Verve Analog Machinesはアナログモデリングで確固たる地位を築いたUADがリリースしたアナログマシンの歪みを再現したプラグインです。
「またサチュレーションかよ!どんだけ出すんだよ!」私の最初の印象はこれでした。おそらく多くのユーザーも似た印象を持ったのではないでしょうか。
しかし、UADです!UADのブランド力からリリースされる製品のクオリティは納得の行くものばかりです。また同社にはすでにテープエミュレーション系のプラグインがあるにも関わらず類似プラグインを出してきたということはそれらにはない大きな魅力がないと飽和市場で勝ち残れません。
そこで使ってみるとなぜ、このご時世にUADがこの製品をリリースしたのかがわかりました。そこにはUAD的な戦略があるように感じます。この記事ではその部分に焦点をあてながら、音質、機能性等を解説していきます。
Verve Analog Machines 概要
メーカー | Verve Analog Machines |
製品名 | Universal Audio(UAD) |
特徴 | UA独自のテクロノジーにより歪みサウンドを定義 4つのユニークなマシンのサウンドVerve Essentials 10種類の特徴的なマシンの歪み(無印) |
システム | すべてのテーブルタイポグラフィはMサイズにする |
認証方式 | iLok |
認証数 | 2 |
マニュアル | 英語 |
価格 | Verve Analog Machines Essentials | 通常価格99 Verve Analog Machines (無印) | 通常価格$199→$99 |
備考 | 目立って使用者がいればその名前やコメントも追記 体験版の有無 アンインストーラーの有無 |
Verve Analog MachinesはUADとして初となるモデリング元を明記していないアナログディストーション及びモジュレーションのエフェクトプラグインです。
カテゴライズ的にはアナログ機器のサチュレーションを再現したものになります。UADのアナログサチュレーションはOxide Tape Recorderや Studer A800 Tape Recorderなど実に10年ぶりの新作になります。
音質も前者とは異なり現代的な解像度が高く、名前の通りVerve「気迫・熱情・活気」に溢れたサウンドになっています。
Verve Analog MachinesはEssentialsと(無印)の2つのグレードが存在し、両者の違いは使用できるユニットの数がVerve Analog Machines Essentialsが4つに対して、Verve Analog Machines は10のユニットが使用可能です。
Verve Analog Machines Essentialsは通常$99ですが、4月30日まで1ヶ月間無料で使用可能です。
上位にあたるVerve Analog Machines は通常価格$199ですが、イントロ価格として4月30日まで$99でリリースされます。
Verve Analog Machines レビュー
ローファイ系から高品質な歪み系までを幅広くカバー
Verve Analog Machinesではジャンルに合わせた様々な飽和サウンドを楽しめます。UAD特有のもっちりとしつつ高品質なテープサウンドから、ギターのディストーション的なサウンドまで歪みの幅は思っている以上に広いです。
また、ユニットによってはwarble(テープの揺れ)機能も搭載しているのでよりローファイ的なアプローチも可能です。
では実際のサウンドを確認してみます。
16小節のジングル的な曲の中でVerve Analog Machinesに搭載されているパラメーターをオートメーションで動かしながら音質の比較を行います。
Sweetenはスタジオテープマシンの艶と温もりのあるサウンドからオーバードライブサウンドまで可能なユニットです。
ユニットの中で一番ハイファイで個別のトラックからマスターまで幅広く扱える音質です。
edgeは穏やかな倍音を加え、サウンドに微妙なクランチ感を与えるユニットです。sweetenと比較すると若干音がこもった印象がありますが、ジャンルによってはマスターにかけても面白いです。
glowは穏やかな倍音を加えてサウンドに微妙な暖かさを与えるユニットです。ユニットの中で一番フラットに近い特性を持っているので素材を選ばすに使用できます。
warm はよりヴィンテージなスタジオテープマシンの温かみのあるサウンドを作り出すユニットです。低域だけが持ち上がるので音のふくよかさを出したいときに活躍します。
thickenは厚みを増す半世紀前に録音された音を作り出すユニットと表記されています。10kHz以上が割とばっさりとカットされている印象なのが特徴です。
Vintagizeは祖父母よりも古い録音の音という説明にあるように、より古く癖のある音色を生成するユニットです。
7.5kHz以上がカットされているので古いラジカセのような音質になります。
distortはヴィンテージの真空管プリアンプを限界をはるかに超えてディストーションを生成するユニットです。パラメーターの特性や音質はglowと酷似しています。こちらのユニットを使う理由としてはdriveを30以上にしたときの歪み感がポイントになります。
pushはdistortはdriveノブを上げることで歪みが増えていくタイプですが、overdriveは最初から歪んでおり、使い所はかなり限られてくる印象があります。
fireはスタジオのテープマシンの歪みを最大級にしたような印象のサウンドです。ベースを歪ませたい場合などにハマることがありますが、やはり使い所が難しい印象のある歪みです。
Sputterにはトランジスタプリが爆発寸前という説明がありますが、文字通り爆発しそうな音を生成します。
音質的に思ったのは万能な音とクリエイティビティを求められる印象がありました。どのシーンで使うのが最適なのかはユーザーによってことなりますが、やはり万能系の歪みサチュレーションサウンドはUADブランドの音がしています。選ぶだけでこのクオリティの質感が手に入るのはやはり便利です。
ミキシングエンジニアとしてより作編曲時のモチベーションが上がる用途で使ってみるのもオススメです。
Verve Analog Machines とEssentialの機能の違い
無印とEssentialの違いは主に使えるユニット数とパラメーターの違いとプリセットの違いになります。
EssentialではDrive機能しか使えませんが、(無印)では追加のパラメーター(warbleまたはtone)が用意されています。
EssentialではMore machiensというタグが用意され、クリックすると公式サイトに飛ぶ仕様になっています。
使えるユニットの違いは以下のようになります。
Verve Analog Machines | Verve Analog Machines Essentials | |
sweeten | ○ | ○ |
edge | ○ | ✗ |
glow | ○ | ✗ |
warm | ○ | ○ |
thicken | ○ | ○ |
vintagize | ○ | ○ |
distort | ○ | ✗ |
overdrive | ○ | ✗ |
fire | ○ | ✗ |
sputter | ○ | ✗ |
この他、A/B比較機能にAtoBのコピーペースト機能、GUIサイズの変更など基本的な機能ももちろん搭載しています。
パラレル処理ができないのが残念
個人的に思ったのは、パラレル処理ができないのが残念です。派手に歪むoverdriveなどもパラレルミックスできるとより使用頻度があがる予感があったので、今後のアップデートに期待したいところです。
ユニット毎にパラメーターは記憶されているのが良い
Verve Analog Machinesではユニットを選ぶけのかんたん操作が売りでもありますが、その際に2つのノブのパラメーターの位置を記憶してくれているのは助かります。
CPU負荷について
オーディオステレオファイルにVerve Analog Machinesを使ったCPU負荷ですが、高い印象はありません。ユニットによってはこの画像の半分程度になることもあります。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
通常 | セール | |
Verve Analog Machines価格 | $199 | $99 |
Verve Analog Machines Essential | $99 | 一月無料 |
Verve Analog Machines 価格考察
Verve Analog Machinesでは10のユニット、Verve Analog Machines Essentialでは4つのユニットを選ぶというだけのプラグインですが、その音質は納得の行くレベルではあります。
ある程度音圧がある方が作編曲時にモチベーションが上がるのでマスタートラックにそのようなプラグインを挿して作業している人もいます。
Verve Analog Machinesでは10のユニットで$199は正直高い印象ですが、セール時に$99ならば1つあたり$9.9ですから、お買い得な印象があります。
ただ、サチュレーション市場は飽和気味であり、各メーカーがこぞって独自性の強いサチュレーション系プラグインを出してきている中でUADの今回のサチュレーションプラグインがどのように評価されるのかに興味があります。
個人的に音質以上にブランド力も購入のポイントにしてよいと思うタイプなので、寄らば大樹の陰ではありませんが、安心のUADサウンドが大好きな人はVerve Analog Machinesは購入価値は大いにあります。
PluginBoutiqueで購入すると月替りプラグインが無料でもらえます。無料と行っても100ドル相当に売っているプラグインがもらえるのでかなりお得です。
4月の無料特典は
Audiified U78 Saturator または Excite Audio VISION 4X Lit
注意点
- Rent To Own プランは、無料トランザクション ギフトの対象外
- Plugin Boutique アカウントが登録されていることを確認してください。アカウントをお持ちでない場合は、 こちらから作成できます。
- 有料製品をバスケットに追加します (この特典は 無料製品には適用されません )。
- 無料ギフトを選択し、チェックアウトを完了してください。
- 取引の全額 に対してバーチャル キャッシュやクーポンを使用し ないでください。 (ただし、100% 未満の量でも問題ありません。)
- このオファーの製品をすでに所有している場合、代替製品を提供することはできません。
- この製品のコピーを別の製品と交換することはできません。
- この製品のコピーを再販することはできません。
- このプロモーションでは、製品の 1 コピーを請求する資格があります。
- 1 回の取引につき 1 つの無料製品のみを請求できますが、複数の無料ギフトの場合は、すべての無料ギフトを取得するまで個別のトランザクションでこのオファーを引き換えることができます。
U78 Saturatorについてはこちらで詳細を確認できます。
PluginBoutiqueでの具体的な購入方法はこちらの記事が参考になります!
まとめ
何度も言いますが、サチュレーション市場は飽和状態なので、「またサチュレーションかよ!」というユーザーも多いでしょう。実際私も「UADも出してくるの??」というのが第一印象でした。
しかし、実際使ってみるともっちりとした音質はいかにもUADブランドの音であり、この系の音が好きな人にはとても嬉しいプラグインだと思いました。
UADのテープサチュレーション系プラグインであるOxide Tape Recorderや Studer A800 Tape Recorderは10年まの製品です。音質が悪いわけではありませんが、現代ポップスに最適とは言いづらい部分があり、その穴を埋めに来たUADの戦略は正しいと思います。
また、今回ほとんどのパラメーターを排除したことで、より直感的なツールになったことはUADの今後を占う製品にもなる可能性がありそうです。
Verve Analog Machinesの売れ行き次第ではVerve シリーズ的な製品がリリースされる可能性があり、それはそれで楽しみです。