リフォームについて考えている中高年の方向け
2021年刊行。B5サイズの大型本である。
筆者の水越美枝子(みずこしみえこ)は一級建築士。日本女子大卒業後、清水建設に入社し、その後独立。キッチンスペシャリストの肩書を持つ。住宅設計から、リフォーム、インテリアコーディネート、収納計画までをトータルにサポートする建築事務所アトリエサラを秋元幾美と共宰している。
その他の著作に、『がまんしない家 これからの生活様式への住まいリセット術』『美しく暮らす住まいの条件』『人生が変わるリフォームの教科書』などがある。
リフォームや収納に関する知見を数多く持っている人物と言えるだろうか。
この書籍から得られること
- 50代からのリフォームで注意すべき点がわかる
- 具体的なリフォーム事例を豊富な写真で楽しめる
内容はこんな感じ
リフォームをするのに「遅すぎる」ことはない。50代に入り、人生の後半戦を迎えたいまだから出来る「価値のあるリフォーム」がある。シニア時代を見据えた、賢い動線づくり。自然にモノが片付いていく収納の工夫。自分の居場所を作る、夫婦それぞれのプライバシーを配慮した間取り。人気の建築家が教える、リフォームのノウハウ事例集。
目次
本書の構成は以下の通り
- PROLOGUE
- 1家事を快適にする
- 2体にやさしい住まいにする
- 3自然の片づく家にする
- 4夫婦のストレスを減らす
- 5こだわりや趣味を大切にする
- 6老後を安心して過ごす
- 7開放感を保ちつつプライバシーを守る
- 8自然を感じながら暮らす
- 9人を呼びやすくする
- 10リフォームの問題を解決する
- シニアリフォームで失敗しないためのQ&A
50代でのリフォームはこうしたい!
とかくリフォームと聞くと、風呂場やトイレの水廻りだけを、最新のものに交換する印象が強い。そんな方も多いのではないだろうか。
販売されている一般的なマンションは戸建ては、部屋数を確保するために「暮らしやすさ」が犠牲となっていることが多い。洗濯ものを干すだけなのに何部屋も移動しないといけない。キッチンとダイニングの組み合わせに違和感がある。部屋がとにかく暗い。長く住んでいる家だけに、積年の不満が各人にあるはずだ。
本書ではさらに踏み込んで、より暮らしやすく、住みやすくするためのリフォーム術を提案している。特にこだわっているのは「50代からの」という点にある。子どもが大きくなり、自らもシニア世代への入り口が見えてくる。ある程度、蓄えがあるうちに、住まいに手を加えておくのは確かに意義があることに思える。
実例画像が豊富で見ていて楽しい
本書『理想の暮らしをかなえる50代からのリフォーム』の魅力の第一は、豊富な実例画像が多数収録されている点にある。公開されている画像から引用させていただくとこんな感じ。
テーマにあった、リフォームの工夫が、具体的な画像例で示されているので、明確にその狙いが伝わりわかりやすい。
筆者の取り扱っている物件は、アイデア的な部分だけでなく、デザイン性にも優れているのがウリの一つと言える。素敵な住まいの画像が、次から次へと出てくるので、パラパラと眺めているだけでワクワクしてくる。
シニアリフォームで失敗しないために
本書では第一章から第十章まで、さまざまなリフォームの具体例が紹介されている。ただ、最終章では「シニアリフォームで失敗しないため」のQ&A集がテキストベースで掲載され、知識面でのアドバイスもしてくれている。
ライフスタイルは時と共に変化する。また、家庭によってさまざまな違いが生じる。つまり、他人と同じ事例というものはありえない。それだけに、リフォーム前には、夫婦の関係や、老後をどうしたいのか、介護や子どもたちの問題についても、しっかり考えておきたいところ。
また、気になるのはリフォームをどのような業者に依頼するかだ。絶対に失敗したくない選択だが、経験値が少なく、誰もが思案を重ねるところだと思う。本書では、設計事務所(建築家)、住宅メーカー、リフォーム会社、地元の工務店など、それぞれの特徴を紹介し、相性の良い施工先を探すべきと説いている。
知りたいのは費用感だが……
以上、『理想の暮らしをかなえる50代からのリフォーム』の内容をザックリとご紹介してみた。見て楽しく、読んで役に立つ、良書ではないかと思える。だが、惜しむらくは費用感についてはまったく言及されていない点だろうか。具体的な施工依頼者の実名もあるし、商売のことも絡んでくるので、具体的な金額は書けないかな。
本書に登場するお宅は、いずれも素敵なリフォーム例ばかりなので、それだけに、相応のお値段はかかっていそうな気がする。