小さいころ、

 

おばあちゃんの家にある大きな仏壇が怖くて堪らなかった。


目を閉じた隙に仏壇の奥から手が伸びてきて、

 

そのまま向こう側へ連れ去られてしまう気がしてならなかった。
 

 

だから、私はいつも家族の誰かが仏壇を拝むのを見計らって、

 

その人の影に隠れてご先祖様に見つからないようにこっそり拝んでいた。

 

でも、今ならわかる。
 

ご先祖様は自分たちに会いに来てくれたことが嬉しくて愛おしくて、

 

触れずにはいられなくなって、思わず手を伸ばしてしまっていただけだったのだ。
 

ただ、このことに気づいたとき、私は周りにそれを伝える術を失っていた。


だから、今はせめてもと、目の前にいるどことなく私に似た目をした

 

小さなその子を怖がらせないように気を付けながら、

 

そっと仏壇の奥から手を伸ばした。

 

 

 

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