昔は
「歴史ファン」
を公言する人は男性、それも
50〜60歳代の中、高年層
というイメージがありました。
そして、実際にその通りでした。
しかし近年は、若い人たちの間にも、歴史好きの人が増えています。
若い女性の歴史ファンが
「歴女」
と呼ばれるなど、市民権を獲得しました。
『歴史読本』という歴史雑誌があった!
書店に行くと、専門家向けの硬派かつ難解な本から、初心者向けの入門書まで、様々な歴史関連本が並んでいます。
雑誌のコーナーでも、歴史に関するムック本などの種類の多さに驚きます。
その中にかつて、
「歴史読本」
という雑誌が毎月売られていたのを、どれほどの方が覚えていらっしゃるでしょうか?
末期には、発行元が変わっていた!
若い世代の方だと、
「KADOKAWA(昔の角川書店)から発行されてた本ですよね?」
という答えが返って来るかもしれません。
一方、30歳代以上になると、
「新人物往来社が発行していた、老舗雑誌だったよ。」
となるでしょう。
同じ名前の雑誌が、異なる出版社から発行されていたわけではありません。
最初は新人物往来社が発行していましたが、末期にはKADOKAWAが発行するという、数奇な運命を辿ることとなりました。
歴史書専門出版社の看板雑誌だった!
「歴史読本」は、1956年(昭和31年)に
「人物往来社」(後に「新人物往来社」と社名変更)
が創刊。
以降、新人物往来社の看板雑誌として、60年近く発行されてきました。
ちなみに、新人物往来社は
歴史書専門
の出版社でした。
歴史ファンには、「歴史読本」以外にも新人物往来社の書籍を多数読まれた方も多いはずです。
経営母体が二度替わった!
1968年(昭和43年)に、新人物往来社は経営難に陥ります。
その際に経営権を引き継いだのは、何と清涼飲料メーカー
「チェリオコーポレーション」
の社長でした・・・。
その後、チェリオ社長の息子が二代続けて、新人物往来社の社長を兼ねていました。
しかし、新人物往来社のスタンスは全くブレることなく、
「歴史一筋」
を貫いてきました。
その40年後の2008年(平成20年)、「中経出版」という出版社の100%子会社が、出版事業の経営権を取得。
社名は「新人物往来社」のまま、全く新しい会社となりました。
翌2009年(平成21年)、中経出版が
「角川グループホールディングス」
の傘下に入ります。
そして2013年(平成25年)4月、新人物往来社は中経出版に吸収合併され消滅。
「歴史読本」は、中経出版の発行となりました。
最後は『KADOKAWA』が発行元に。しかし・・・。
しかし同年10月には、中経出版そのものがKADOKAWAに吸収合併されました。
その後、KADOKAWAが「歴史読本」の発行元となりました。
ところが、2015年(平成27年)3月号を最後に、
「季刊」(年4回発行)
となってしまいます。
そして、同年10月の「2015年秋号」をもって、休刊となってしまいました。
なかなか複雑で波乱万丈の「歴史」だと言えます。
古書店では、同社の書籍・雑誌をよく見る!
前述の通り、新人物往来社は老舗の歴史書専門出版社でした。
そのため、古書店には同社の書籍・雑誌が多数出回っています。
「歴史読本」や「別冊 歴史読本」はよく見かけます。
私が幕末に興味を持ち始めたのは、30歳を過ぎてからでした。
「歴史読本」などを新刊で買うことはありませんでした。
古書店で、幕末関連の「別冊 歴史読本」を2〜3冊買ったことがあります。
坂本龍馬関連の本も、新刊や古本で買い集めました。
また、直木賞作家である宮部みゆきさんの時代小説が、新人物往来社から単行本として発行されていました。
それも、新刊で買って読んだ覚えがあります。
最後に・・・。
近年の出版不況下では、超大手の出版社も生き残りに苦心しています。
特定のジャンルに専門化した出版社は、なおのこと苦労しているでしょう。
しかし、夜の本好きたちにとっては、新人物往来社のような
「一芸に秀でた」
出版社は、時代を超えて存続して欲しい存在です。
今も健在の例としては、
早川書房(SF・ミステリー専門)
山と渓谷社(登山・アウトドア専門)
辺りです。
残念ながら新人物往来社は、出版界の歴史年表の中に埋もれてしまいました。
それでも、古本市場を経由して、これからも多くの人の手に渡り、読み続けられることでしょう。
歴史ファンの記憶の中から、新人物往来社の名前が消えることはないのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
興味がございましたら、こちらもお読みください。
「歴史ファン」を名乗る人は多数います。近年は、若い女性の歴史ファン「歴女」も増加しています。そうした歴史ファンの中でも、男女問わず多いのが「幕末ファン」です。 […]
世の中には「歴史ファン」(日本史ファン)の人が、意外と多くいます。子供の頃からの歴史オタクという、筋金入りの人もいれば、学生の頃は日本史が大嫌いだったのに、大人になってから突然ドハマりする人もいます。女性が[…]
今回是非ご紹介したい本は、長崎大学教授の木村直樹さんの「<通訳>たちの幕末維新」(吉川弘文館 刊)です。著者の木村さんは、2012年(平成24年)の刊行当時は東京大学史料編纂所の助教でした。発行元の吉川弘文館[…]