お久しぶりです!

11月から1か月ほど毎週のように各地のセレクティーボ(世界大会の予選コンクール)に参加していて、軽く燃え尽き症候群気味になっていてブログやSNSを完全に放置していました。笑

今年の集大成となる怒涛のコンクールの様子と結果は、後日まとめてご報告するとして、


マリネラ以外のやる気がなかなか出ないなか「そろそろブログも更新しないとなー」と思っていた矢先

ペルーが混乱に陥ってしまいました💧

日本でもニュースでやっていたようなので、ご存知の方もおられると思いますが、大統領がクーデター未遂で罷免&逮捕され、各地で暴動が多発し、非常事態宣言が発令されるという状況。

この影響で日本人を含む多くの観光客が足止めされてしまうという事態が発生し、日本でもニュースになっていたようですね。


さて、クーデター大統領罷免暴動非常事態宣言といった、日本人にはいまいちピンとこない香ばしい匂いのするワードが並んでいますが、一体ペルーでは何が起こっているのか、せっかくペルーに住んでいるので今回の混乱を簡単にまとめてみようと思います。


大統領による自主クーデターの試み

混乱のきっかけは12月7日、この日は午後3時からペルー議会でカスティージョ大統領に対する3回目の弾劾決議の審議&採択が予定されていました。

実はカスティージョ氏、ペルーの検察から7つもの汚職疑惑で告発をされていました。加えて、側近や親族にも汚職の捜査が及んでいたこともあり、議会では大統領を弾劾しようと、これまで2度にわたって弾劾の審議が行われていました。

以前の2回とも弾劾は否決されていましたが、3回目の今回は可決される可能性も報道されていたことに加え、当日の午前中に汚職疑惑の関係者がカスティージョ氏への贈賄の事実を証言したことで、事態は政権側にとって不利な状況になっていました。


弾劾の可能性が高まったことで、危機感を抱いたカスティージョ氏は正午ごろ

ペルー共和国議会の解散と臨時政府の樹立を一方的に宣言する

という誰もが予想できなかった方法で、この事態を打開しようと企てました。

いわゆる自主クーデター(Auto Golpe)というやつです。

「自主クーデター」といえば30年前の1992年、日系人のアルベルト・フジモリ元大統領が自身に権力を集中させる為に、軍の協力のもと議会の解散&憲法の停止を強行したという、フジモリ元大統領を「独裁者」たらしめた悪名高いものとして有名です。

カスティージョ氏は、そんなフジモリ元大統領の長女であるケイコ氏と大統領選の決選投票で争いましたが、フジモリ元大統領を独裁者だと批判し、僅差でケイコ氏を破って当選しました。

そんな彼が汚職疑惑で窮地に追いやられると、自主クーデターを企てる…。

ペルー政治の救いようのなさをよく表しているな、という感じがします。笑


さて、このカスティージョ氏の暴挙に対して議会は反発します。

議会そのものに喧嘩売っちゃったんですから、まぁ当然ですよね。笑


議会はすぐさまカスティージョ氏の「道徳的無能力」を理由に罷免決議案の採決を実施し、賛成票101票、反対票6票、棄権10票という圧倒的多数でカスティージョ大統領の罷免が可決されるという結果となりました。

議会の解散宣言から大統領の罷免まで、わずか2時間というスピード決着でした。


そもそも、カスティージョ氏は今回のクーデターを実行するにあたり、議会の解散をあくまで宣言しただけで、軍や警察の協力を事前に得たわけでも無かったようです。(一応協力を求めようとしたようですが、さすがに断られたとか…。笑)

そのため強制的に議会を解散させる力もなく憲法裁判所もカスティージョ氏の宣言を憲法違反としたことで、カスティージョ氏にはそもそも勝てる見込みがありませんでした。

誰からも協力を得られなかったカスティージョ氏ですが、自身への罷免審議中にさすがに勝ち目がないことを悟ったのか公邸から逃げ出し、政治亡命をするためメキシコ大使館へと向かっていたところ「反逆罪の容疑で拘束されました。


就任時からそうでしたが、最初から最後までなんともお粗末な大統領でした…。


ちなみに、反逆罪の容疑で逮捕されたカスティージョ氏ですが、「クーデターの先輩」であるフジモリ元大統領が収監されているリマ郊外の刑務所に移送されました。笑


議会による罷免が決まったことで、憲法の規定に基づき副大統領だったディナ・ボルアルテ氏が大統領に就任しました。ちなみに、ボルアルテ氏はペルー史上初の女性大統領です。

ディナ・ボルアルテ新大統領


彼女は副大統領ではありましたが、最近はカスティージョ氏との関係が悪化していたようで、クーデターにも反発していたそう。

議会では野党からも「憲法秩序が守られた」とボルアルテ氏の大統領就任が歓迎されました。


さて、これで一件落着…といきそうなものですが、

そうはいかないんですねー。


ペルー各地で暴動が多発

クーデター未遂の翌日から、特にペルー南部や内陸部でカスティージョ前大統領の支持者らが、カスティージョ氏の開放」「国会の解散」「総選挙の実施などを求める抗議活動を始め、これが拡大していきました。


この抗議活動がエスカレートし、警察官に対する攻撃、行政施設を破壊・放火、各地の主要幹線道路を封鎖、略奪、地方空港の占拠 etc... といった事態に発展しました。

この混乱で、残念ながら死傷者も多数発生してしまいました。

こうした事態を受けて政府は、14日に国内秩序の維持を目的としてペルー全土に30日間の非常事態宣言を発出するに至りました。特に荒れている一部の地域では夜間の外出禁止令まで出ていました。

私たちの住むトルヒーヨ市では特に大きな混乱は無かったのですが、幹線道路の封鎖の影響で県外に出られない状況は数日間続いていました。(現在は一応解消済み)


非常事態宣言によって状況は少し改善しましたが、もともと活動が活発だった南部と内陸の一部では現在も抗議活動が続いています。


ちなみにペルー警察によると、今回のペルー各地で行われている抗議の中に

センデロ・ルミノソの政治フロント団体である基本的権利と恩赦の為の運動MOVADEF)」積極的に活動していると発表しています

センデロ・ルミノソその残虐さから南米のクメール・ルージュとも呼ばれ、80年代から90年代初頭にかけてペルー各地で武力による政府転覆を目指すべく多数のテロ事件を起こした、毛沢東派の極左武装テロ組織のことです。

MOVADEF…センデロ・ルミノソの創始者アビマエル・グスマンの指示のもと彼の弁護士が設立した団体で、過去に事件を起こしたテロリスト達の釈放を求める活動をしており、終身刑の末2021年に獄死したアビマエル・グスマンの開放も求めていました。つまるところセンデロ・ルミノソのフロント団体です。


さらに今回のゴタゴタに対して、左派政権であるアルゼンチン、コロンビア、ボリビア、メキシコの各国政府がカスティージョ氏への支持を表明する共同声明を発表しました。

共同声明では、カスティージョ氏が「非民主的な嫌がらせの犠牲者」であるとして、カスティージョ氏への支持を明確にし、さらに自由選挙で表明された民意を覆すことを控えるように求めるといった内容までありました。


特にメキシコの大統領カスティージョ氏への支持を明確にしており、「問題が解決されるまでペルーとの関係を"保留"し、カスティージョ氏を大統領として認める」とまで発言しています。

カスティージョ氏は逮捕前にメキシコ大使館に亡命するため向かっていましたし、氏の家族(妻と子供たち)は既にメキシコに亡命していることからも、メキシコ政権が積極的にカスティージョ氏を支援していることは明らかで、ペルー政府はこうしたメキシコ政府の態度や発言を内政干渉であると非難し、メキシコ大使を国外退去させるなど、両国の関係がかなり悪化しています。


あくまでも憲法秩序のもとに発足した新政権が、国内の混乱を抑えようとしている中で、外国の政権が階級闘争的な理由でペルーの憲法秩序や政権の正統性に干渉するというのは、ペルー国内の混乱を煽る過激な勢力を活気づかせるだけな気がします。

国内で平和的に抗議の意思を示している市民にとっても、なんとも迷惑な話です。


ペルー政治のどうしようもなさ

そもそも一方的に議会の解散という反民主主義的な暴挙に打って出たカスティージョ氏の擁護って、論理的にかなり無理があると思いますよね。

しかし、就任時からお粗末な政権運営で安定して支持を落とし続けていたカスティージョ氏に負けず劣らず、ペルー議会もお粗末で国民からの支持がかなり低いんです…。笑

もそもペルーには安定して議席を持つ全国的な政党というものがほぼなく、選挙のたびに新たな政党が生まれては消えていくというものを繰り返していて、政党政治が全然機能していないんですね。

多くの政党が大統領候補者の支援グループのようなものでしかなく、各政党は全国レベルの政党というよりも特定の地域に強い影響力を持つ、言わばカウディージョ(地方ボス)的」な政治的有力者の支援政党がほとんどで、それらが全国でしのぎを削っているような状態…。

そうなると議会はまとまらず、ポジショントークに終始し、政権側などと足の引っ張り合いの泥仕合を繰り広げるという訳です。

さらに汚職も蔓延していまして…

汚職のデパートと化しているペルー政治への国民の信頼度は限りなく低く

元々カスティージョ氏に期待をしていた人たちからしたら、「大統領を辞めさせるなら、お前たちも辞めろ!」という考えになるわけです。


ペルーの今後

緊急事態宣言によって国軍も治安維持に動員されており、当初よりは激しい暴動も治まってきていますが、一部地域ではまだまだ混乱が続いています。

果たしてペルーの今後はどうなってしまうのでしょうか。

ペルー議会は、暴動によって多くの死傷者で出ていることに加え、国民による総選挙の早期実施を求める声が多いことから選挙の前倒し実施を審議しており、のところ総選挙を2024年4月に前倒しする見込みです。(もともとは2026年に実施予定)


今後のペルーについて見なければいけないのは、前倒しで実施予定の総選挙までの政権運営についてと、選挙後の政治状況についてです。

就任後すぐに、暴徒と治安部隊の衝突で市民に死者が多くでていることを理由に閣僚が辞職したりと、落ち着かないボルアルテ新政権ですが、カスティージョ政権が残した多くの課題を抱えながら政権を運営し、2024年に実施見込みの総選挙を無事に実施しなければいけません。

しかしボルアルテ大統領は、もともとカスティージョ氏と同じ急進左派のペルー・リブレ党に所属していましたが、今年初めに新聞のインタビューで「ペルー・リブレ党のイデオロギーを支持していない」と語ったことで既に党から追放されています。

議会に基盤となる政党がないボルアルテ大統領が、果たして総選挙までその任期を全うできるのかすら不透明です。


さらに先述の通り、そもそもペルーは民主主義の仕組みに構造的な問題を抱えているため、選挙を前倒しで実施したからといってこの状況が改善するのかというと、あまり期待はできません。
「政策的に似ているそれぞれの政党が一つの大きな全国政党としてまとまり、党内で徹底的に政策を戦わせて候補者を一本化する」という形を実現しない限り、選挙そのものが国民の分断を可視化させ、それをより加速させるだけで、また同じようなことを繰り返すのだろうなぁ、と個人的には思います。

簡単なまとめ

色々と難しいこと書きましたが、今回の混乱を簡単にまとめますと


カスティージョ大統領、汚職疑惑でクビの大ピンチ!
カスティージョ「やばいなぁ。せや!クーデターで一発逆転や!」
カスティージョ「議会解散な!はい俺の勝ち!」
議会・国民・警察・軍・メディア「は?」
仲間達「嘘やろ…?」
憲法裁判所「そんなん無効やで…。」
議会「汚職以前の問題でクビやろ!クビクビ!!」→クビ決定
カスティージョ「やば!もう無理か…。逃げよ。」→仲良しのメキシコ大使館へ
警察「もう大統領ちゃうし、なんか逃げてるから逮捕な」→逮捕
議会「副大統領が大統領に昇格な」
ディナ・ボルアルテ新大統領誕生(初の女性大統領)
カスティージョ支持者「カスティージョを解放しろ!議会も解散や!」→一部が暴徒化
道路封鎖・行政施設を破壊&放火・空港を占拠・警察を攻撃 etc...
ボルアルテ新大統領「やばい!なんとかせな!」→非常事態宣言
議会&大統領「選挙前倒しするから、暴力やめて、選挙で意思示して!」
選挙が2年前倒し(2024年)の見込み

こんな感じです。笑

ペルー政治はエンタメとしては面白いですが、住んでいる私達からするとクーデター当日は一体どうなるのだろうかと、かなりヒヤヒヤしました…。
来年は大きな混乱が無く、平穏な年になりますように。

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