半月板損傷への半月板切除術は不要~切除術と理学療法の比較~

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膝関節について
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どうも。

管理人のKnee-studyです。

 

今回は膝関節にについて。

膝関節の中に「半月板」という組織が存在します。

 

半月板の基本的な構造については以前の記事で紹介しました。

高齢者の半月板損傷の特徴~変形性膝関節症との関連は?~
半月板は膝の関節の間で内外側にそれぞれ存在し、ショックアブソーバーをして機能します。そんな半月板ですが、多くの組織と同様に退行変性を起こします。つまり加齢と共に半月板に関連する疾患は増加するということです。また、変形性膝関節症との関連も指摘されており、半月板の損傷が変形性膝関節症の進行を早める可能性があるということです。

 

 

この半月板ですが、若年者ではスポーツが主因として、高齢者では退行変性の一部として半月板損傷を来します。

そして、その半月板損傷に対し、切除術もしくは縫合術を選択し施行することが臨床にいるとよく遭遇するケースになります。

 

今回はこの半月板切除術の可否について研究した内容について触れていき、理学療法の立ち位置について考えていきたいと思います。

 

 

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1.半月板損傷に対する手術は主に2種類【縫合術・切除術】

 

半月板損傷に対し、選択される手術療法には2種類あります。

 

●半月板切除術=断裂した組織を部分的に切除し関節面を整える手術

 

●半月板縫合術=断裂した組織を引き寄せ、縫合し極力元の状態に整える手術

 

両者の違いで明確なのが、

「組織を残すのか?・切除するのか?」

になります。

 

多くの研究では、縫合術のほうが術後の機能は長期的に保たれているとされています。

 

ただし、縫合術部に負荷がかからないよう免荷の期間が設けられたりなど、術後の治療期間は縫合術の方が長くなる傾向にあるようです。

 

切除術に関しては、元々あった組織を切除するため、長期的に見ると切除術後の半月板機能不全は変形性膝関節症などの膝関節機能障害を引き起こすという見解もあり、残せるものは極力残すべきと考えらえがちです。

 

ただし、半月板の再生の面から考えると縫合術も完璧な手術療法とは言えない状況にあります。

 

半月板縫合術の方が勧められているようですが、

半月板内側領域は血流が乏しく、縫合術を行ったとしても癒合しないケースもあることから治療成績は不安定となります。

 

 

 

 

2.半月板切除術の必要性について検討した文献

 

上述したように、半月板損傷に対する手術には、縫合術と切除術の2種類があり、

切除術は長期的な予後を考えて推奨はされませんが、半月板の血流、変性及び様々な損傷形態、理学療法長期化を理由に、切除術を選択されることが多いのが現状です。

 

 

そんな中で、今回紹介する文献では半月板切除術の有効性について説いています。

その対象として挙げられているのは、理学療法になります。

 

 

つまり半月板損傷に対し、切除術を施行する群と理学療法を行う群で比較し評価をしているということですね。

 

 

 

研究の背景・概要

 

近年海外では、半月板断裂患者の膝機能改善に関節鏡視下部分的半月板切除術(以下、APM)でなく理学療法を第一選択とする戦略が主流化してきている中で、APMに対し理学療法が劣っていないかを検証することを目的としています。

 

オランダOLVG Oosterpark Hospitalのvan de Graafら(ESCAPE)は、ロッキング症状のない半月板断裂患者321名を対象として両者を比較する多施設非劣性RCTを行っています。

 

一次アウトカムは、ベースラインから24ヶ月のInternational Knee Documentation Committee Subjective Knee Formスコア変化を見ています。

 

 

方法

 

この研究は、オランダの9つの病院で実施された非劣性、多施設、ランダム化臨床試験であり、参加者は45〜70歳で、合計321名であり膝関節のロッキングのない半月板損傷が対象。

 

除外対象は、膝の不安定性、重度の変形性関節症、および肥満度指数が35を超える患者としている。

 

研究機関は2013年7月17日から2015年11月4日まで行われ、24か月間フォローアップし評価を行っている。

 

参加者321名の内、159名はAPM(n=159)群とし、残りの162名は理学療法(n=162)群とし、理学療法プロトコルに従ってリハビリを行っている。

 

理学療法プロトコルは、8週間にわたる16セッションのエクササイズセラピーで構成。

 

 

結果

 

これらの結果は、半月板損傷患者の自己申告による膝機能を改善するための関節鏡視下半月板部分切除術による早期手術と比較して、理学療法の有効性を示している

(総合的に見て半月板切除術を行うよりも理学療法を行う方が推奨されている)

 

 

●24か月のフォローアップ期間中で膝機能はいずれも改善を示した

※APMグループ【26.2ポイント(44.8から71.5)】、理学療法グループ【20.4ポイント(46.5から67.7)】

 

●理学療法のAPMに対する膝機能の差は24ヶ月の群間差3.6点で経過している

 

有害事象はAPM群で18例、理学療法群で12例発生した

 

再手術はAPMグループで3回、理学療法グループで1回とAPM群の方が悪化する傾向にあることがわかる

 

膝の痛みのための追加の外来通院は、APMグループで6回、PTグループで2回と、最も頻繁な有害事象である、APMの方が術後の治療が長引く可能性が示唆された

 

結論

 

APM(関節鏡視下半月板部分切除術)は理学療法よりも効果的ではないことを示唆する結果となりましたが、依然として半月板切除術は頻繁に行われているのが現状。

 

これらの結果に基づいて、理学療法はロッキングのない半月板損傷に対する治療の選択肢として、手術以外にも理学療法が有効であることを示す結果となった。

※半月板切除術にとって代わる選択肢の一つとして考えられる

 

 

Effect of Early Surgery vs Physical Therapy on Knee Function Among Patients With Nonobstructive Meniscal Tears: The ESCAPE Randomized Clinical Trial より引用

 

 

3.まとめ

 

今回は半月板切除術と理学療法の機能回復について比較した文献を紹介していきました。

 

理学療法はDrに指示のもと治療を遂行していくものであり、ある種上下関係にある構図が成り立ちます。

そんな中で、今回の文献の結果は理学療法の価値を高める一つの報告ではないかと思います。

(海外のDrと理学療法士の関係性はまた違ったものであるためか・・・)

 

理学療法士にとって有効である結果が出れば出るほどに、それに伴った責任もついてくる訳でより自己研鑽が必要な環境になってくる訳です。

 

一つ一つ知識・技術を積み重ねてまずは勤務先のDrからの信頼を勝ち取るところから始めていく必要がありますね。

 

それでは本日はこの辺で。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。

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