シルフィード「The Legend Of Silpheed」【ギター演奏・コード進行97】

シルフィード The Legend Of Silpheed 動画
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発売年月:1986年12月
機種:
PC(PC-8801mkⅡSR)
メーカー:ゲームアーツ(GAME ARTS)
タイトル名:シルフィード(SILPHEED)
曲名:オープニング(The Legend Of Silpheed)
作曲:大葉浩美=三橋正邦(Hiromi Oba=Masakuni Mitsuhashi)
演奏難易度:☆☆☆★★(易しい)

2021年最後の演奏となりますが、今回は初期PCの名作シューティングゲーム『シルフィード』のオープニングテーマ「The Legend Of Silpheed」をカバーしました。

この曲が使われているのはPC-8801mkⅡSR版とFM-77AV版のオープニングデモで、後に発売されたメガCD版などでは使用されていません。

個人的に思い出深い曲なので、当時の事も思い出しながら紹介記事を書いていきたいと思います。

シルフィード作品概要

シルフィードはゲームアーツが開発して、1986年12月にPC-8801mkⅡSR用ソフトとして発売された3D(擬似3D)シューティングゲームです。

ゲームアーツは現在はガンホーの子会社になっていますが、1985年に設立された老舗ゲームメーカーで、その第1弾作品『テグザー』(1985年4月発売)がヒットしてPC-8801mkⅡSRのキラーソフトになっています。

PC-8801シリーズの開発元であるNECは、設立間もないゲームアーツに発売前のPC-8801mkⅡSRを貸与してテグザーの開発協力をしたといいますが、テグザーの音楽はPC-8801mkⅡSR最大のウリであったFM音源をフル活用したもので、当時としては相当なインパクトがありました。

そして、テグザーのヒットをきっかけに、PCソフトを作っていたゲームメーカー各社がこぞって音楽に力を入れ始め、FM音源を使った「SR専用ソフト」が続々と発売されてPCのゲーム音楽発展が一気に進んだ、という経緯があります。

このあたりの事は「ゲーム音楽史」のこちらの記事をお読みください。

そうして業界にイノベーションを起こしたゲームアーツが満を持して発売した勝負作が、本作シルフィードです。

シルフィードは当初1985年11月の発売予定だったのが、度重なる発売延期の末、1年以上経った1986年12月にようやく発売されるという難産の作品でした。

ゲームの内容としては、疑似ポリゴンによる3Dシューティングゲームで、PC-8801mkⅡSRのスペックからすると信じられないような表現力を実現した力作中の力作と言えます。

音声合成も話題になりましたよね。ゲームスタートすると「ワシは宇宙の帝王ザカリテ……」と毎回自己紹介してくれるザカリテ先生は良い味を出していましたよね(笑)

シルフィードは1988年にFM-77AVに移植され、その後、メガドライブ(メガCD)やプレイステーション2、Xbox360などで続編が発売されています。

シルフィードの音楽について

シルフィードの音楽は期待以上のクオリティーで、テクザーと比べても大きな進化が感じられるものでした。

とくに音色作りが素晴らしく、エンベロープ(揺らぎ)の効いた主旋律と、いかにもFM音源!な硬質なベースの音色がベストマッチして独特の雰囲気を醸し出しています。

この時点(1986年12月)では、家庭用PCでこのクオリティーの音色を作れるのって、この2か月前にデビューした日本ファルコムの古代祐三さんくらいではないでしょうか。

シルフィードの作曲やサウンドディレクションを担当したのは、五代響さん、大葉浩美(三橋正邦)さんらでしたが、彼らの本職はプログラマーであり、音楽が専門というわけではありません。

この時代のPCのゲームは、開発していたのが零細のベンチャー企業が中心だったということもあって、プログラマーが音楽も兼任する事が多かったのですが、そんな中でゲームアーツの作品の音楽は相当に質が高かったと思います。

今回演奏するオープニングテーマ「The Legend Of Silpheed」は大葉浩美さんの作です。

大葉浩美さんは「竹内あきら」「滝口彰」「catmitsu」など、複数のペンネームを使用していますが、本名は三橋正邦さんで良いのかな。調べたところそれっぽいのですが、正確なところは良く分かりませんでした。

ちなみに、ザカリテの声は大葉(三橋)さんの声をもとにして作られたものだとか。

以下は、当時の自分の体験を思い出しながら書いてみます。

シルフィードの思い出

シルフィードの発売当時、自分は音楽への興味が本格化していて、楽器(最初は電子キーボード、その数か月後にギター)を始める前後だったと思います。

この約1年前、1985年の年末に弟と共同で中古のPC-8801mkⅡFR(SRの廉価版、以下PC88FR)を手に入れて、ゲームやFM音源での打ち込みにハマっていましたが、テグザーを出したゲームアーツが作っているというシルフィードはずっと気になっていて、発売までの1年間、PC雑誌の画面写真などを見ながら発売を心待ちにしていました。

発売日には、学校が終わった後、そのまま地元のPCショップに買いに走った記憶が。

シルフィードの第一印象は「お、喋った(笑)」でしたが、ゲームとしても良く出来ていて、3か月くらいこればかりやっていたと思います。

そして、音楽も衝撃的だったのですが、これは自分個人的な事情もありました。

1986年の12月、シルフィードを買った少し後に、これまた弟と共同でミニコンポを買ったんですよね。

そして、PC88FRに外部出力端子が付いているのは知っていたので、ミニコンポと繋いでみようと。

で、近所の電気屋でケーブルを買ってきて、PC88FRとコンポを繋いでみて、それではと、試しにシルフィードをプレイしてみたんですが、「げげっ、なんじゃこれ。こんなに音良かったんだ、まじでビビる。今までのは何だったのか」というくらい音質のグレードアップ具合に衝撃を受けました。

それまで1年間くらい、PC88FRの内臓のアンプとスピーカー(5センチ位のショボいやつ)で鳴らしていたのが、オーディオ用のアンプとスピーカーになったのだから当たり前なんですが、特に低音の出方や音の艶が全然違って、あまりの違いにぶったまげました。音質というものの重要性を認識した瞬間ですね。

シルフィードの音楽は前述の通り音色が素晴らしいのですが、デカいスピーカーで聴くと、それらが本当に覚醒する感じで「ああ、これが本当のFM音源の力なのか……」と(笑)。

自分はこの体験をきっかけに、ますます音楽への興味が増して、FM音源の打ち込みから楽器演奏へとハマっていくことになります。

そんな体験をさせてくれたシルフィードの音楽ですが、今回は作品を象徴するメインテーマと言えるオープニング曲「The Legend Of Silpheed」のアレンジ演奏をしてみました。

ギターの特性を生かしたアレンジ【ソロギター演奏】

「The Legend Of Silpheed」は曲としてはかなりシンプルなので、アレンジでギターなりの味を出すという事が勝負になるところだと思います。

ただ、この企画の基本方針として「原曲イメージを極力再現したい」というのもあるので、原曲イメージと、ギター演奏としての完成度のバランスをとったアレンジを目指しましたが、以下のような処理をしました。

  • 原曲はGマイナーキーだがソロギターに最適化してAマイナーキーに移調
  • イントロの2分音符で鳴っている持続低音は親指で再現
  • Aメロに入ってからは、若干テンポを上げて少しフラメンコギター的なアレンジを施した
  • エンディングにはAメロのコード進行を変えてアレンジしたものを付加

曲の内容的には、コードもメロディーもシンプルで、ギター向けにアレンジはしていますが、今回は初心者でも取り組める難易度(星2つとしました)に収まったのではないでしょうか。

The Legend Of Silpheed コード進行

オリジナルのGマイナーキーをAマイナーキーに移調しています。

イントロ
|Am|Am|
|Am|Am Dm(onA)|Am|Am|
|G|G|Am|Am|
|Am|Am D7(onA)|Am|Am|
|G|G|Am|Am|
|Am|Am|Am|Am|

Aメロ
|Amadd9|Amadd9|G|G|
|Amadd9|Amadd9|G|G|
|F|F|C|C|
|Dm9|Dm7|E7(♭9)|E7|

ブリッジ
|Am Dm7(onA)|Adim Am|
|E E(♭9)|EM7 E|
|Am Dm7(onA)|Adim Am|
|E E(♭9)|EM7 E|

Bメロ
|Am|A7(onC♯)|Dm9|Dm|
|Bm7(♭5)|Bm7(♭5)|E7(♭13)|E7|
|Am|A7(onC♯)|Dsus4|Dm|
|Bm7(♭5) Bdim7|Bm7(♭5) Bdim7|
|E7(♭9)|E7|
|Am|Am|

エンディング(アレンジ)
|Amadd9|Amadd9|G|G|
|F|F|Em7|Em7|
|Em7|

コード進行分析

イントロ
■Aマイナー
|Ⅰm|Ⅰm|
|Ⅰm|Ⅰm Ⅳm|Ⅰm|Ⅰm|
|♭Ⅶ|♭Ⅶ|Ⅰm|Ⅰm|
|Ⅰm|Ⅰm Ⅳ|Ⅰm|Ⅰm|※1
|♭Ⅶ|♭Ⅶ|Ⅰm|Ⅰm|
|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|Ⅰm|

Aメロ
|Ⅰm|Ⅰm|♭Ⅶ7|♭Ⅶ7|
|Ⅰm|Ⅰm|♭Ⅶ7|♭Ⅶ7|
|♭Ⅵ|♭Ⅵ|♭Ⅲ|♭Ⅲ|
|Ⅳm7|Ⅳm7|Ⅴ7|Ⅴ7|

ブリッジ
|Ⅰm Ⅳm7|Ⅰdim※2 Ⅰm|
|Ⅴ7|ⅤM7※3 Ⅴ|
|Ⅰm Ⅳm7|Ⅰdim※2 Ⅰm|
|Ⅴ7|ⅤM7※3 Ⅴ|

Bメロ
|Ⅰm|Ⅰ7|Ⅳm7|Ⅳm7|
|Ⅱm7(♭5)|Ⅱm7(♭5)|Ⅴ7|Ⅴ7|
|Ⅰm|Ⅰ7|Ⅳm7|Ⅳm7|
|Ⅱm7(♭5) Ⅱdim7※4|
|Ⅱm7(♭5) Ⅱdim7※4|
|Ⅴ7|Ⅴ7|
Ⅰ|m|Ⅰm|

エンディング(アレンジ)
|Ⅰm|Ⅰm|♭Ⅶ7|♭Ⅶ7|
|♭Ⅵ|♭Ⅵ|Ⅴm7|Ⅴm7|
|Ⅴm7|

※1 この行はAドリアンモード
※2 Ⅰmへの半音アプローチを含む経過コード
※3 Ⅴへの半音アプローチを含む経過コード
※4 Ⅴ7の代理

シンプルなマイナー進行【コード進行のポイント】

コード進行について、移調後のAマイナーキーで解説いたします。

この曲のコード進行はマイナー3コード進行・マイナー下降進行・5度進行を組み合わせたシンプルなものです。マイナー3コード進行・マイナー下降進行についてはこちらの記事で解説しています。

コード進行でポイントとなりそうな所は以下の2点でしょうか。

  • イントロの1回り目は普通にAエオリアン(Aナチュラルマイナースケール)でやってるのが、2回り目にF♯音が登場して(D7onAの所)Aドリアンにモードチェンジしている
  • ブリッジは細かくコードを付ければ色んな解釈が出来そうだが、原曲ではベース音と副旋律が固定になっていてAm→Eを示唆しているので、トップノートはクリシェ的な付加音という解釈に。なので、Adim=Am(♭5)とEM7は経過コード扱いで、実質はAmとEの2コード

あとは、ギター演奏としての味を出すためにコードボイシングを工夫しました。

例えば、Aメロ出だしの最初の1音をA音→E音に変えて、Amadd9のアルペジオっぽくしたりとか、Bメロで出てくるA7のところのベースを3度音(C♯)にしてドミナント感強調したりだとか。

そして、例によってエンディングをどうするかで悩みましたが、Aメロのコード進行を変えてⅤm7で終わらせるアレンジを付けて、ちょっと意味深な余韻を狙いました。

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