恋のはじまり

初めての相手は営業さん

「具合悪いんですか?」

あたしが座っていた公園のベンチで頭を抱えていた時に話しかけられた。

あたしは森千紗(もりちさ)。

あまりの暑さにただうなだれていただけだった。

つまり暑くて仕事に身が入らず早退したのだ。

話しかけてきたのは、肌が白くてすらっとした体形でメガネ男子。

 

「大丈夫ですか?」

「大丈夫です。暑すぎなだけで」

立ち上がって帰ろうとした瞬間、ぐらっと目の前が回転した。

「危ない!!」

メガネ男子はくらっとしてふらついたあたしを支えてくれた。

「ごめんなさい…………」

「僕、車なんで送りますよ」

「いいえ、ご迷惑を」

「いいんです。……たまたま仕事でストレスたまってて、解消のためにサボりに来ていただけなんで」

「…………では、お言葉に甘えて」

「はい。あ、僕はこういうものです」

名刺を渡された。

そこに我妻姜維(あがづまきょうい)と書かれていて、

システムエンジニアの職業みたいだ。

いかにも難しそうな仕事内容なんだろうな、と察する。
………

………
車まで案内されると、高級車だった。

ハンドルが逆なので海外製だろう。

座り心地が良い。

それに発進してもあまり振動がない。

そのまま車は発進した。

「そういえば、自宅に冷えピタとかあるの?」

「…………切らしてます」

「じゃぁついでだし買って帰ろうか」

「え!?そんなそこまでしていただかなくても…………」

「良いからいいから。じゃ、ユルハに寄ろうか」

「ありがとうございます」

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