日々是好日日記

心にうつりゆくよしなしごとを<思う存分>書きつくればあやしうこそものぐるほしけれ

政府のパンデミック対応から見えてくる「失敗の本質」

2021年04月15日 07時26分21秒 | 政治
 戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎著「失敗の本質~日本軍の組織論的研究」(中央公論社)は第二次世界大戦における日本軍の敗北を組織論的に分析した評価の高い書物である。ノモンハン事件からはじまって、ミッドウェー作戦・ガダルカナル作戦・インパール作戦・レイテ海戦、そして最後に沖縄戦など対米戦争における致命的な敗北の例を挙げて、そのそこにひそむ原因を探るというもので、発売当時大層話題になった。  本書の結論を要約すると、「失敗の本質」は、①第一線の戦闘組織間を結ぶコミュニケーション不足による方針・戦略の浸透の不徹底、②強力な戦略モデルと既成概念への執拗なまでの自縄自縛、③自己革新が起こらないダイナミズムを欠く硬直組織、かくて最終的に「戦略の不在」と「戦術の不能」に帰すると結論されている。
 これはあくまでも先の対米戦争時の軍と政府の政策と戦略の失敗を探索したものだが、今般のコロナパンデミックに対する安倍前・菅現内閣による両政府の「失敗」の足跡をたどってみると、不思議なほどに上記日本軍の作戦失敗と同様に説明できそうで、この約80年の年月の隔たりを全く感じさせない既視感で迫ってくるのはどうしたことか?と驚いてしまう。
 孫氏は言う、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」。あの戦争の時もまったくそうであった。敵を全く知らずに、ただ想像をたくましゅうし、或る者は巨大に評価し、またある者は過少に認識したゆえに、戦う相手の像が人によってまちまちに描かれた。結果、科学先進国の責務として当然着手しなければならなかったワクチンや治療薬開発に全く意を注がなかった。イソジン騒ぎにいたっては原爆に立ち向かう竹槍訓練にさえ酷似していた。
 感染者が発生すると、感染者につながる前と後の濃厚接触者を探す伝家の伝染性疾患対策手法はよいとして、市中にどれほど潜在感染者がいるかにまで調査をするPCR検査体制の組織と要員を欠く戦闘員配置の作戦失敗から致命的な敵情知識の不在が顕在した。
 かくして、第一波、第二波、第三波、第四波と波状攻撃が繰り返されるたびに感染者数が激増するに及んで保健所がする防疫体制は壊滅状況となってもはや敵の跋扈をただ見ているだけの状況になってきた。これは沖縄戦に次いで東京大空襲から全国津々浦々へと敵の焼夷弾攻撃に為す術を失った旧軍の状況と瓜二つである。この間、最高司令官たる内閣総理大臣からはパンデミック終焉後の”Go To Travel&Eat”キャンペーンの楽しみが喧伝されるだけ、生きて遊べ・食べられるか否かも判然としない空手形。かくて我ら日本人はCOVID-19を介してあの「戦争」を振り返り思い出しつつ臍をかんでいるだけの今日この頃となってしまった。
 こんな司令官が、国際情勢を語るべく今日米国に旅立つという。例によって期待するものは何も無いが、ただただ手に余るような危険な土産を貰ってこないことだけを祈るのみである。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿