ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

日本の平均賃金のこと

 一週遅れのデモクラシータイムス・「ウィークエンドニュース」を見た。久しぶりに見たが、政治、経済、国際社会…等々、ネタ満載。岸田内閣の人事、中国恒大の破綻…と、どれも興味深かったが、なかでも、平均賃金の話は、総選挙を控えていることもあり、最も印象的だった。一週前に野口悠紀雄氏の記事「韓国が日本を抜いていく」を取り上げたが、一人あたりのGDPはもちろんのこと、日本は平均賃金もすでに2015年には韓国に抜かれていたのである(韓国ばかり引き合いに出すが、他の人はともかく、小生としては「わかりやすい」比較対象程度の意味なので…)

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OECD各国の平均年収の推移

(出所:【2019年版】日本の平均年収は世界で何番目?日本は年々ランクダウンで男女の収入格差は第2位。OECDデータより | 英語・海外あれこれ

 自民党の甘利幹事長に限らず、月末の衆院選について、共産主義政権を選ぶかどうかの体制選択選挙というような「叫び」(訴え)を街頭などであげている人(候補者)もいるようだが、日本社会の将来に直結するのは、超高齢化・人口減少とともにこの賃金だ。
 岸田首相の言う「新しい資本主義」は、そもそも看板以外何も構想がない(これから会議を招集して話し合うらしい)実に漠とした代物だが、その真意を問いただされているうちに明らかになった輪郭は、あまりアベノミクスと変わらない。そのアベノミクスをやっていた2012年以降、日本の労働者の実質賃金は、上がるどころかむしろ下がったのである。

 10月9日付のウィークエンドニュースで参加者たちは次のように話していた。

リベラル仮面の岸田政権 じつは何にも変わらない 政治とカネの悪臭ふんぷん WeN20211009 - YouTube

 山岡日本って、現状追認で、自分たちの目先のことにこだわっていろんな選択をするんだけれど、本質的なところを見逃しているから、どんどん世界から取り残されていく。その一つの例が、OECD経済協力開発機構)加盟36カ国の平均賃金の調査で、これグラフで黒く太いのが日本なんですけど、ここ30年くらいずっと横ばいで変わっていない。他の国々はだいたいみんな右肩上がりで少しずつ上がっているのに、日本だけが地べたにはりついたように上がっていない。最近は韓国にも平均賃金が抜かれました。こういう状況にあることを、実は国民自身もよく認識できていない。
 山口さっきのDappiの話とつながって来るわけで、自民党政治を支持している人たちって、根拠のない楽観、根拠のない自己肯定が基盤なんですよ。こういう現実をみんな知らない、あるいは、目を背ける。それが自民党支持の根底だと思うんですよ。
 山岡今の野党は選挙で戦うときにここを前面に出してね。経済ってやはり賃金なんですね。いくら格好のいいことを言って、成長率がどうのとかね、でも、それが賃金に反映されなかったら、国民にとっては豊かさなんかないわけじゃないですか。
 小塚「安い日本」という言葉があるじゃないですか。海外から日本に観光で来る人が「日本は安い」と。いろんな食べ物、ホテル、こんな安い値段で泊まれるのかと。でも、それ、アジアの人たちでさえそうなってきている。だから、このグラフを見ると、安倍さんの政権になってから横ばいで、どっちかって言うと、下がっているわけですよ。平均賃金は2015年を100としても、2020年は90いくつなんですよね。安倍さんが言っていたアベノミクスでは、トリクルダウンで「したたり落ちる」と、経済がよくなればどんどん庶民の生活も豊かになるんだという論理でやってきたわけですけれど、全然成功してないんだという認識をもたないといけないと思いますね。
 山口人災ですよね。貧困とは人災です。結局ね、異次元金融緩和で、円安で、輸出企業だけは利益をためたけど、内部留保が積み上がるばかりで賃金が下がっていると。これが経済政策の最大争点ですね。
 北丸僕らなんかの学生のとき、円が安くてどうしようもなかった。でも、メキシコなんか行くと、いろんなものが安く買えて、すごいいい国だなんて思ったんだけど、でもあのときは、ペソが半分くらいに切り下げられちゃったんですよね。アメリカの分を全部押しつけられちゃって。メキシコが労働力や何かでアメリカを下支えをして、それがアメリカの1970年代80年代の経済好況を支えた。そういうことを考えると、さっき小塚さんがおっしゃた「日本安い」、いい国だと言われて、「日本、最高だ」なんて思っていると、いやでも、実は違うんだ、食い物にされてるんだってことに気づかなければならない。…このあいだ発表された数字だと日本円にして(平均賃金)433万円くらいでしたか。…でも、アメリカの平均賃金って、この倍なんですよね。700万、800万。そうすると、ニューヨークのラーメンかなんかが、日本円だと2,000円くらいになって、高いって言われたってね…。
 小塚そうですよね。ニューヨークの人の感覚だとそれほど高くないってことですよね。
 北丸高くないってことはないけど、まあ、これくらいだったら払えるかなっていうところでしょうかね。でも、こういう(平均賃金の変化の)グラフを見ないといけませんよね。…
 土屋賃金の問題が日本の経済の最大の問題点であることは、この10年間、はっきりしているわけですね。安倍さんも賃金を上げようとしてトヨタにプレッシャーをかけたりしたんだけど、跳ね返されてベアも上がらなかった。今回の岸田さんも賃金を上げようということで、賃金を上げる企業には優遇税制をするという計画を出しているんですけど、正直言って、まだどれくらいの優遇を与えるのか制度設計がはっきりしないので、効くか効かないか断定できないんですけど、でも、税制優遇されたくらいで賃金を上げるような企業経営者はいないですよね。だから、押すべきボタンを間違えてるんですね。「新しい資本主義」の話もそうなんですけど、枝野さんなんかが言うとおり、中身がないですよね。方向感は悪くない、むしろ野党が言うべきことを先に言い出したところがあるんですけど、賃金の問題について言えば、基本的には労働市場改革をしないと賃金は上がり出さないんですよ。非正規(労働者)が増えているかぎり賃金は上がりようがなくて、派遣(労働)の問題に手をつけて、これをもう少し狭めていく方向にするとか、僕個人としては、失業保険も6ヶ月じゃなくてもっと長い期間にするとか、(訓練・資格で)学校に行くお金に支援金をたくさん出すとか、労働市場セーフティーネットを強くする、生活保護のひとつ上の段階にもうひとつセーフティネットを設けることが、「新しい資本主義」だと思うんですよ。それはこれからのことなので、岸田さんがバトンを渡す人がやり遂げていく、これは与野党どちらになるのか分かりませんけど。それが仕事になっていくんだと思うんです。


 1980・90年代くらいまでは「円高」で、日本の物価は海外に比べて高いと言われ、そんなもんかと思ってきた。その分、輸入品や海外旅行は「お得」だったわけだが。しかし、今や事態は逆で、小塚さんが言うとおり、日本の方が安い。それは日本で働く人の低賃金を低いままに押しとどめる圧力にもなっている。だから賃金ひとつとっても、そんなに単純に問題解決とまではいかない。
 しかし、そういう複雑な問題に向き合うでもなく、自身の不祥事の説明もせずに、体制選択だの反共だのと言う輩を党の要職につける政党が引き続き政権を担当したら、この2020年代・30年代、どんな未来図を描くことになるのか。

<追記>円安と賃金についてはこちらをご覧ください。
コラム:円安の弊害と不都合な事実、競争力と賃金で後退する日本 | ロイター


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