フルータリアンの備忘録

フルータリアンとは、果物を主食にしているベジタリアンのことです。人間は果食動物? 果食動物で死ぬ?

葉物野菜は食べなくて大丈夫か――ベビーリーフでグリーンスムージー

2021-11-11 | フルータリアンの実践
■ フルータリアンの謎

ほとんどそのような機会はありませんが、フルータリアンが複数名集まった場合に議論になりそうな話題が「葉物野菜は食べなくて大丈夫か?」というものです。

これに関しては未だによくわからず謎のままです。

フルータリアンはベジタリアンの一種ですが、まったく野菜を食べないという人も多く、そのために菜食主義者の中でも特異な存在として見られることもあります。
果物率 100 パーセントのフルータリアンに実際にお会いしたことはありませんが、きっと素晴らしい健康状態にあるのだろうと想像します。
逆に、栄養のバランスを意識したり、その他さまざまな理由で、意識して野菜を食べているというフルータリアンもいます。

フルータリアンの定義を厳密に適用して「野菜を食べているならフルータリアンではない」という考え方もありますが、この記事では厳密な定義にはこだわらず、
純粋に健康上の観点から優劣を考えてみたいと思います。

他の類人猿たちはどうかというと、チンパンジーの場合、果物の割合が 50%で、野菜が 40%です。
ゴリラは体格が大きい割には野菜の割合が高く、野菜が 80%で果物が 20%。
オランウータンは、果物が 60%で野菜が 30%と、果物の割合が高いものの、環境条件に左右されることも多く、果物が少ない季節には野菜の割合が高くなります。

果物率が最も高いのはクモザル (Spider Monkey:スパイダーモンキー) で、果物率 100%との記述も見たことがありますが、90%以上とされていることが多いようです。
逆にホエザル (Howler Monkey:ハウラーモンキー) はほとんど野菜しか食べない葉食性の霊長類であり、葉の消化を助ける特殊な腸内細菌叢を保有しています。
果物率 90%以上のクモザルの方が、葉食性のホエザルよりも、脳が 2 倍大きいことから、果物食の優位性を主張するフルータリアンもいるようですが、
少し論理が飛躍しているようにも感じられます。

人間の世界でも、青汁だけを飲んで生きているような人もいて、そのような人の腸内細菌は、組成が草食動物に近くなっているといいます。
人間の消化システムは、腸内細菌を変化させながら、ある程度は食べ物の方に適合させていくことができるようです。

フルータリアン栄養学者のダグラス・グラハム博士は、フルーツを主食にしながら、カロリーベースで 2~6%を葉物野菜から摂取することを勧めています。
仮に一日の摂取カロリーが 2000 キロカロリーの場合、その内の 40~120 キロカロリーは葉物野菜から摂取するという計算になります。
野生の類人猿に比べるとかなり少なめと言えるでしょう。 

では私の場合はどうかというと、オランウータンと同じで果物が多いのですが、ベビーリーフをよく食べています。
なぜベビーリーフかというと、チンパンジーの真似をしているからです。

チンパンジーが葉を食べるとき、若くてやわらかい葉だけを選んで食べる傾向があり、特にマメ科の若葉が好物だと言われています。
やわらかい若葉は、消化の難しい硬い繊維分が少なく、アルカロイド類の毒物も少ないという特徴があります。
チンパンジーなどの類人猿は硬いセルロース繊維を消化することができず、アルカロイド類の解毒能力も限られていることから、
繊維も毒物も少ない若葉を本能的に選択していると考えられています。
果食動物に見られるこの嗜好性は、果食動物と草食動物の違いの一つなのかもしれません。
私は、チンパンジーは野菜選びにかけては人間より"目利き"なのではないかと思っています。
野菜であれば何でも調理して食べようとする人間とは違って、チンパンジーはやわらかい若葉を"よく選んで"食べています。

一言でベビーリーフ (幼葉) といっても、様々な種類があります。
代表的なものでは、水菜、ルッコラ、リーフレタス、レッドスピナッチ、マスタードリーフ、ケール、ピノグリーン、デトロイトなどです。
詰め合わせで売っていることが多いので、結果的に複数種類の幼葉から栄養を摂取することになります。

■ ベビーリーフの食べ方

ベビーリーフの具体的な食べ方を紹介します。

・ベビーリーフのサラダ

一つ目のメニューは、ベビーリーフのサラダです。
まず、お皿にベビーリーフを敷き詰めます↓


ベビーリーフは包丁でカットする必要がないので楽です。
次に、トマトをザク切りにして、お皿に入れます↓


ハーブ岩塩またはニンニク岩塩をかけて味付けしたら完成です (いわゆるドレッシングは使いません)。
トマトの代わりにキュウリやパプリカなど他のノンスイートフルーツもよく使います。
私的にはこれだけでも十分美味しいのですが、アボカドを加えるとさらにリッチなサラダになります↓


・ベビーリーフのグリーンスムージー

もう一つのメニューは、ベビーリーフのグリーンスムージーです。
一緒にミックスする果物はさまざまなバリエーションが考えられますが、一番手軽なのはバナナです↓


まずは、ベビーリーフと水を適量、ミキサーに入れてしっかり粉砕します。
その上に、バナナを加えて再度ミックスしたら完成です↓


すごいキレイな緑色のジュースになるので、最初作ったときは感動しました。
苦すぎず甘すぎない絶妙な美味しさが魅力です。
成長した大人の葉物野菜を使ったグリーンスムージーと比べると、苦みが少なめです。
ベビーリーフの値段が高いときは、柔らかそうな葉っぱのサニーレタスなどを選択することもあります。

■ ベビーリーフの栄養メリット

成長した野菜に比べると、ベビーリーフには以下のメリットがあります。

(1) 農薬の散布回数が少ない

病害虫の影響を受ける前の幼葉の段階で摘み取ってしまうため、農薬の散布回数が少なく、使われる化学肥料も最小限である。
無農薬・化学肥料無使用で売られているものも多い。

(2) シュウ酸の含有量が少ない

シュウ酸は、ホウレンソウなどのあく・えぐみの原因とされている成分であるが、ベビーリーフはシュウ酸の含有量が少ない。
シュウ酸は尿路結石を引き起こす可能性があるとされ、ホウレンソウの生食を勧めない医師も多い (下茹でするとシュウ酸が流れ出るため、下茹でが勧められることが多い)。

(3) これから成長してゆくための栄養素がぎっしり詰まっている

レタスと比較した場合、ベータカロテンは 10 倍以上、ビタミン C は約 7 倍、鉄は約 5 倍、カルシウムは約 6 倍、葉酸は約 4 倍、食物繊維は約 2 倍と、
ほとんどの栄養素において優れている。
この豊富な栄養価は、大人になるために必要な栄養素が凝縮されているからと説明することができる。

(4) 苦味成分のアルカロイドが少ない

苦味成分であるアルカロイド系毒素は、幼葉の段階では含有量が少ない。
この毒素は害虫などから身を守るためのもので、幼葉が成長するにつれて含有量が多くなる。

■ グリーンスムージーの理論

私はチンパンジーを真似てベビーリーフを重視しているわけですが、実はグリーンスムージーの考案者もチンパンジーを理想モデルにしています。
チンパンジーは遺伝子の 99.4%が人間と同じであり、生理的に人間にもっとも近い動物だからです。
グリーンスムージーを世に広めたのは、ローフード研究家のヴィクトリア・ブーテンコさんですが、彼女はチンパンジーの食生活を調べる中で、
自身のローフードメニューに圧倒的に足りない食材があることに気づきます。それが葉物野菜です。
まず、野生のチンパンジーの食事構成を以下に図式化してみたいと思います。比較のために、典型的なローフードの食事構成も並べてみます↓


左がチンパンジーの食事構成で、右が典型的なローフーディストの食事構成です。
チンパンジーの食事で注目すべき特徴は葉物野菜が圧倒的に多いということです。
それに比べてローフーディストの食事は、葉物野菜がかなり少なく、ナッツやドレッシングから油脂を取り過ぎているという問題があります。
この問題を解消するため、葉物野菜を美味しく大量に摂取する方法としてグリーンスムージーが考案されたのです。
当時ブーテンコさんは、典型的なローフーディストの食生活をしていましたが、グリーンスムージーを採り入れ、葉物野菜の摂取量を大幅に増やし、同時に油脂の消費を減らすことで、
自身の健康状態を大幅に改善することに成功したと主張しています。

ブーテンコさんは、葉物野菜のことを一言で「グリーン」と表現していますが、一般に「野菜」と称されている食品はもっと細かく分類すべきだと言っています。
つまり、「葉物野菜」と「それ以外」です。
「それ以外」ももう少し細かく分類して、
にんじん、たまねぎ、じゃがいもなどの根菜類、
トマト、ナス、パプリカなどのノンスイートフルーツ、
キャベツ、カリフラワー、ブロッコリーなどのアブラナ科野菜、
に分けることができます。

私たちが「野菜を食べる」と言ったとき、にんじん・たまねぎ・じゃがいもなどの根菜類の割合が多いものです。
しかしチンパンジーは通常、にんじんやじゃがいもなどの根菜類は食べず、飢餓状態など特別な場合にだけ食べると言われています。
野菜をしっかり食べているという意識が高い人でも、よく調べてみるとグリーンの摂取量が少ないことが多いものです。
グリーンを単独で食べると苦すぎて食が進まず、大量に摂取することが難しいのですが、果物と混ぜ合わせてグリーンスムージーにすることで、美味しく大量にグリーンを摂取することができます。

■ 南米のパラドックス――グリーンに対する本能

栄養学上の「南米のパラドックス」とも呼べる興味深い現象があります。
南米人は肉料理中心の食生活をしており、牛肉の年間消費量が米国人よりも約 1.5 倍多い (日本人の約 7 倍) のにも関わらず、なぜか米国人よりも肥満率が低く、生活習慣病も少ないというものです。
しかも、南米人の主食はパンやイモ類、とうもろこしなどで、野菜類はほとんど摂取していません。

このパラドックスに対する答えとして、南米人はマテ茶を大量に飲んで野菜の成分を補っているからではないかと考えられています。
マテ茶は現地で「飲むサラダ」と呼ばれ長く愛飲されてきたもので、不足しがちな野菜の栄養素を補ってきたと言われています。
実際、野菜に匹敵するほどの優れたポリフェノール・フラボノイド類・ビタミン・ミネラル・食物繊維が含まれていることも明らかになっています。
一見、極度に偏った南米人の食生活ですが、マテ茶からグリーンの成分を摂取してバランスをとっており、そこには確かに「グリーンに対する本能」のようなものがあります。

南米人がマテ茶を飲むとき、ボンビージャと呼ばれるフィルター付の金属ストローを使います。こんな感じです↓


金属ストローの先っぽに小さな穴が空いていて、そこで茶葉を漉して飲みます。
緑茶よりもさらにグリーンの風味が強い感じです。
ボンビージャを使った方がグリーンの成分をしっかり吸収できる感じがしますが、掃除が少し面倒なので、普通の茶漉しを使ってもよいでしょう。

マテ茶が素晴らしいのは、カフェインなどのアルカロイド系の成分が少なく、体への負担が少ないことです。
多めに飲んでも、気持ち悪くなりません。
フルータリアンはそもそもお茶を飲まないという人も多いのですが、オフィスワーカーなどで仕事中に飲み物を携帯しておきたいという人もいるでしょう。
マテ茶を採り入れてグリーンの摂取を意識してみるのもいいかもしれません。

■ 動物園も試行錯誤

ここ数年、一部の動物園で、類人猿に与える食事に関して実験的な取り組みが行われています。
動物園では、チンパンジーなどの類人猿に生の果物と野菜を与えていますが、果物の割合を減らして、その分野菜の量を増やそうとしているようです (例えば、多摩動物公園)。
これは世界的な傾向で、動物栄養学の研究が進んでいる欧州の取り組みが起点となっています。
本来の自然状態に近付けるべく野菜の量を増やそうという試みですが、チンパンジーたちの健康状態は改善し、以前よりも風邪をひきにくく、毛艶も良くなり、下痢気味だった便も改善されたといいます。

動物園は"実地"の栄養学のエキスパートだと思います。
人間と遺伝子を 99.4 パーセント共有するチンパンジーの食生活と健康状態から学べる点も多いはずです。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【参考文献】

1. Victoria Boutenko. Green for Life: The Updated Classic on Green Smoothie Nutrition. North Atlantic Books (2011)
2. Dr Douglas Graham. The 80/10/10 Diet: Balancing Your Health, Your Weight, and Your Life, One Luscious Bite at a Time. Foodnsport Pr (2006)
3. T. C. Fry. The Great Fruitarian Debate!: Between Dr. T. C. Fry and Dr. Ralph Cinque (2018) [キンドル版], 検索元 amazon.com
4. 日本マテ茶協会「マテ茶について」http://www.matecha-kyokai.jp/study.html (2021年11月4日)
5. 西田利貞「ドクトル西田のサル学ノート<第 2 回>」https://www.nichirei.co.jp/koras/category/sarugaku/002.html (2021年11月4日)
6. 東京ズーネット「しっかり食べてすこやかに──チンパンジーたちの食事情」https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=tama&link_num=26111 (2021年11月10日)
7. 東京ズーネット「バナナ給餌をやめました──チンパンジーたちの食事情・続編」https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=tama&link_num=26616 (2021年11月10日)

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (フルタリアン初心者)
2021-12-07 11:46:15
いつも為になる記事をありがとうございます!
葉野菜の取り入れ方が分からず、フルーツメインにプラスさつま芋ばかり食べていましたので、とても参考になりました!
ベビーリーフのグリーンスムージーは早速試してみようと思います。
Unknown (管理人)
2021-12-07 12:39:46
たまに、さつま芋食べたくなる気持ちわかります!特に冬。グリーンスムージーはレシピ本も出ているので、いろいろ試してみるのも面白いと思います。商品として売られているのも見かけますが、結局自分で新鮮なものを作るのが一番美味しいんですよ。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。