日本考古学の原点!?弥生時代の遺跡『登呂遺跡』(静岡市)

静岡県

復元された茅葺き集落が広がる登呂遺跡。水田や高床式倉庫から、稲作中心であった弥生時代の暮らしを今に伝えます。この遺跡なくして日本の考古学は語れないほど重要な遺跡であるそう。いったい何がそれほどスゴイのでしょうか?

訪問日:2023/2/24(金) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

町の中の弥生時代

登呂(とろ)遺跡は、静岡市駿河区にある弥生時代の集落跡。現在は、登呂公園として整備されています。少し離れた駐車場から歩いていくと、田んぼの先に復元集落が広がる姿が見えてきました。

向こうにはマンションなどの近代建築が見える中、茅ぶきの竪穴式住居が並ぶ姿。この違和感がたまりません。

かつて10軒程度あったと考えられる住居のうち4軒が復元されています。

考古学史上超重要な遺跡

登呂遺跡は、日本の考古学において特別な存在であるそう。規模もそれほど大きくは見えませんが、いったいどのような価値があるのでしょうか?

この遺跡は、1943年に太平洋戦争に向けた軍需工場建設の際に発見されました。その際に、日本初となる水田跡が見つかります。これにより「弥生時代=稲作」という今では当たり前のように浮かぶイメージを作り上げることに。さらに、この発掘調査がきっかけとなり、日本考古学協会も設立。戦後の日本考古学を進める第一歩となった遺跡なのです。

1952年にはその価値が認められ、弥生時代の遺跡としては初めて国の特別史跡に指定されました。

公園内では、集落とともに水田も復元されています。この水田では実際に作物も植えられています。冬場の訪問であったため少しさびしい雰囲気ですが、夏場に訪れれば青々とした田園風景が広がることでしょう。

 

ねずみ返しの高床式倉庫

教科書でもおなじみの高床式倉庫。収穫物を保管するため、通気性が良くなるようにこのような構造をしています。人が入るときはハシゴをかけていたと考えられています。

柱にはねずみ返しも完備。ただ板をはめただけというシンプルな構造ですが、その効果は抜群。

このねずみ返し、今でこそ広く知られた仕掛けですが、実は最初に発見されたのがこの登呂遺跡であったそう。当初は用途不明な丸い板でしたが、発掘調査に携わった東京大学人類学教室講師の八幡一郎氏がねずみ避けのためのものと推定。後の研究により、それが正しいと判明されました。

存在感のある祭殿

こちらの高床式の建物は倉庫ではありません。占いに利用された卜骨(ぼっこつ)が出土したことなどから、豊穣の祈りを捧げた儀式などが行われた祭殿と考えられています。

両サイドには棟持柱(むなもちばしら)が備えられており、屋根の両端にはX状に伸びる千木が。他の住居とは異なる建築が、特別感を引き立てます。

住居群からは少しだけ離れた位置にあり、手前には人が集まれるような広場ができています。祭事の際には、集落の人々全員がこの祭殿の前に集まったのでしょうね。

集落を襲った洪水

この登呂遺跡の集落は、2度に渡り洪水を受け壊滅的な被害が出たことがわかっています。現在復元されている集落は、1度目の洪水で埋没する前の最盛期の姿とのこと。

建物の土台は、周辺より少し盛り上がっています。これは溝があった跡で、地形も含めて復元されているのです。凸凹の地形から排水対策は行われていたと見えますが、それでも防ぎきれないほどの水害があったのですね。

洪水ののち、集落は別の場所へ移転しますが、水田は補強されて復興したこともわかっているそう。太古の昔の災害から復興まで推測できてしまう、発掘調査おそるべしです。

博物館と美術館も隣接

登呂公園のそばには、登呂遺跡の貴重な出土品や資料が展示された静岡市立登呂博物館が建っています。

休館日でした!!

金曜の訪問でしたが、前日の木曜は祝日。祝日の翌日はお休みとのことです。この博物館が開館している時間に限り、さきほどの復元住居の扉が開放され、内部見学することもできるそうです。

さらに、博物館の隣には静岡市立芹沢銈介美術館もあります。重要無形文化財「型絵染」の保持者、すなわち人間国宝である芹沢銈介を顕彰した美術館。本人により彼自身の作品と、彼が集めたコレクションが静岡市に寄贈されたことをきっかけに建設されました。

どうせ登呂遺跡を訪れるならば、たっぷり時間をとって博物館と美術館もあわせて訪問したいところです。

アクセスと営業情報

JR静岡駅南口からバスで10~15分のバス停《登呂遺跡》下車後、目の前。

登呂遺跡公園は24時間解放されています。ただし、駐車場は8:30~17:00と時間が決まっているのでご注意ください。また駐車料金400円が必要となります。博物館が休館でも駐車料金はかかります・・・。

静岡市立登呂博物館のデータはこちら。

開館時間 9:00~16:30
休館日 月曜、翌祝、年末年始
料金 300円
公式サイト https://www.shizuoka-toromuseum.jp/

※掲載の情報は2023年2月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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