付け焼き刃の覚え書き

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「フシノカミ7」 雨川水海

2022-06-26 | 本屋・図書館・愛書家
『勇者の一歩を踏んだ者がいたことを、本は伝える。
 今まで誰もやったことがない? ならば今、お前がやるがいい。
 いつか誰かがやるだろう? ならば今、お前がやるがいい。』


 不死鳥要塞での人狼との戦いはアッシュたちの勝利に終わり、人的損害もほとんどなかった。しかし、発端の地であるヤソガ子爵領は壊滅打撃を受けており、復興の指揮を執るべき子爵家の人間は誰も生き残っていない。
 かろうじて生き延びた領民は難民となり四方に散り始めるが、王都では勢力争いにかまけて何ら支援の手が打てない。その間にサキュラ辺境伯領への難民は千を超え、万に届こうとしていた……。

 書籍化にあたって「辺境から始める文明再生記」という分かりやすいタイトルがついたけれど、無事に最後の最後で「フシノカミ」のタイトルを回収して編纂版の本編完結。つまり、本がつなぐ壮大な人類再生計画の顛末であり、本好き男の下剋上。無理を不可能と諦めず、まず一歩を踏みだし、その後に続く多くの人に助けられて進み続けます。まさに、本を愛し、本に助けられ、本を助け、本に溺れた男の一代記。最後の最後に祖父のワガママに振り回された孫の逆転勝ちまで。やっぱ面白いし、泣けちゃうね。
 そして、こういう物語が最終巻でやりがちな巨大な敵との最終決戦とか、宮廷内部の陰謀劇に決着とか、恋人たちのイチャイチャデートから新婚シーンとかをするっと無視して、代わりにメインに持ってくるのが1万2153名を超え、対策を謝れば10万20万の命が失われかねない難民問題。このバランス感覚が面白くしてるんです。でも、なぜ「堂々完結」とか帯で謳わないんでしょ。あとは拾遺集くらいなのに。
 全7巻で無理なく読めて面白い、文明復興もので内政チートする魔獣との戦いを描いた冒険活劇。お薦め。

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