雪全ツ版『仮面のロマネスク』感想・1

雪組公演感想,雪組

雪組全国ツアー公演『仮面のロマネスク』~ラクロ作「危険な関係」より~ を観てきました。
観劇したのは準ご当地ともいうべき梅田芸術劇場での公演、4月13日(土)12時、16時30分、4月14日(日)16時30分の3回です。

『仮面のロマネスク』は初演版の雪組ゆき花版以外、つまり宙組のゆひすみ版、花組のみりかの版、みりゆき版は観てます。

『仮面のロマネスク』はダブルヒロインの作品で、このヒロイン2人が良くないとどうにもならない。今回は大満足でした。

まずは第1ヒロインのメルトゥイユ侯爵夫人の夢白ちゃんが最高でした。
立役系娘役、大好きなのよ。
小柄なのに目立つ華があるし、スタイルいいし、なんといっても芝居の役幅が広いし!
それにメルトゥイユ夫人は美貌じゃなくちゃねぇ。説得力がなくなるってもんよ。

「あなたが社交界で笑いものになるのが我慢なりませんでした」
「ヴァルモン子爵の名が泣きますよ」

とヴァルモンを煽るセリフの良さ。
夢白メルトゥイユは「煽ってます!!」という火力の強さは余裕の微笑みの中にある。過去のメルトゥイユ夫人よりはおっとりけしかけている印象ですね。
権高さもありつつ平静さが前に出ている、静かな怖さ。小さな動物をいたぶるような、退屈しのぎの残酷さにも見える。でも実際はメルトゥイユとてそんなに冷静な心持ちでもないのだけれど。

あーさヴァルモンの演技のためかと思いますが、今回の雪組全ツ版『仮面のロマネスク』って過去に観たものよりヒリヒリする感じは薄め。
みりおが演じたヴァルモンと花乃・仙名メルトゥイユが見せた、サスペンスかと思うほどのバチバチの争いは感じませんでした。
それよりは2人の女に恋してやまぬヴァルモンと、主導権を握っているつもりで翻弄されているトゥールベルのあわれな恋物語でしたね。

夢白ちゃんのメルトゥイユ夫人はもちろん「仮面」をつけているのだけれど、仮面の下で揺れ動く感情を見せるのが巧み。感情を見せすぎず、でも見せるというコントロールの上手さがさすがです。

ラストシーンの泣きそうな笑顔は、それまでの居丈高さがあってこそ。
社交界を仮面をつけて生き抜いてきたメルトゥイユ夫人が、ヴァルモンの遠からぬ死を知って恋心を解放する。
つかの間の哀しい幸せを味わうメルトゥイユの笑顔が美しかった。

そして第2のヒロイン・トゥールベル夫人は100期生のともかちゃん。
非路線ながら実力派、美貌の娘役という位置付けではないと思いますが、舞台で光る人です。

色気のある娘役さんで芝居も上手いから、トゥールベルのよろめき芸がお見事。ほんといいわ〜。
ヴァルモンに迫られて困惑し、おーじ演じる司祭ルブランに告解しているときの血の気の失せたような儚さが、トゥールベル夫人の清らかさと世慣れなさに映る。
そんな貞淑な夫人が恋をして、愛し愛されることを知り、メルトゥイユ邸の舞踏会では愛された自信ゆえにヴァルモンが自分の手を取ると確信してたのに裏切られて。
一連の芝居がほんといいのよ。

ヴァルモンの毒牙にかからなければ、尊敬し信頼できるりーしゃ法院長と幸せな一生を送れただろうに。(いや、戦乱の世になるとどうなんだろう)
あーさヴァルモンはともかトゥールベルにちゃんと惹かれていたのがわかるだけに、気の毒である。

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