Pennyと地球あっちこっち

日米カップルの国際転勤生活 ~ ただいまラオス

帰る場所もなく

移民が大嫌いなトランプ(自分だって移民の子孫だが、優先権を持つのは白人だけと信じている)が大統領になると、とても困るひとたちがいる。それはアメリカに住むラオス人。主にモン族のひとたちだ。

ベトナム戦争時、ラオスの共産主義勢力(パテトラオ)が北ベトナムを支援したのに対し、ラオスの共産化を嫌うモン族はアメリカ軍に協力したことから、戦後パテトラオが政権を掌握すると、きびしく弾圧された。大くのモン族が強制収容所での重労働を強いられ、村は化学兵器やナパーム弾によって破壊され、モン族は人口を10%減らした。

弾圧を受けたモン族は次々に国外へと脱出し、多くが難民としてアメリカに移住。現在では北部ミネソタ州やカリフォルニア州を中心に37万人のモン族コミュニティーを形成しているというものの、その存在感は限りなくゼロに近い。

ひとつには大望を胸に海を渡ってきた中国系・日系などの移民とはスタート地点が違うことから、経済的な成功をおさめにくいという事情もあるだろう。

2020年の東京五輪で女子体操のスニサ・リー選手がモン族系アメリカ人として初めて金メダルを獲得したことが大きく伝えられたとき、そういう民族グループがあることを初めて知ったひとも多いはずだ。

スニサ・リー選手と、ガッツポーズのお父さん

モン族系アメリカ人にとっての大きな悩みは、若い男性のギャング化。教育制度がどうなっているのか英語がちゃんと話せず、したがって仕事もなく、転落コースをたどる若者が増えており、事件を起こして逮捕されると国外追放になる例が多いのだという。

二世の市民として普通に米国籍があれば国外追放になどならないところ、モン族には複雑な事情があるらしく、アメリカを追い出されるケースが続出しているらしい。

カリフォルニアのモン族ギャング団

悲惨なのは、アメリカから国外追放されたかれらをラオス政府が受け入れようとしないこと。かつて共産主義勢力パテトラオに楯突いた「反逆者」への憎しみは今も根強く、そのうえ難民として脱出したかれらはパスポートなど持っていなかったから、今になってラオス国籍を証明する方法はなく、ラオス政府が本気になればなんとかなる問題ではあるが、もちろん知らん顔している。

こうして大勢の「アメリカ人でもラオス人でもない」モン族がどこかの収容所に閉じ込められたまま、時間だけが経ってゆく。そのうえトランプが政権をとったら、米国内でのモン族への風当たりは強まり、ちょっとしたことで国外追放になったが「祖国」に戻ることもできないモン族はいっそう増えていくだろう。

モン族は中国南部を源流とする民族で(中国ではミャオ族と呼ばれる)、ラオス・ベトナム・タイに分布し、その一派は海を越えて日本に渡来し、米作のみならず「歌垣」のような生活文化を伝えたと考えられており、この日本人の先祖の一派への共感がわたしの中では強い。苦難の様子を知るにつけ心が痛むのだ。

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