでの命にかかわる事態じゃなくても、児童虐待の通告があると、多くの自治体は48時間ルールといって、48時間以内に子どもの安否を確認しないといけません。
特に金曜日の夕方などに虐待通告があると、現場はやや緊迫します。
なぜなら、土日は児童相談所は休日体制になり、対応ができなく(薄く)なるからです。
「休み明けに調査して対応しよか」と悠長なことは言っていられない。土日の間に48時間を超えてしまいます。
したがって、金曜日(今日)のうちに対応しないといけない。それが夜であっても。
昔は金曜日の夜は「華金」という言葉が使われて、遊んだり思いっきり羽を伸ばしたりできるものとされていました。
でも児童福祉司は、金曜日の夜にプライベートの予定を入れるのは難しい。
あらかじめ有給休暇をとったり、職場内でフォローがあれば切り上げられると思います。けれど、そう恵まれた現場ばかりではないでしょう。
つまり、児童福祉司(ケースワーカー)の仕事には、自由の制限されやすい性質があるのです。
部下に仕事をおしつけることができる立場(?)だったり、緊急対応を逃れられる立場なら、わりと自由かもしれません。
けれど、児童福祉司が自分のスケジュールを自由に決められるかというと、実態はそこそこ自由だし、そこそこ不自由でありましょう。
なお、こうした性質は、社会福祉士や精神保健福祉士、ソーシャルワーカーならみな大なり小なり経験していると思います。
自由が制限されるのは、対人支援職の宿命です。ただし児童福祉司は、これにプラスして「緊急対応」による自由度の制限がかかりやすいでしょう。
タスク内容の自由について
児童福祉司はタスク内容を好きに選べるか?
児童福祉司は児童相談所・自治体組織の一員。組織の一員である以上は、指示命令系統のなかで働かないといけません。
したがって、基本的には、タスクを自由に選べる立場ではないです。組織の歯車ってやつです。
ただし、ケースの支援の方針などは、担当の児童福祉司に委ねられることが多いのではないでしょうか?
例えば、
- 子どもを一次保護するか否か?
- 一時保護した子どもの処遇(家庭復帰、施設入所など)をどうするか?
これらは賛否両論おきるし、児童相談所ごとに答えは変わることがある。そうした条件の問いへの答えに、担当の児童福祉司の発言は大きく影響します。
これを「自由がある」とするか、「負担がある」とするか。
慣れないうちは、たぶん「負担がある」でしょう。
右も左もわからないのに「君はどうすべきだと思う?」と問われたら、「どうしたらよいでしょうか?」と聞き返したくなりますね。
ただし私の経験上、ケースワークに慣れて熟練するにつれて、自由と捉えやすくなります。
「だから大丈夫!」とまで、言いたいけれど言えない。そこまでが大変すぎるし、途中で折れてしまう人もいるから。
収入・労働条件に好きに意見を言える自由があるか?
収入について、自由に意見を言えるか?
雇われの身で「給料を増やしてほしい」などと言える立場の人は、そうそういないと思います。
もし労働組合があれば、「給与が仕事の大変さに見合っていない」などと意見は言えると思います。
もちろん、労働組合の交渉だけで収入を決められるかというと、答えはNO。しかし結果がともなわなくとも、好きに意見をいえる自由はあります。
社内ルールに関しても、好きに意見をいえるかどうかは、職場内での自分の職階・権威などによるでしょう。
新人の間は従うしかないし、自分の裁量はないようなもの。経験の浅い間はどうしても辛くなると思います。
児童福祉司の仕事上の『自由』の結論
「児童相談所の児童福祉司は自由か?」「仕事に裁量権をもっているか?」と聞かれたら、そこそこ自由だし、そこそこ不自由が私の結論。
でも、改善方法はあります。
まず、児童福祉司は公務員だし、現場は年功序列となることが多い。くだらない実態だけど、論理よりも職階・役職がモノをいいます。
新人の間は、『自由』は2ぐらいかもしれません。でも立場を得たり、実力・経験が積み上がるにつれて、4くらいまでは上がると思います。
児童福祉司は経験と年数を重ねるほど、裁量権が高まり、自由度も高まる。
ゆっくりペースだけど右肩上がりとなるので、仕事の満足度は高まっていきやすいかもしれません。
それでも『自由』の評価を5にしなかったワケは、児童福祉司が”相手ありきの仕事”だから。私たちだけの都合で物事を決めたり、進めることはできませんね。
『達成』 前に進んでいる感覚を得られるか?
『科学的な適職』では、『達成』の徳目について次のことが指摘されています。
- 人間のモチベーションが高まるのは、少しでも仕事が前に進んでいると感じられる時。
- あなたが「仕事が前に進んでいる」と感じられることが大切。錯覚でも良い。
- 理想は、目指すべきゴールがハッキリしていて、自分の仕事へのフィードバックが即座に得られること。
こうした指摘をもとに児童福祉司の『達成』について評価すると、工夫しないと最低の1となり、工夫すれば最大4まで高められます。
慣れない間は、最低の1ぐらいかもしれません。右往左往しながらタスクをこなしているだけでは、前に進んでいる感覚は得にくいと思います。
一方で、『児童福祉司がめざすべきゴールは、子どもの最善の利益にある』ということに腹落ちして支援できるようになった頃には、モチベーションは高まり、達成感を得やすくなります。
例えば、保護者との対峙、関係機関や所内での緊迫した調整などはストレスフルな仕事なことに違いはありません。
しかし、そうした仕事をすることが「前に進む」ことであり、子どもの最善の利益につながると確信していれば、辛くともモチベーションをあげることは可能です。
ただし残念ながら、どれだけ工夫しても最大の5に達するのは難しそうです。なぜなら、児童福祉司は”即座に”はフィードバックを得にくい仕事だからです。
なぜ”即座に”得にくいのか?
これは、児童福祉司が子どもの最善の利益をめざしながらも、子どもと直接かかわることが少ない、間接的支援を主とする職種だからです。
児童福祉司の一番のクライエントは、子どもです。
しかし、児童福祉司がよく関わる相手は、大人です。例えば、学校・市区町村などの関係機関、保護者、職場の同僚・部下・上司などですね。
そうした人たちは、子どもの関係者ではありますが、子ども本人ではありません。(なので、間接的支援といいます)
したがって、「子どもを支援したい」と思っていても、実際によく関わるのは大人であり、子どもと関わる時間は少ないのです。
例えば、児童虐待について保護者に指導しても、「児童虐待は解消されたか?」を即座に知ることはできません。
保護者が「今後は気をつけます」と言ったとしても、児童虐待が再発することはよくあります。
モニタリングとして経過を追わないと、わからないのです。
数か月、数年、果てはその子が18歳になるまで・・・、実際はもっと早くに児童相談所としては”終結”の形をとらざるをえませんが、「児童虐待が解消されたか否か」は1日でわかることではありません。
しかも、児童虐待は秘密にされやすく、子どもの捉え方の影響も受けるので、児童虐待が解消されたか否かを正確に知ることは、現実的には不可能と言えます。
したがって児童福祉司は、自分の仕事のフィードバックを得にくいです。
そうした仕事を重ねているうち、「自分の仕事は、本当に子どものためになっているのだろうか?」とギモンに思ったり、自信を失くしやすい。
これが児童相談所のケースワーカーの辛さです。
一方で、子どもに直に関わるのがメインの立場であれば、『達成』の徳目は5まで高められるでしょう。
例えば児童養護施設などは、子どもに直接関わります。自分が関わったフィードバックを即時に得やすく、子ども変化・成長を確認していきやすいですね。
そうした施設で働く児童指導員は、次のようなやりがいを実感しやすいです。こちらは私の過去記事なので、児童福祉司との違いをわかってもらえるでしょう。
『焦点』 自分のモチベーションタイプに合っているか?
性格テストで仕事を選ぶのは間違いとされていますが、”適職を探すのに役立つ唯一の性格テスト”とされるのが『制御焦点』です。
このテストは人間のパーソナリティを「攻撃型」と「防御型」に分けます。
- 攻撃型 目標を達成して得られる「利益」に焦点をあてるタイプの人
- 防御型 目標を「責任」の一種としてとらえ、競争に負けないために働く人
自分のタイプに合った働き方をしたほうが、能力を発揮しやすいし、仕事の満足度も上がるとのこと。自分がどちらなのか気になる方は、こちらのサイトで『制御焦点』のテストができます。
私はギリギリの点数差で『攻撃型』でした。どっちつかずな感じが、なんとも私らしい・・・。(振り切った結果のほうが、参考にしやすいんだけど)
では、児童福祉司は、攻撃型と防御型のどちらに向いている職種なのでしょうか?
私は次のように考えます。
- 「公務員」という属性は、安心感・安定感を実感しやすいので、防御型に向いている。
- アセスメントや虐待リスクの判定などは、最悪の事態を想定して着実にする必要があるので、防御型に向いている。
- 「緊急対応」は対応のスピード感、短時間での決断に迫られるため、攻撃型に向いている。
つまり、児童福祉司は『攻撃型』にも『防御型』にも、向いている業務と向いていない業務があるということです。
どっちつかずな結論ですが、これが実際ではないでしょうか?
向いていない業務があるので、どの児童福祉司さんも「向いていない」と感じる時がある。
向いている業務もあるはずなのですが、「向いていない」に着目すると、ますます向いていないと感じてしまうことでしょう。
このようなワケで、児童福祉司の『焦点』の項目は2~4の評価としました。ちなみに、私は3ぐらいの感覚です。
『明確』 なすべきことやビジョン、評価軸はハッキリしているか?
『明確』について児童福祉司を評価すると、1~4が私の答えです。
ここで大切なのは次の2つです。
- 組織に明確なビジョンはあるか?なすべきこと
- 人事評価はどのようにされているか?
組織に明確なビジョンはあるか?
児童相談所には『子どもの最善の利益』というハッキリした組織目標があります。
しかし、「絵に描いた餅」とならぬよう、現場でどれだけ工夫されているかがポイントでしょう。
実際には、社会からのバッシングに怯えて、”組織防衛・自己の保身”に走りたくなる児童相談所もあるのではないかと思います。
そもそも、児童相談所だけじゃなく、行政組織そのものが、全体的に失敗の許されない、チャレンジしにくい雰囲気になっているように思います。
では、現場でヒラの児童福祉司は、どうすればいいのでしょうか?
私がやっていたのは、まずは個人でビジョンを意識することでした。私たちがめざすべきは、子どもの最善の利益が守られる社会の実現であると。
そのために、目の前のケース対応で、「どうすることが子どもの最善の利益につながるか?」と問いをたてて、答えを考えていく。
すると、自己保身の選択肢は消せますし、その時のベストな選択を選びやすくなりますね。
要は、児童福祉司の仕事には明確なビジョンがあるはずなのです。
あとは、「子どもの最善の利益」をどれだけ意識して仕事をできていて、そこから「なすべきこと」を導き出せているか、によると思います。
それが難しいんだけどね。
「支援の組み立て方がわからない」という児童福祉司1年目の読者さんのギモンにお答えしたことがありますので、慣れるまでの参考にしてもらえると思います。
人事評価はどのようにされているか?
『科学的な適職』によると、人事評価では「個人の貢献と失敗を目に見える形で判断できるしくみは整っているか」が大切のようです。
公務員は「人事評価制度」にもとづいて評価されます。
各自治体の児童福祉司も、これにならって評価されているでしょう。
でもね、児童福祉司の仕事の評価って難しいです。
「失敗」は割と明らかになるが、「成功」はわかりにくいことが多いのではないでしょうか?
児童福祉司の仕事は数値化しにくいことが多い。仕事の成功も失敗も、何をもって判断すれば良いのか?
例えば、児童虐待が解消されたかどうかは、すぐにはわかりません。これは先ほど申し上げたとおりです。
「子どもの最善の利益」を実現できたか?これは神のみぞ知ることでありましょう。
つまり、児童福祉司の仕事を客観的に「成功した」と評価することは、どうも相応しくないのです。
一方で、失敗は割と明らかになります。残念ながら・・・。
例えば、もし子どもの命が失われてしまうようなことがあれば、それは失敗と言わざるをえないでしょう。
どの児童福祉司が、子どもの最善の利益につながる仕事を最もできたか?これを目に見える形で判断できるしくみは、私には思いつきません。
というわけで、児童福祉司の人事評価は難しい。自分への評価に納得できない児童福祉司さんは多いかもしれません。
ゆえに、『明確』について児童福祉司を評価した結果は、1~4としました。
『多様』 作業の内容にバリエーションはあるか?
『多様』で大切なのは、次の3つのポイントです。
- 自分がもつ色々なスキルや能力を幅広く活かせる
- 業務の内容がバラエティに富んでいる
- 仕事の始まりから終わりまでの工程に、どこまで関われるか?
これらを満たすほど、仕事の幸福度は高まります。
では、児童福祉司の仕事は『多様』か?私の評価は、3~4です。
自分がもつ色々なスキルや能力を幅広く活かせるか?業務の内容がバラエティに富んでいるか?
児童福祉司は、実に多様な仕事をしています。
こちらの過去記事で、児童福祉司の一日の流れをまとめたことがあります。「児童福祉司の業務は広い」とわかってもらえるでしょう。
コミュニケーションのスキルを活かせるし、文書のスキルも活かせます。
また、仕事内容もバラエティに富んでいて、保護者や学校だけでなく、警察・家庭裁判所・検察庁などとも関わります。
子どもや保護者についても、同じ人は1人としていないので、刺激は絶えずあります。
仕事の始まりから終わりまでの工程に、どこまで関われるか?
どういうことかというと、『科学的な適職』で次のように解説されています。
たとえば、あなたが衣類の販売員としてアパレルの会社に入った際に、新しい服の企画会議にも参加でき、デザイナーに要望を伝えられ、完成した商品を売り広める段階まで関わることができれば、たんに「君は客に服を売ればいい」とだけ言われるよりも確実にモチベーションは上がるでしょう。
『科学的な適職』徳目4 明確より
児童福祉司は全工程ではなく、一部の関わりが多いので、つらいポイントです。
例えば、児童虐待対応(軽微なケース)の始まりから終わりまでを、ざっくりと行程にしますと、
- 児童虐待の通告を受ける(受理)
- 調査をする
- 子どもの現認をする
- 保護者に児童虐待について指導する
- 関係機関と情報共有、対応依頼など(終結)
このようになるでしょう。
虐待対応はスピードが肝心です。一人が全ての行程を行おうとすると、時間がかかりすぎます。ゆえに、チームで手分けして事にあたるのです。
だから、どうしても児童福祉司が関われる工程は一部になりがちです。
そもそも、児童相談所が子どもや保護者に関われるのは、部分的です。児童相談所が関わるケースは『専門的な知識及び技術を必要とするもの』とされています。
≫参考:児童相談所運営指針 第1章 児童相談所の概要 第1節 児童相談所の性格と任務 2. 児童相談所の任務、機能
したがって、児童相談所はケースの状況が落ち着いたり、支援を市区町村に託せるとなれば、支援を『終結』することになります。
そうしないと、膨大な業務に圧死してしまう。
児童福祉司はケースを終結できる時に、1つの仕事から解放される一方で、その後の工程には関われなくなり、モチベーションダウンしてしまいます。
このような児童福祉司の仕事ですから、『多様』の項目は3~4の評価にしました。
『仲間』 組織内に助けてくれる友人はいるか?
組織内に助けてくれる友人がいるかどうか?
これが大切な理由は、『職場に3人以上の友だちがいる人は、人生の満足度が96%上がり、自分の給料への満足度は2倍になる』という調査結果があるからです。
友人と呼べるまでは難しくとも、助けてもらえる環境にあるかどうかということですね。
運よく、職場内の人間関係が良ければ、仕事の収入ややりがいへの満足度も高まります。
これは、個人と置かれた環境次第なので、評価は1~5としました。
人間関係については、実際に児童福祉司になってみないと、どうなるかわからないですね。赴任後も、異動があるごとに状況が変化するでしょう。
では、「賭け」で飛びこむしかないのかというと、そうではありません。
仲間のいる仕事を選ぶには、「その組織に、自分に似た人がどれくらいいそうか?」が指標となります。
煮てさえいれば、好感度は高まり、友人となれる可能性が高まります。
ですから、児童福祉司になろうかどうか迷っている人は、児童相談所の児童福祉司に、自分と似てそうな人がいるかどうかをチェックすることです。
例えば説明会などがあれば、積極的に行ってみることをオススメします。
ちなみに、私の場合、児童福祉司に自分と似た人がいたかどうかでは、1割ぐらいだったと思います。
そうした仲間ができた時は、つらい仕事にもやりがいを見出だすことができました。
『貢献』 どれだけ人や社会の中の役に立つか?
児童福祉司は、漫然と仕事をしていると、自分の仕事が子どものためになっているか、わかりにくいです。
しかし、「自分の仕事が子どものためになる」という信念をもって仕事にあたることができていれば、モチベーションは高く保てるでしょう。
ゆえに、『貢献』に対する児童福祉司の評価は1~5としました。幅が大きくなったワケは、私が最低の1も、最高の5も経験したからです。
児童福祉司は、子どもを守るために間違いなく必要な人たちです。
でも、当の児童福祉司は「人の役に立てている」「社会に貢献できている」と実感していないことが多いんじゃないでしょうか?
また、児童福祉司が「社会に貢献できる」というのは間違いないですが、児童福祉司自身としては支援を振り返ってようやく『頭で理解』できることです。
日々は『貢献』を実感していない児童福祉司さんが、かなり多いと思います。
児童福祉司は、子どもの意に沿わないことを、せざるを得ないことがある
児童福祉司は、子どもの意に沿わないことを、せざるを得ないことがあります。というか、そういった仕事が多いです。
子どものために仕事をしているのに、子どもの嫌がることをするの?
その通りです・・・。
児童相談所のケースワーカーは、子どもが嫌がっても、断行しないといけないことがあります。
最たるものが『一時保護』です。
子どもに虐待を受けている認識がないけれど、児童相談所としては大きなリスクがあると判断すれば、子どもが嫌がっても一時保護しないといけません。
今がどれだけ悪い家庭環境でも、自分の家以外を知らない子どもにとって、家から離れるのは不安で怖いです。とうぜん、一時保護は嫌がられます。
また、性虐待のように、「言わなければ良かった」「自分が話したことで、家族がめちゃくちゃになってしまった」と感じている子どもにとっては、一時保護は望まれないことが多いです。
他にも例えば、学校で子どもが「昨日、親に蹴られて痣ができたけど、『学校の先生には全体に言うなよ』って言われた。」と開示した場合。
児童相談所に通告がはいり、児童福祉司は学校に行き、その子どもに話を改めて聞いたとします。
そして、児童福祉司は『保護者に話をしないといけない』と考え、子どもにその必要性を伝えます。
しかし子どもは、
- 「学校の先生に言ったのか!」と怒られるから、保護者には話さないで欲しい
- 児相が親に言っても変わらないだろうから、言わないで欲しい
- 自分でいうから、児相は家には来ないで欲しい
- 一時保護だけは絶対いやだ
このように希望することがあるわけです。
では、この子の言う通りにすれば、児童虐待の対応としては良いでしょうか?
もし、保護者に虐待に関する指導をしなかったことで、更なる虐待を受けることがあったら・・・?
子どもの希望を聞き入れずに、保護者に指導して、口止めを破った子どもが報復にあってしまったら・・・?
一時保護を強行した結果、口止めを破った子どもとして、親が子どもを捨ててしまったら・・・?
などなど、さまざまな可能性を考慮し、子どもの希望をききつつも、その通りにはできないことが多々あるのです。
社会福祉士や精神保健福祉士となった人は一度は学んだであろうバイスティックの7原則の1つに、『自己決定』があります。
しかし、児童虐待の対応においては、「子どもが決めたことだから」と子どもの希望に従うことは、結果に対する責任を子どもに押し付けることになり得ます。
子どもの最善の利益を考えて、子どもの意に沿わないことをしないといけないことがある。
そんなことをするので、子どもから感謝などされず、嫌われることもあります。だから、児童福祉司は「嫌われても大丈夫な力のある人」が向いていると思います。
客観的にみれば、児童福祉司は間違いなく必要な仕事であり、子どもと社会に貢献する仕事です。
しかし、漫然と仕事をしているだけでは、貢献できている実感をもてなくなるでしょう。
子どもと社会に『貢献』できている実感を取り戻すには、次の2点がポイントです。
児童福祉司が『貢献』の実感を得るには
- 『子どもの最善の利益』を軸に支援を考え、つらくても実行すること
- クライエントを尊重する言葉を吐くこと
こちらの記事もご参考にしてくださいね。例え事務所内でも、クライエントを侮辱する言葉を吐くことは、天に向かってツバを吐くことになります。
まとめ
最後にもういちど、この記事の結論です。
この記事の結論
- 児童福祉司は、工夫しないと辛くて幸福じゃない仕事 → 辞めたくなる
- 児童福祉司は、工夫すれば幸福度を高められる仕事 → 辛いけどやりがいがある
たぶん、全国の児童福祉司さん達の実感と通じると思います。
”工夫”がポイントとなるワケは、次の表のとおり、仕事の満足度に関わる7項目において、変動幅がとても大きい仕事だからです。
7つの徳目 | 児童福祉司の評価 (5段階評価で5が最高) |
自由 | 2~4 |
達成 | 1~4 |
焦点 | 2~4 |
明確 | 1~4 |
多様 | 3~4 |
仲間 | 1~5 |
貢献 | 1~5 |
漫然とやっていても、やりがいは乏しいでしょう。
でも、本記事で申し上げてきた対処法を参考にしてもらうと、児童福祉司の仕事の幸福度は高めることができるはず。希望はあるのです。
特に、7つの徳目のうち、『明確』『達成』『貢献』の改善につながるであろう方法は、こちらの記事でお話しています。
児童福祉司を辞めたくなっている方、新人の児童福祉司さんは、参考にしてみてください。
新人の児童福祉司さんは、こちらの記事も参考になるはず。1年目の児童福祉司さんからの質問に答えたものです。
なお、心身を整えなければ、児童福祉司(ケースワーカー)はおろか、社会福祉士や精神保健福祉士というストレスの多い精神労働を長期的につづけることは難しいです。
現場でこのように私がいくら口酸っぱくいっても、周りではメンタル不調になって休職・退職する人があとを絶ちません。
睡眠・運動・食事なんぞと言っても、口やかましい親や教師、医者のいうことのような退屈な説教なのかもしれません。
それでも申し上げたい。睡眠・運動・食事を、より良質にすべきです。具体的なやり方はこちらの記事にまとめてあります。
あるいは、精神科医の樺沢紫苑先生のこちらの著書も「何をしたらよいか」がTODOとしてわかるので、オススメです。
そのうえで、7つの徳目の改善などの話が成り立ちます。
『科学的な適職』では、仕事の幸福度を上げるワークやテストなども紹介されているので、こちらも読んでみると救いになるはずです。
児童相談所の児童福祉司は、どうしても辛い仕事です。しかし工夫次第で、満足度を上げることはできます。
完璧に快適かつ幸福な仕事は、現実には存在しないでしょう。
やりがいは、苦労や辛さとセットでやってくるものだと思います。
あなたの今後を応援しております。それではまた!
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