【妄想小説シリーズ】パイロット知識0のオレが妄想だけで航空小説を書く【銀翼のデスパレート】 | 朝鮮学校を卒業したオレが今思うこと

朝鮮学校を卒業したオレが今思うこと

朝鮮学校卒業 既婚
得意分野:ジムトレ、数学、妄想小説、婚活経験談(シモ含む)
座右の銘:来るものは拒むかもしんないけど去る者は追わず

 

PULL UP! PULL UP!

 

けたたましいブザー音と共に

無機質な人工音声がコックピット内に響く

羽田空港 6-D番滑走路まであと48000m

頼む

持ちこたえてくれ・・

 

 

 

オレの名はシン・ソンチョル

アメリカと日本を結ぶ国際線パイロット

ワシントン発、東京行ANA242便

キャプテンとして操縦桿を握っている

 

しかし

こんな事になるなんて

夢にも思わなかった・・・

 

 

・・・・

 

現在の時刻日本時間16時50分

 

ワシントンを出発して6時間30分が経過

緯度23度39分20秒の太平洋上空

 

操縦するシップ(機体)は偏西風にうまく乗り

定刻より40分早く羽田到着する予定だ

 

いつも9時間もコックピットに閉じ込められるが

今日は8時間ちょっとで解放される

気持ちが軽くなってきた

 

 

「今日は早めに羽田に着きそうだな」

オレはコーパイ(副パイロット)のイ・ウンヒに声をかけた

 

「ソンチョルキャプテン、今日はムスメさんの誕生日ですね」

 

「ああ、3歳になる。早く会いたい」

 

 

ワシントン行きに乗ると、

時差を含めて7日間は日本に帰れない

一週間ぶりに会う娘のソンミ

楽しみだ

おっと、ヨメの事も忘れてはないが

 

 

 

 

「キャプテン、現在の状況です

巡航速度525ノット(972.3km/h)、高度1万2千フィート、外部風速121km/h

ターゲット(羽田空港)までの距離892kmです

 

「もう少しで到着だ、ランディングファイル(着陸準備)のチェックを頼む」

「ラジャー(了解)」

 

 

 

その時

 

 

 

「ボン」という低い音と共に、

耳の鼓膜に軽い圧力を感じた

 

計器に並ぶ油圧デジタル表示が急激に下がり始める

オートバランス水平器が乱れ、機体が右にバンク(角度)をつけ始めた

 

・・・何事だ?

 

 

コーパイのウンヒが計器を見つめている

 

「キャプテン、フラップが反応しません」

フラップとは主翼に取り付くスピード調整翼だ

 

 

「もう一度やってみろ」

 

「・・・ダメです 反応しません」

 

「油圧バルブを全部閉めろ」

 

圧力メーター上がりません。0パスカル表示」

 

「とにかく機体を水平に保つんだ、バンク修正。

無線をコントロールセンター(管制塔)につなげ」

 

「了解(ラジャー)」

 

 

さっきの低い音と関係があるのか

まさか・・・

 

 

「・・・羽田コントロール。こちらオールニッポエアーツーフォーツー(ANA242)、応答せよ」

オレはなるべく落ち着いた声を心がけた

緊急時の無線交信は

とにかく正確に、落ち着いて情報を伝えることだ

 

「ANA242 こちら羽田コントロールどうぞ

 

「キャプテンのシン・ソンチョルだ フラップの調子が悪い 油圧メーターが0のままだ」

 

「バルブは全部閉めてみましたか」

 

「0のまま上がらない、そっちのサーバーで状況を調べてくれ」

 

「了解(ラジャー)」

 

油圧が戻らなければ、シップの速度を落とせない

最悪の場合、そのまま地上激突だ

今日の乗客は満席の528人

オレが全員の命を預かってる

 

 

「・・ANA242 

監視サーバで機体状況を確認しました 

シェラート管が破損してます」

 

 

「なんだと・・」

 

 

シェラート管とは機体の後部にある油圧コントロール用の配管だ

これが破損すると操縦系統に異常が生じ、シップのコントロールがほぼ不能になる

 

 

「ウンヒ、サブのシェラート管に切り替えてくれ」

 

「キャプテン、サブシェラートは操縦制限が・・」

 

「わかってる、でも今はそれしかない」

 

「しかし・・・フラップとスポイラーの挙動が不能になります」

 

「どうせフラップは使えない、早く切り替えろ!」

 

「・・・了解(ラジャー)」

 

 

定期的な緊急訓練はしている

パイロットライセンス更新時のエマージェンシー訓練

 

しかし

今回のようにフラップとスポイラーが使えないインシデントは初めてだ

使えるのはラダー(垂直尾翼)のみ

どうやってシップの速度を落とすか・・

 

・・・こうなったらやるしかない

【ジェットエンジン緩急】での減速着陸

 

エンジン緩急での速度調整は理論上可能である

ただし・・

ストール(失速)のリスクがある

一旦ストールすると、そのまま墜落

 

 

 

 

キャビンアテンダントの住村響子を呼び出した

 

「響子、

機内アナウンスで乗客を落ち着かせるんだ」

 

「・・・キャプテン、何が起きてるんですか」

 

「説明はあとだ、少し揺れるが心配ない」

 

「・・・わかりました」

 

響子は客室に向かいアナウンスする

 

「お知らせします、ただいまより当機は着陸態勢に入ります

気圧の関係で少々揺れますが、飛行には支障ありませんのでご安心ください」

 

 

オレは操縦桿を握りなおした

「ウンヒ、エンジンパワーを67%までダウン、速度と高度を15秒おきに読み上げろ」

 

「ラジャー」

 

 

エンジンの回転数が下がり、

シップの機首が下がり始めた

 

下げすぎるとストールする

 

パワーシフトレバーから伝わる振動を感じながら、

エンジンの回転数を微調整する

手にじんわりと汗がにじむ

 

 

「340ノット、6700フィート・・・318ノット、6200フィート」

 

「ウンヒ、滑走路への進入角度を2.7度に設定」

 

「チェック!」

 

 

その時、

ドオーン!

 

機体の右から爆発音がした

右エンジンから火が吹きあ上がってる

こんな時に、バードストライクか!

 

コックピットのエマージェーシランプが点滅する

「280ノット、240ノット・・

ストールします!!」

 

 

高度がどんどん下がる

 

 

【PULL UP! PULL UP!

(機首をあげろ!)】

 

けたたましいブザー音と共に

無機質な人工音声がコックピット内に響く

羽田空港 6-D番滑走路まであと48000m

 

頼む

 

持ちこたえてくれ・・

 

 

 

オレは操縦桿を目いっぱい引き上げた

 

「左エンジンのパワーをマックス!

ラダーはディレイに!」

 

「ラジャー!」

 

エンジンの回転数が上がり、シップの速度が上がる

機首が水平になりストールを回避した

 

しかし

羽田滑走路まで残り48000m

現在の巡航速度は390ノット

残距離に対して速度が上がりすぎている

 

 

「ウンヒ!パワーを56%へ! 

パイロンシフターはマニュアルモードに設定しろ!」

 

「ラジャー!」

 

 

高度よ、速度よ

下がれ、下がってくれ

 

 

機首が下向きになったその時、前方に羽田空港の誘導灯が見えてきた

もう少し

前方に見える誘導灯に向かって、シップは吸い込まれるように進む

 

 

 

「進入角度2.7度!172ノット、1290フィート!ブイワン!(V1)」

ウンヒが計器を読み上げる

 

このままランディング(着陸)までいけ

必ず乗客528人全員の命を救って見せる

 

 

 

周りの一切の音は消え

操縦桿から伝わる振動だけを感じ取る

水平線に沈む夕日に向かいながら

シップとオレはひとつになった

 

 

「いくぞ!ランディング!」

 

 

 

オレは

 

シン・ソンチョルだ!

 

 

 

 

 

 

↑↑↑↑↑

朝鮮高校時代、こんな妄想が大好きでした!!(^^

 

 

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