【赴任後3年内の売却でメリット最大化】米国駐在員の留守宅売却に係るアメリカ税金【最大50万ドルの非課税枠】

前回は、米国駐在員が、日本の留守宅を賃貸する場合の、米国での課税関係について、学びました。駐在員に適用される税率は、かなり高いため、「必要経費」などを精査し、不動産所得を圧縮することが重要です。

<参考記事>
【高い累進税率による課税】米国駐在員の留守宅賃貸に係るアメリカ税金【一時帰国費用の取り扱い・損失の相殺制限】

今回は、米国に赴任後、日本の留守宅を売却する場合の、米国での課税関係について、語りたいと思います。

国外源泉所得

まず、日本の不動産売却は、「米国源泉所得」に該当せず、「国外源泉所得」となります。

そのため、米国への離着任の年に、「通年非居住者」や「二重身分」となる場合で、「非居住者」としての期間に、日本の不動産を売却するのであれば、米国での課税関係は生じません。

<参考記事>
【米国駐在員】アメリカにおける居住者・非居住者の考え方【二重身分の有利・不利検討】

居住者への課税

一方、離着任の年に「二重身分」や「通年居住者」選択の場合、通常の年に「通年居住者」となる場合で、「居住者」としての期間に、日本の不動産を売却するのであれば、「全世界所得」として、米国で課税関係が生じます。

売却益

まず、売却益が生じる場合の取り扱いですが、米国での税制上、主たる住居の売却益は、「売却前5年間のうち、すくなくとも2年以上は主たる住居として使用」していれば、「夫婦合算申告で50万ドル、その他の申告書は25万ドルまで非課税」となります。つまり、「二重身分」のように、「夫婦合算申告」が適用できない場合は、25万ドルが非課税売却益の上限となります。

主たる住居でない期間がある場合、住居保有期間に占めるその割合相当の売却益は、「不適格売却益」として、原則、非課税対象から外れます。ただし、「最後に主たる住居として使用してから、売却までの期間」は、例え賃貸していても、「不適格売却益」とはならない例外規定がありますので、多くの駐在員のケースでは、この例外規定を充足できると、考えられます。

売却益が、非課税枠を超える場合の税率は、15%が基本ですが、夫婦合算で50万ドル近い高額所得がある場合は、20%となります。さらに重要なのは、賃貸期間に減価償却費を計上していた場合で、累計償却額に相当する売却益は、上述の非課税対象とならず、25%の税率が課されます。これは、過去に減価償却メリットで税金を軽減していた部分を、売却時にRecaptureする、との趣旨になります。

売却損

一方、売却損が生じる場合ですが、居住用不動産から生じる損失の控除は、認められていません。

赴任後に、賃貸に出している場合、”Personal residence”から”Rental Property”に、Conversionすることで、株式や債券の売却損同様に、一定の条件のもと、他の所得と損益通算することも考えられますが、Conversion時点での時価を、当初の税務簿価とみなし、売却損を算定する必要があり、それほどの税メリットは得られない、可能性があります。

日米でのメリット最大化

駐在員が、日本の留守宅を売却する主なケースとして、赴任時には賃貸に出していたものの、賃借人が途中で退去したため、売却益を狙って方針転換するとの場合が、考えられます。

その場合、日本の3,000万円の特別控除と、米国の50万ドルまたは25万ドルの非課税枠の条件を、同時に充足することで、税メリットが最大化されます。つまり、「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却」かつ「売却前5年間のうち、すくなくとも2年以上は主たる住居として使用」の条件を同時に満たす必要があり、実質的には、「留守宅を出てから3年以内に売却完了」すべきと、考えられます。

<参考記事>
【海外駐在時】不動産に関する日本の税金①【売却と特別控除】
【海外赴任後】不動産売却に係る日本の税金【特別控除は3年縛りあり】

次回も、引き続き、駐在員の米国での個人所得税申告における留意点を、語りたいと思います。

<次回記事>
【リファーラル収入は申告要】米国駐在員の各種所得に係るアメリカ税金【譲渡益・譲渡損の課税関係】

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