2021年05月09日
【夜空に部屋を浮かべて】 08(終)
バスは部屋の玄関の前まで来ると、静かに停車した。
「じゃあ行くね」
マモルがそう言って歩き出す。
僕は何を言っていいのか分からず、ただ黙ってマモルが出て行くのを見ているだけだ。
マモルはバスに乗ると後の方の席に座り、窓を開けた。
「じゃあね、ユキオ。さようなら、先生」
扉が閉まり、バスがゆっくりと動き出す。
バスが離れて行くと、その距離の分だけ僕の胸の痛みも強くなっていく。
「マモルー!」
僕は力いっぱい叫んだ。
マモルは窓から身を乗り出し、僕たちに向かって手を振った。
僕も大きく手を振った。
バスが星空に向かって走って行く。
僕と先生はバスが見えなくなるまでずっと見送っていた。
朝7時、目覚まし時計の音で俺は目を覚ました。
何か夢を見ていたはずだが、まったく思い出せない。
ただ悲しい夢だったような気がする。
朝からなんだか暗い気分だ。
でも会社へ行き忙しく働いていれば、すぐに気分は晴れるだろう。
このところ熱帯夜が続いているせいで汗で体がベトベトだ。
シャワーを浴びるために俺は浴室へ向かう。
今日も暑い1日になりそうだ。
今夜も熱帯夜になるようだったら、夜空に部屋でも浮かべてみよう。
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