【管理栄養士解説】男性の妊活にL-カルニチンはおすすめ?効果を論文から徹底解説!

医学博士を目指す院生管理栄養士のそらです。この記事では「男性の妊活にL-カルニチンはおすすめか」や作用機序、摂取量について、論文や厚生労働省などから科学的な根拠をもとにまとめています。

サプリメントの効果は色々な情報があって悩むという方に、根拠に基づいた情報提供を心掛けています。

 

結論から言うと、

「男性の妊活にL-カルニチンはおすすめか」について、男性の妊活としてのL-カルニチン(もしくはアセチルL-カルニチン)摂取については好意的な論文が多かったです。

多くの論文でL-カルニチン(もしくはアセチルL-カルニチン)の摂取が「精子の質を改善」する効果が示されています、一方で「効果がなかった」という論文もあり、個人差があると言えます。

また、妊娠や出産率の改善にまで効果があるかは分かっていません。

妊活中の男性へのL-カルニチンの効果

妊活中の男性へのl-カルニチンの効果について論文などを調べてみました。

精子の質を改善

カルニチン濃度は精子の濃度、運動性、精子数と精子の運動率などに関係があることから、カルニチンの摂取が精子の質を改善するのではないかと考えられています[1][2]

 

研究を集めて解析した論文(メタ解析)を調べると、

・カルニチン(L-カルニチンおよびアセチルL-カルニチン)は精子の運動性や精子の形態を大幅に改善したが精子濃度には影響しなかった。また、妊娠率に明らかな影響はなく自然妊娠の可能性が増加するとはいいきれない[3]

 

・(L-カルニチン含む、他コエンザイム Q10などは)精液パラメーターの改善をもたらしたが、出生率と妊娠率までは調べられていない[4]

 

・妊娠率は偽薬の群と差はなかったが、カルニチン(他セレンまたはコエンザイム Q10を単独または組み合わせて)を飲んだ群では精子濃度が高くなり運動性も増した[5]

 

・L-カルニチンとアセチルL-カルニチンの併用は副作用なく精液パラメーターを改善する[6]

 

このことからカルニチンの補給で精子の質を改善する効果は期待できそうです。

ただし、L-カルニチンや アセチルL-カルニチンを補給しても効果がなかった[7]という論文もあります。

精子の質を改善するということで、もとから精子の質が良い方にはあまり効果が無いのかもしれません。

男性妊活に関するL-カルニチンの作用機序

これは、L-カルニチンの補給によりミトコンドリアの脂肪酸酸化の増加(より多くのエネルギーを精子に供給してくれる)と睾丸中の細胞死を減少させるためと考えられています[8]

L-カルニチンとアセチル-L-カルニチンの違い

L-カルニチンは体内に入ると代謝によりアセチル-L-カルニチンへ変わります。そのため、アセチル-L-カルニチンの方が体内で吸収されやすい形であるのではないかと考えられています。

しかし、アセチル-L-カルニチンのサプリメントはアメリカでは販売できますが、国内では現状許可されていないためL-カルニチンしか販売されていません。

妊活中男性のl-カルニチンのサプリ摂取量は1000㎎まで

サプリの前に、カルニチンはあまり不足しない栄養素で体内でも産生されています。

また、カルニチンは肉類や魚、牛乳など動物性食品に多く含まれています[9]。食事で摂れないと感じる方はサプリメントを選ぶのも良いでしょう。

 

論文中では150㎎~3000㎎/日、3~6カ月間で精子の質が改善される可能性があると示されています[10]

 

しかし、人によっては過剰摂取による副作用として3g(3000㎎)/日摂取で吐き気、嘔吐、下痢などの引き起こすことも報告されています。

 

また、カルニチンの1日の摂取上限量は厚生労働省より1000mg/日となっていますので、1000㎎/日以下を目安にするのがよさそうです。

まとめ:男性の妊活にL-カルニチンは少しおすすめ

「妊活にL-カルニチンはおすすめか」、について、

色々な論文でL-カルニチン(もしくはアセチルL-カルニチン)の摂取で「精子の質を改善」する効果が実証されているので「どちらかと言えばおすすめできそう」と言えます。

一方で「効果がなかった」という論文もあるため、確実に全員に効果があるとは言い切れません。

 

また、妊娠や出産率の改善にまで効果があるかは分かっていません。

 

精子の質を改善するということで、もとから精子の質が良い方にはあまり効果が無いのかもしれません。

まずは栄養バランスの良い食事をすることを土台に、精子の質を改善したいという方は補助としてサプリメントを選択するのも良いでしょう。

 

※この記事の内容や論文は公開時点での情報となります。

出典

[1] 厚生労働省:eJIM,https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/02.html

[2] Ke Li 1, Wei Li, Yu-feng Huang, Xue-jun Shang:Level of free L-carnitine in human seminal plasma and its correlation with semen quality, Zhonghua Nan Ke Xue. 2007 Feb;13(2):143-6.(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17345771/)

[3] Shen Chuen Khaw 1, Zhen Zhe Wong 2, Richard Anderson 3, Sarah Martins da Silva:l-carnitine and l-acetylcarnitine supplementation for idiopathic male infertility, Reprod Fertil. 2020 Dec 23;1(1):67-81.(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35128424/)

[4] Muhammad Imran Omar, Raj Prasenjit Pal, Brian D Kelly:Benefits of Empiric Nutritional and Medical Therapy for Semen Parameters and Pregnancy and Live Birth Rates in Couples with Idiopathic Infertility: A Systematic Review and Meta-analysis,Eur Urol. 2019 Apr;75(4):615-625. (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30630643/)

[5] Aditya P Sharma, Gopal Sharma , Rajeev Kumar:Systematic Review and Meta-analysis on Effect of Carnitine, Coenzyme Q10 and Selenium on Pregnancy and Semen Parameters in Couples With Idiopathic Male Infertility ,Urology. 2022 Mar;161:4-11.

[6] Xue-jun Shang, Ling-ling Wang, Dun-sheng Mo, et al.:Effect and safety of L-carnitine in the treatment of idiopathic oligoasthenozoospermia: a systemic review,Zhonghua Nan Ke Xue. 2015 Jan;21(1):65-73.

[7] Mark Sigman 1, Stacy Glass, Janice Campagnone, Jon L Pryor:Carnitine for the treatment of idiopathic asthenospermia: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial,Fertil Steril. 2006 May;85(5):1409-14.

[8] 1と同様

[9] 1と同様

[10]Andrea Lenzi 1, Paolo Sgrò, Pietro Salacone:A placebo-controlled double-blind randomized trial of the use of combined l-carnitine and l-acetyl-carnitine treatment in men with asthenozoospermia,Fertil Steril. 2004 Jun;81(6):1578-84.

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