江口 圭一『新版 十五年戦争小史』青木書店(第2版)1991

9784480510068


<「この前の戦争」を知るために、最も基本となる通史>


日本人が「戦後」という場合、あるいは「先の大戦」や「この前の戦争」という場合、1945年に終わった戦争を指します。

この戦争の呼称・期間には種々の議論が続いていますが、おおよそ現在の歴史学では「アジア・太平洋戦争」と呼称し、1931年の満州事変(柳条湖事件)から194592日(ミズーリ艦上での降伏調印日)をその期間としています。

 

著書は、こうした現在の状況を踏まえながら、あえてこれを「十五年戦争」とした上で、1931年~1945年をその期間としています。

大学での講義をベースにしているため、それぞれの章構成は短く、歴史事実の相互連関を意識しており読み進めやすい文体です。

 

最近マスコミ等で、戦争の個別事象を抽出し、確証バイアスのかかった主張が目立ちます。

確証バイアスとは、「一つの事象・現象を特定の解釈で理解してしまう癖」のことです。

自分の解釈や理解と異なる事象が発生すると、意識・無意識の内に、無視したり、こじつけたりしながら自分の解釈や理解にはめ込んでしまうという思考や行動の形で顕在化します。

 

確証バイアスがかかった主張は、そのまま受容れるのは賢明ではありません。

必ず「歴史事実」の知識と照らし合わせながら、自分の理解にしないといけません。

 

そのためには、対象となる戦争が「なぜ起こり、どのように推移し、どのような転換をし、どのように終わったか」を事実経過として頭に入れておくことが大切です。

本書は、こうした事実経過を学ぶのに最適です。

(2021)