再生へ

2020年07月28日
久しぶり、と挨拶すべきなのだろう。
 
ブログを再開する。
 
新たに、第二部として。

筆者は、今年の1月から5月まで、長期入院していた。
 
右足を切断し、両目の手術をした
 。
結果、筆者は身障者となり、治療中の目はまだまだ見えにくい。
 
メールの文字がなんとか読める、程度。
 
だから、ブログを再開できたことが、素直に嬉しい。
 
筆者には、世の中に伝えたい思いが山のようにある。
 
自身の健康やコロナのこと、第一部で書けなかったこと、など。
 
筆者がこれから綴るのは、再生への物語だ。
もう、死んでもいい、なんては考えない
 。
身障者となっても、逞しく生きていく。
 
その決意を胸に。
 
  
Posted by くろねこ  at 22:01Comments(0)命と健康、再生の物語

新しい世界と

2020年07月31日
長い長い悪夢に、ずっとうなされていた。
 
その悪夢から目覚めると、世界はがらりと変わっていた。
 
マスクなしでは歩けない、窮屈で歪んだ世界。
 
それまでの価値観が悉く覆って。
 
お金よりも命や健康が優先される。
 
ある意味、健全な暮らしと言えなくはない。
 
人々が、何故こんなに怯えているか、よく分からない。
 
片足を失った筆者は、病室のベッドで思った。
 
もしかしたら、我々人類は今までまやかしを生きていたのかもしれない。
 
こちらの方が本物で、マスクなしでは歩けない社会こそ、人類のあるべき姿。
 
世界が元に戻っただけの話。
 
もし本当にそうなのだとしたら。
 
筆者もまた、本来の自分に帰っただけ、なのかもしれない。
 
筆者は、身体の不自由と引き換えに、大切なものを取り戻した。
 
この世界と同様に。
 
そりゃあ、何をするにも不便で大変だけど、今の自分は、むしろその方が自然な姿だと思える。
 
日々伝えられる例のウイルスが、今後どうなるとしても。
 
過ぎていった悪夢なんて振り返らない。
 
前へ進むだけだ。
 
しかしながら。

入院したての頃は、その存在すらも知らなかった。
 
筆者はまだ、悪夢は続くものと考えていた。


 

 

  
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緊急搬送

2020年08月01日
筆者は、糖尿病だ。
 
30代の前半には判明し、以来、インスリン注射を手放せない。
 
今回、入院となったのは、糖尿病の合併症に他ならない。
 
糖尿病性壊疽、そして網膜症。
 
かなり前から異変を感じてはいたか、それほど重症だとは思わなかった。
 
痛くなくて、普通に歩けたから。
 
いよいよ診察が必要だと感じたのは、入院直前の1月初め。
 
右足の指や甲が黒く変色して、足裏の皮膚が敗れて膿なのか血なのかでぐしょぐしょになり、それまでの靴を履けなかった。
 
筆者は、患部をビニール袋に包んで、サンダルで地元の診療所に飛び込んだ。
 
結果は、即入院。
 
診療所では、患部を洗っただけだった。
 
筆者は、慌ただしく救急車で病院へ搬送された。
 
その時点で、足裏から侵入したばい菌によって、筆者の身体はかなり蝕まれていたと思われる。
 
放置すれば、死もありえる状態。
 
入院は、当然の判断だった。
  
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入院準備

2020年08月02日

筆者が入院したのは、高山市内の総合病院。
 
救急車を降ろされて最初にある救急ブースは、意外と落ち着いていた。
 
担当の看護師が、指示に基づいてそれぞれの仕事をする。
 
基本的な体調チェックから問診から、努めて冷静だ。
 
救急ブースでは、主治医の方とは会わなかった。
 
筆者は、ストレッチャーから移動式のベッドに乗せ換えられて、2階の処置室前へ。
 
カーテンに仕切られた待機スペースが何床かある。
 
筆者はその一つのスペースで、寝たまま次の指示を待った。
 
突然の入院だったから心の準備ができていない。
 
その時の筆者は、自分の手荷物が気になっていた。
 
救急車にちゃんと乗せてくれただろうか。
 
何となく居心地の悪い感じて待っていると、白衣姿の中年男性が筆者に声をかけてきた。
 
簡単な挨拶と、今の状況説明。
 
彼の説明の最中にお母さんが到着したため、筆者は後回しとなった。
 
お母さんはすぐ横のスペースに通され、そこで彼から説明を受けているようだった。
 
お母さんが気をきかせてお茶を渡してくれたので、寝て待つのはそれほど苦にならなかった。
 
それより、ばい菌に侵された右足の行方が不安で仕方なかった。
 
時計すらない、ただ待つだけの何もないスペースがその不安を増幅させた。
 
どうなるかは分からないが、今のところ具体的な処置はなし。
 
そっと目を閉じる。
 
やはりまだ、確認できていない自分の手荷物が気になる。
 


 

  
Posted by くろねこ  at 15:21Comments(0)命と健康、再生の物語

入院に必要なもの

2020年08月03日

筆者は、処置室で軽く足を触られた後、5階の個室へ移された。
 
この部屋から、筆者の長い入院生活は始まった。
 
筆者の主治医は、処置室の前で出会った彼だった。
 
忙しい人なので、先生による詳しい話はなかった。
 
当日知らされたのは、点滴をずっとすることくらいだろう。
 
ずっと、というのは、24時間。
 
食事中も、トイレへ行く時も。
 
必然的に行動の自由はなく、筆者は病室のベッドに縛られることになる。

何もできない。

トイレへ行くにも、ロッカーに手荷物をしまうにも、誰か、他者の助けを必要とする。
 
この上なく不便なのに、その時の筆者は、むしろ入院という状況に安堵していた。
 
処置室の前で、筆者はガラケーから電話をかけて、正式にバイトをやめた。
 
診療所からの連絡を受けて、お母さんはいち早く駆けつけてくれた。
 
筆者にとっては、事実上、唯一の肉親である。
 
自身のことに関しては、やりたいことがあっても、病院まで持ち込むものは何もなかった。
 
少し気になっていたガラケーも、お母さんが手提げ袋ごとロッカーにしまったら、どうでもよくなった。
 
筆者はまさに身体一つで入院した。
 
信頼できる先生と、スタッフと、心の通うお母さんと。
 
入院に必要なものは、全て揃っていた。
 
入院当初は微熱やら悪寒やらで体調がすぐれなかったこともあり、筆者は常にベッドで寝て過ごした。
 
テレビさえも点けなかった。
 
おかげで暫く情報が遮断されたのだが、それは病院が無理強いしたものではない。
 
筆者か、自ら望んでそうなった。
 
ばい菌に身体を侵された当時の筆者は、命を守ることで精一杯。
 
深いことは何も考えられなかった。 


  
Posted by くろねこ  at 22:53Comments(0)命と健康、再生の物語

第一の個室

2020年08月04日

筆者が最初に入ったのは、トイレ付きの特別個室だ。
 
緊急の入院だったから、病室が空いていなかったらしい。
 
筆者は差額ベッド代なしで、数日間だけここにいた。
 
病室内にトイレがあり、仮眠用のソファーも準備されている。
 
その程度の違いしかないが、ベッドに寝るしかない筆者には、どのみちあまり意味はなかった。
 
むしろ、一人だけの部屋は、やや広すぎた。
 
その部屋で筆者がベッドを離れるのは、トイレへ行く時だけ。
 
ナースコールで看護師さんに来てもらい、車いすで運んでもらう。
 
トイレは室内にあるから、用事はすぐ終わってしまう。
 
個室にいた時は、食事も歯磨きも、全てベッドの上で行った。
 
先生方の回診が一日に一度ある程度で、これという治療行為はない。
 
24時間ぶっ通しの点滴がメインだった。
 
お母さんは毎日のように来てくれたけど、夕方には帰ってしまう。
 
筆者は、基本的に一人だった。
 
瀕死状態の右足は保護のため、包帯ぐるぐるの痛々しい見た目。
 
別に痛いわけではない。
 
それよりも体調不良で立ち上がれないことの方が深刻だった。
 
筆者は、完全に病人になってしまった。
 
また、病人として振る舞うしかなかった。
 
せっかくの特別個室なのに、筆者は最後まで窓に近づくこともなかった。
 
病室の外がどうなっているかも、その時点では理解していなかった。
 
筆者は、ひたすら寝た。
 
それが、筆者にできる唯一の努力だった。

  
Posted by くろねこ  at 16:33Comments(0)命と健康、再生の物語

この足はダメだ

2020年08月05日

入院して、散々聞かれたことがある。
 
「どこで傷ができたんですか?」
 
初日などは、瀕死の足に群がるように先生方がみえて、その全員から聞かれたほどだ。
 
筆者の答えとしては、「うーん・・・?」
 
明確にどこで、とか何をして、と言えるものは何もない。
 
入院の10日前くらいに水膨れが破れて、十分な処置ができないうちに足裏に膿が広がってしまった。
 
直近で分かるのは、この程度だ。
 
ただし、それ以前からまずいな、と思う異常はたくさんあった。
 
筆者自身に、その自覚もあった。
 
足を切断した今だから言えるのだが、おそらく半年以上も前から手遅れだったのだろう。
 
足の内部で動脈硬化が進み、血の巡りが悪くなっていた。
 
水膨れの破裂は内部からのもので、いつそうなってもおかしくなかった。
 
たまたまその時機だっただけ。
 
誰だって、自分の足を失いたくはない。
 
もしかしたら、入院なしで治療できる程度なのかもしれない。
 
ずっと淡い期待を抱いていたけど、その甘い認識は見事に打ち破られた。
 
糖尿病はやはり、深刻な病気だ。
 
それでいて、ほとんど痛みを感じない。
 
入院して初めて、患部を触られた際に感覚がないことを知った。

この足はもうダメだ、と思った瞬間だった。
 
涙などはない。
 
糖尿病と診断された時点で、こうなる未来はどこかで予想できていた。
 
ただ、筆者は43才。
 
足を失うには、若すぎる。


  
Posted by くろねこ  at 16:58Comments(0)命と健康、再生の物語

新しい病院

2020年08月06日

筆者がその総合病院へ入院するのは、3回目だ。
 
30代前半で糖尿病と診断された時が最初で、期間は一ヶ月くらい。
 
横紋筋融解で緊急入院したのは、30代後半。
 
その病院が立て替えられる前の、最後の年末年始だった。
 
春になれば新しい病院がオープンするタイミング。
 
だから、新しい病院での入院は、今回が初めてだった。
 
一階は通院などでよく知っていても、入院棟に関しては未知のゾーン。
 
新しい病院は、綺麗で明るくて、設備的な不満はほぼなかった。
 
看護スタッフの装備やスキルに関しても、以前より向上したと思う。
 
ただ、この病院の元々の雰囲気はあまり変わっていない。
 
良い意味でも、悪い意味でも。
 
地域医療を支えるという視点では、手堅い経営と言えるだろう。 
 
後に他の病院と比較できたから、ここは間違いない。
 
筆者にとっては、なくてはならない医療施設だ。

その思いは、退院した今もずっと続いている。
 
絶対的な信頼。
 
それが、筆者の命を守ったと言っても過言ではないもしれない。
  
Posted by くろねこ  at 16:50Comments(0)命と健康、再生の物語

第二の個室

2020年08月07日

最初の個室からの引っ越しは、突然だった。
 
5階から4階へ、階を跨ぐ引っ越しなので、全て荷物をまとめて移動した。
 
お母さんには事後報告となる、バタバタな引っ越し劇。
 
4階は内科だから本来は違うのだが、空き部屋の関係でそこになったようだ。
 
今度は、トイレのない、標準的な広さの個室。
 
トイレへ行くためには、室外の多目的トイレまで車いすで連れていってもらう。
 
といっても、目的地は目と鼻の先。
 
用事はすぐ終わってしまって、ろくに室外の空気を吸うこともできない。
 
部屋が変わっても、24時間の点滴治療は続いていた。
 
筆者はその部屋でも、ベッドから動けない生活を送っていた。
 
部屋が手狭になって、点滴針を刺す腕すらも自由ではなくなった。
 
微熱と倦怠感は、相変わらずだった。
 
筆者はその部屋で、手術までの時間を過ごした。
 
自身の、変わり果てた右足と向き合いながら。
 
あまりにも息の詰まる時間。

先生の口から、手術の具体的なイメージをなかなか聞けなかった。
 
たった二週間なのに、その部屋での生活は実際より長く感じられた。


  
Posted by くろねこ  at 20:24Comments(0)命と健康、再生の物語

コロナ。

2020年08月08日

「コロナやさ」
 
お母さんからその単語を聞いた時は、何一つびんと来なかった。
 
その語感から、太陽と関係がありそう、なんてちんぷんかんぷんな想像をしたくらい。
 
筆者は、テレビも点けずに情報を遮断していた。
 
外部の情報はごくわずかでもありがたいはず、なのに。
 
よく聞けば、コロナという未知のウイルスが最近、報道を席巻しているらしい。
 
時事に疎いお母さんの口から思わず漏れたのが、その単語だった。
 
筆者にとっては、コロナと出会った最初の瞬間。
 
意味不明すぎて面食らった、というのが本当のところだった。
 
その頃は筆者も、世界中の誰もが、コロナをよく知らなかった。
 
遠い異国の病気で、テレビや新聞が過度に騒ぎ立てているのだと考えていた。
 
とんでもない。
 
コロナは、筆者の入院と同時期に流行り始めた。

そしてどんどん被害を拡大させ、筆者の入院する病院にも、確実に近づいていた。
 
筆者の展開に歩調を合わせるように、コロナもまた、ゆっくりと歩みを進めていた。
 
新しい世界へ。
 
今だから分かるが、この未知のウイルスは、ワクチンだけでは抑制できないだろう。 
 
必然的に、人類はコロナと共存して生きることになる。
 
外出時のマスク着用は最低限のマナーとして、今後、定着するだろう。
 
コロナの恐怖に翻弄される世の中が、この先もずっと続くだろう。
 
筆者にとっては、糖尿病という重症化リスクがあるから、コロナへの感染は命取りだ。
 
決して甘く見てはならない、人類を脅かす存在。
 
だが筆者は、コロナという単語にしか興味を持たなかった。
 
無知というのは、恐ろしいものだ。

 

  
Posted by くろねこ  at 15:33Comments(0)命と健康、再生の物語