NHKBSでアントニオ猪木の闘病ドキュメンタリーを見ました。難病を抱え、体中に埋め込んだ金属があちこち緩んでおり、歩くことも困難な状況で、おそらく痛みとの戦いの日々なんだろうと想像します。しかし、重たい口から発せられる言葉はファンへの思いばかり。「元気があればなんでもできるっ!って俺が言ってきたわけだから。がんばらないとね(笑)」なんて冗談まじりに話す姿は相変わらずカリスマ的でありました。「馬場さんがね、まだこっち来るなって意地悪するんだよ」このセリフには笑わせてもらいました。そしてライバル二人の本当の関係性が垣間見えたようでほっこりしました。

わたしは小さい頃からプロレスファンでして、どちらかといえばジャイアント馬場派だったのですが、アントニオ猪木のとんでもない発想力、行動力、発信力には驚かされてばかりでした。モハメドアリ戦に代表される一連の格闘技戦は当時のプロレス界のタブーを犯すものでした。ジャイアント馬場がプロレス内プロレスを極めた人であるならば、アントニオ猪木はプロレスに興味のない人々に対してもメッセージを発信し続け、新規ファンの開拓と同時にプロレスという文化の地位向上に尽力した人でした。

プロレスは興行なので、リング上の勝敗よりもエンタメ性が重視されます。どれだけ観客を感動させることができるか、それはスポーツとしての勝ち負けを超えたところにあります。もちろんファンは猪木に勝ってほしいのですが、ハンセンやホーガンなど対戦相手が強ければ強いほど、ラリアットやアックスボンバーを猪木がまともにくらうほどにファンは興奮し、そこから立ち上がる姿に感動するのです。

新庄BIGBOSSをミスター長嶋さんと比較する方がいます。どちらも成績を超えたなにかがファンを惹きつける、という意味では似ているのかもしれません。わたしはリアルタイムの長嶋さんは覚えていないのですが、長嶋さんはどちらかといえば発信するスターではなくて、存在自体が輝いていたタイプのスターだったんじゃないでしょうか。

ドキュメンタリーを見ていて、BIGBOSSにもっとも近いカリスマはアントニオ猪木じゃないかと思いました。入団時の目標として「札幌ドームを満員にする」と言った新庄剛志。こんな目線でプロ野球を見ている選手は唯一無二でしょう。プロ野球は勝つか負けるかの純粋なスポーツなので、選手も監督も優勝を目指して戦うわけですが、BIGBOSSのエンタメ的視点を融合させることで、プロ野球という興業がどんな姿に変化していくのか、期待しかありません。おそらくこの先、バッシングに晒されることもあるでしょう。いろんな考え方のファンがいます。猪木なんて政治家時代も含めて世間から叩かれてばかりでした。

「え!モハメドアリとやるの!まじで!」

あのときの、なんというめちゃくちゃなことをやるんだろう、という驚きと期待。BIGBOSSを見ていると、それに近い感情が湧き上がってくるんですよ。

BIGBOSS ボンバイエ!