グアンタナモ収容所で14年間収容されていたモハメドゥ・スラヒの手記を原作に描く社会派ドラマ。
2005年、人権派弁護士のナンシー(ジョディ・フォスター)は、アフリカのモーリタニア出身、モハメドゥの弁護を引き受ける。
彼は9.11の首謀者の1人としてグアンタナモ収容所に拘束され、地獄のような投獄生活を何年も送っていた。
同じ頃、テロへの“正義の鉄槌”を望む政府から米軍に、モハメドゥを死刑判決に処せとの命が下り、9.11で親友を亡くしたスチュアート中佐(ベネディクト・カンバーバッチ)が起訴を担当する。
真相を明らかにして闘うべく、両サイドから綿密な調査が始まる。
モハメドゥ側のナンシーが彼の味方をするのは当然ですが、政府側のスチュアート中佐が真実を知ってどう出たか?
実話であるという彼の行動が、この映画の見所のひとつでもあります。
グアンタナモでの拷問については、以前から色々聞いてはいましたが、民主主義国家のアメリカで?まさか、と半信半疑でした。
しかしなんとまあ、すさまじいこと。
水責め、大音量や強力ライトで何日も寝かせない、性的暴行、手枷足枷、同じ姿勢で20時間…
気が狂わないのがおかしいような拷問です。
映画の中の拷問シーンの画像は、ネットで検索してもあまり出てこないのですが、「Guantanamo detention camp torture」などで画像検索すると、続々と出て来ます(下の2つの絵)。
しかも不当な拘束に対してナンシーはアメリカ政府を訴え、2010年に勝訴したものの、その後政府が控訴したため、実際に釈放されたのは2016年であったと。
モハメドゥは起訴されることもなく、14年間グアンタナモに収容されていたのです。
数年前、イスラム過激派組織「イスラム国」が日本人を拘束しウェブ上に公開した殺害警告映像には、衝撃を受けました。
その時に人質に着せられていたオレンジの服が、実はグアンタナモの囚人服であり、その当てつけだということにも。
9.11で罪のない人々を3千人も殺されたアメリカの怒りも分かりますが、だからといって報復に何をしてもいいという訳ではない。
負の連鎖は何処までも続いてしまう…
アメリカの恥部、しかしこれを世に知らしめなければいけないという、映画に携わった人たちの良心と使命感がひしひしと伝わってくるような作品です。
監督はケヴィン・マクドナルド、イギリス・アメリカの合作映画だそうです。
公式HP
カンバーバッチがどうしても映画化したいといい、その脚本の良さに感動して、
自らも出演することにしたのですって。
辛いけれど、観る価値はあると思います。