街を歩く

年明け早々日本橋から小伝馬町まで歩く|東京散歩

2022年が始まり新年の気分をまだまだ引きずりつつ、仕事始めの1月初頭。新年のご挨拶まわりでしょうか。忙しそうなスーツを着た人たちが行き交う中、日本橋へやってきました。

とはいってもまだ暦は松の内。デパートには門松が飾られ新春セールの広告が出ていて、少し華やかな気持ちになります。

五街道の起点ともなり商いの中心だった場所、日本橋。まだ年末年始の賑やかさを残した日本橋を、少し味わってみようと思ったのでした。

 

イメージの日本橋

歴史の授業で使う「資料集」に必ずと言っていいいほど登場するのが、歌川広重の『日本橋 朝之景』。あの有名な日本橋の浮世絵です。

参勤交代と思われる行列が橋を渡ってこようとしている最中、橋の手前では魚売りや漁師たちが慌ただしく朝の仕事をしているあの浮世絵。

色んなところで見かけるこの浮世絵のまさにその場所が今も日本橋に重要な場所として残っているんだと知った時は、初めて自分達の生活している現代と、江戸時代って本当にとても長い長い時間でつながっているのだと実感し、とても感動したのを覚えています。

私が日本橋をゆっくりと散策に訪れたのは社会人になってからでした。日本橋は、だいぶ再開発が進んだと言われるようになっており、多くの綺麗なビルが立ち並んでいました。

 

日本橋から兜町まで

地下鉄日本橋駅のD3出口から出るとそのすぐそばは、江戸橋交差点。

コレド日本橋には、目をひく新春セールの真っ赤な広告。

そこから日本橋を渡って、日本橋本町の方へ。日本橋を渡るというよりも高速をくぐっている感の方が強い気もしますが、この高速道路も2035年には地下ルートが開通して2040年には完全撤去されるそう。

五街道の起点である道路元標があったり華やかな麒麟が鎮座する柱。徳川慶喜筆という「日本橋」の文字に戦時中の戦火の跡などなど。この場所に、存在し続けてきた時間を思わせる見どころが多い橋。

これだけの重要文化財を跨いででも、高速道路をかけたという当時の日本の戦後からの立ち上がりの勢いって凄いものだったのかなと、景気の良かった時代を知らない世代としては少々圧倒されてしまいます。

そして橋を渡ると日本銀行本店や三井本館、三越本館など石積みの明治期の洋風建築の並ぶ通りへ。クラシカルな街並みが現実味がないほど素晴らしいです。

そこを抜けると老舗が並ぶ中央通り。コレド室町の1階に入る創業は江戸という老舗などを眺めつつ日本橋の新しいスポットとなった福徳神社へ初詣に向かいました。

しかしそこには長蛇の列。まだまだ年が明けたばかりだという事を実感。大人しく飲食店が立ち並ぶ「むろまち小路」へ。

再開発で綺麗になった大通りと対比するように、古いお店なども残る細い路地が縦横に走るエリア。ちょうどお昼の時間帯でお店の前にはサラリーマンの列ができているお店も多くありました。

表通りでは「まだまだ年が明けたばかりだ」などと思っていたけれど、世間は2022年がしっかりと始まっているよと言われたようでした。

そんなサラリーマン達が愛するお店と並んで細い路地の一角にあるのが、楊枝の専門店「さるや」。

クロモジの木で、一本一本手作業で作られた楊枝のお店です。和風の「大入り」の文字が入った桐箱や歌舞伎の隈取りや干支のとらのイラストの桐箱に入ったもの、贈答用に名入れができる桐箱のもの、侍のセリフつきのさむらい楊枝など、ちょっとした贈り物に喜ばれそうな物が並んでいました。

楊枝侮るなかれ。

クロモジの香り高い楊枝を使うのは、自宅ではなかなか気がひけるのですが、せっかくだからと私も550円の20本入りのものを一つ購入。

これで、家で食べるちょっとした和菓子でもなんだか気分が違うというものです。満足。

そこからさらに進み江戸橋北交差点を抜けて江戸橋を渡ると目の前は日本のウォール街、兜町でした。

 

新旧兜町

江戸橋を渡ると正面に見えてきたのが日本橋郵便局。ふと目をやると、日本郵便発祥の地とというプレートが壁に埋め込まれていました。

明治に日本に新式郵便制度が発足した時に、「郵便役所」が置かれた場所らしい。制度ができた当初は、政府直轄の郵便役所が東京・京都・大阪の三府に置かれ、東海道の各宿駅には民間協力で「郵便取扱所」が置かれたそう。

明治政府は財政難で、全国に郵便役所を置くことが難しかったためだそう。

なるほど。横浜駅とか東京駅の横に大きな郵便局があるけどあれは取扱所だったってことなのかな??とそんなことを思いつつ日本橋から伸びる首都高をくぐれば、そこは東京証券取引所の裏側。

明治から「金融の街」として知られてきた兜町も、証券の電子化などにより現在兜町にオフィスを持つ証券会社が少なくなったそう。

以前NYへ旅行した際に、マンハッタンのウォール街も全く同じようなことを聞いたのですが、やはり世界的にそうなのでしょうか。

とは言っても、やはりウォール街の街並みはこれまた歴史の資料集で眺めていた街並みそのものが残っており、大変感動しました。そしてここ兜町もまさに同じく。古い歴史がたくさん残っていました。

渋沢栄一が暮らした居住跡や、最古の銀行である第一国立銀行の跡地、そして今も残る証券取引所。小さい街の区画には現在もちらほらと証券会社の看板が見えます。

そんな兜町では現在空いたオフィスの再活用が進んでいるそう。

証券取引所の真裏には第一国立銀行の別館だったというとてものをリノベーションしたホテルなどを含むK5という施設や、古い物件を活用したパティスリーやリノベカフェなどおしゃれなお店が点在していました。

そこで私が立ち寄ったのは、かつて証券マンたちが「鰻上り」にあやかって通ったという鰻屋さん「松よし」さんの焼き場をリノベーションしたカフェ「SR」。

スウェーデンからローストされたという豆を、ローストの具合を自分で選んでオーダーするコーヒー。お店の方にレモンブラウニーもおすすめしていただいたので一緒に注文しました。

コーヒーはとても深みのある、確かにブラウニーによく合うコーヒー。そういえばスウェーデンってフィーカーという甘いものとコーヒーでティータイムをする文化があるというのを聞いたことがあります。

確かにこれは甘いものとよく合うなとコーヒーを堪能。店内もアンディウォーフォールにまつわる洋書が置かれていたり、アートな小物があったりとおしゃれ。のんびりと雰囲気を楽しむのもまたよし。

確か今はNYのウォール街もアートの街になっているというのを誰かのyoutubeで見たのを思い出し、街って暮らす人や時代で変わっていくものと改めて実感しました。

さてカフェを出て証券取引所を通り、かつて「鎧の渡し」があったという鎧橋を渡って人形町方面へ。

 

兜町から小伝馬町まで

兜町から人形町のあたりは戦災を奇跡的に免れたエリアだそう。バブルの頃に多く撮り壊れされたそうですが、今でも古い建物が残っています。

戦災が酷かった東京には、ときどきぽっかりとこのような時代を教えてくれるような場所が残っていて、それがあまりにもさりげなくて驚くことがあります。

少し歩いて、強運の神様の小網神社へ続く行列を横目にさらに先へ。日本橋本町の周辺と違いまだまだお休みされているお店も多く静な雰囲気。ひとつ通りを挟むとまた違う街の雰囲気です。

そこから先に歩いていくと、人形町のメインストリート人形町通りに到着しました。交差点にあるからくり時計がちょうど時間を知らせていていました。

人形町を渡ると、古いお店が軒を連ねる甘酒横丁。こちらは先ほどまでの雰囲気とうってかわってとても賑やかでした。

美味しいと聞いて立ち寄りたいと思っていた鯛焼きのお店「柳屋」さんは長蛇の列。職人さんが一生懸命たい焼きを手焼きしていますが、全く追いつかない様子。

これは先が見えないと、たい焼きを諦め通りを散策しながら歩き出しました。

甘酒横丁の名前の通り、通りの酒屋さんは甘酒を販売しているようで、甘酒を片手に食べ歩きを楽しむような方も多く見かけました。

着物などの衣裳を入れる「つづら」のお店「岩井つづら店」や稲荷寿司が人気の「志乃多寿司」さんなどを眺めて進むと、正面に明治座。

明治時代からの長い歴史を持つという東京を代表する劇場の明治座は、この日も新春公演が行われていました。

そこから久松警察署を右折し、みどり通りを進み、着物や呉服の卸商などの繊維問屋が集まる織物中央通りを超えて再び人形町に出ると、小伝馬町の交差点に到着しました。

 

東京のブルックリン「カミサリー日本橋」

小伝馬町は江戸時代には旅人宿で賑わい、多くの問屋も連なっていた地域だそう。

そんな小伝馬町のオフィスビルにできたフードコートが「カミサリー日本橋」。カフェ、ベーカリー、ピザ、タコス、クラフトビールの5つの人気店が集まっています。

佇まいからして、とてもおしゃれでSNSで人気を集めそう。自動ドアを抜けて中に入ると横に広い店内に、店舗ごとのカウンターとその前にはイートインスペースが並んでいました。

入り口のすぐ横のイートインスペースでは、サラリーマンの方が7、8人ほどでクラフトビールを楽しんでいました。それぞれにタコスやピザを買って、それぞれに好きなクラフトビールを買って、みんなでワイワイ。

その少し離れて場所では、とても今っぽいおしゃれなカップルが、ドーナツとタコスとコーヒーを買って写真を撮っていました。

今回ここへ来た目的は、タコス。ニューヨーク・ブルックリンにあるレストランの姉妹店「神田金物通り北出食堂」が手掛けたタコス専門店というこのタコス。一度食べてみたいと思っていました。

ドキドキしながら、3ピースセットもあるけれど、一応1ピースで。チキンタコスをオーダーしました。待つこと5分ほど。程なくして呼ばれ、とても美味しそうなタコスを手渡されました。

ライムを絞って、柔らかいトルティーヤを巻いて一気にかぶりつく。海外はおろか日本でもそうそう食べたことのないタコス。それは、びっくりするほど美味しくて、3ピースセットの意味を納得したのでした。これは、ひとつじゃ物足りない。

いつかメキシコで本場のタコスを食べてみたいなと思ってしまうほど、美味しいタコスをサラリーマンとおしゃれカップルに挟まれながら一気に完食。ただのおしゃれスポットにあらず。

次は、ピザやクラフトビールもいいなと、改めてフードコートをぐるっとして外に出ました。

気づけば外は夕暮れ。小伝馬町の駅へ向かうと正面には夕陽に照らされたスカイツリーがビルとビルの合間からスッと伸びて、夕暮れを知らせるように点滅しはじめました。

 

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hitujico/ひつじこ
東京都内に住んでいます。 好きなこと・興味関心は、街歩き、旅行、本を読むこと、料理、美術館巡り、喫茶店巡り、文房具など。