【総合商社】ビジネスモデル解説と志望学生へのメッセージ

高学歴就活生の大好きな 総合商社のビジネスモデル について解説しましょう

 

男子就活生なら一度は「三〇商事です(キリッ)」と合コンで名乗りを上げて、女性たちにキャーキャーいわれる妄想したことがあるでしょう。明るい未来を妄想して楽しむのは自由ですが、妄想を現実にしたいなら頭を使わなきゃ。

 




結論ファースト

記事の結論は以下になります。

  • 商社のビジネスは“トレーディング” と “事業投資”
  • 3つの総合性(商品・地域・機能)を理解せよ
  • 商社の主要機能であるFILMを理解せよ
  • 以上を踏まえて、商社志望を語れ

はじめに

「総合商社のビジネスとは?」と聞かれてきちんと答えることができるでしょうか?

「は?なめんなよ。トレーディングと事業投資だよ(ドヤ)」くらいのことを言える就活生は多いでしょう。残念ながら理解が浅すぎます。

決して間違ってはいないですが、毎年総合商社に押し寄せては祈られていく有象無象の就活生たちと差別化したいでしょ?であれば、もう一歩進んだ深い理解が必要です

そこから“商社でしか出来ないこと”を自分なりに考えれば、説得力のある志望動機になります。「トレーディングと事業投資の両輪でバリューチェーン構築が…」などとわかったフリをしてホームページを棒読みするのは今日で終わりにしましょう。

総合商社の“総合”ってどういう意味?

「では、総合商社の”総合”ってどんな意味でしょう?」

「そんなの知ってるもん。カップラーメンから人工衛星までってやつでしょ(ドヤドヤ)」

はいはい、30点です。おめでとう。30点ってのは、“総合”って言葉の3つの意味のうち、1つしかわかってないからです。総合商社には3つの総合性が存在します。

【3つの総合性】

  • 商品の総合性
  • 地域の総合性
  • 機能の総合性

商品の総合性

カップラーメンから人工衛星までってのは“商品の総合性”のことです。残りの2つもきちんと理解しておくと、商社の企業研究で一歩進んだ見方が出来ます。

地域の総合性

世界のあらゆる場所でビジネスをしてるってことです。ただ会社によって得意な地域が異なります。例えば伊藤忠商事が中国で圧倒的に強いとか、三井物産がブラジルで強いというのがわかりやすい例です。

どの商社も似たようなビジネスをしているように見えても

「どこの地域がメインなのか」

「これから伸びると予想される地域に強いのはどの商社か」

「この地域にはこういった地政学リスクが予想されるが、どういった対策を考えているのか」

などなど深く掘り下げる余地があります。各商社の得意な地域や進出しようとしている地域を調べ、自分なりにあれこれ考えていれば疑問が湧いてくるはずです。それをOB訪問で聞いたり、面接の逆質問でぶつけましょう。

【OB訪問体験記】~2人の若手商社マンの仕事内容・年収・残業・金言~

機能の総合性

これが一言では言い表せませんトレーディングやら事業投資やらバリューチェーンなどと言葉が並んでも、やっぱり何してるのかよくわからん‥‥」っていうのが商社に対する就活生のイメージでしょう(高給・モテる・激務などはわかりやすい)。という訳で、商社の機能をわかりやすく説明する言葉を教えましょう

商社の主要機能【FILM】について

【FILM】

  • F…Finance(金融)
  • I…Information Technology(情報)
  • L…Logistics(物流)
  • M…Marketing(マーケティング)

この4つのキーワードから商社がやっていることを見ていくと、機能の総合性の意味がわかります

あらゆる面倒ごとを引き受けるトレーディング

小麦農家と小麦から飼料を生産する会社を例にとって、トレーディングとFILMの関係について説明します。

よくトレーディングの説明ではAからBへモノを流す、その際に口銭として頂く手数料(利ザヤ)が商社の儲けなどと言いますが、話はそんなに単純ではありません

そのビジネスモデルは縮小傾向にあり、それだけでは価値となりません。管理人もその辺のことを何も言わずに「商社なんて仲介人」と言ってきたので、ここらできちんと説明しておきましょう。

F…Finance(金融)

単純なトレーディングの説明では、農家から小麦を100円で買って、飼料生産会社に105円で売るから商社の儲けは5円みたいに説明されますが、現実ではそんなに簡単に説明できません。

飼料生産会社は工場を建てたばかりで、金がないかもしれなません。もし直接農家と取引をしていたら、「金が払えないなら売らないよ」と言われるかもしれません。せっかく工場を建て、生産能力があるのにビジネスを行えなくなるわけです。

しかし、間に商社が入れば、とりあえず農家への支払いは商社が立て替え、ツケとして飼料生産会社から後で返してもらうという取引が可能となります。農家にとっては、よくわからん会社と直接取引をするのではなく信頼できる商社を通すことで金の心配がなくなりますし、飼料生産会社も金がピンチでも事業を続けられる訳です。

余談ですが、金と資産や借金の感覚(つまりバランスシートの観点から物事を見るセンス)は持っておいた方が良いです。

【就活生】年収上げたいなら財務諸表の読み方を学ぶべき

I…Information Technology(情報)

この書き方だとITみたいに聞こえますけど、コンピューターを使う所謂ITの話ではありません。普通に情報という意味です。

農家と飼料生産会社の例を再び使いましょう。そもそも農家は小麦を作るのが本業ですし、飼料生産会社の本業だってより良い飼料を作ることです。だから、それ以外の情報には疎くなります。そこで、商社が自分たちのネットワークやこれまでの知見の積み重ねから情報を提供することで、取引をサポートします

例えば、「海外の相手と取引したいけど、税制度やら輸出入の手続きやら色々面倒過ぎて自分では無理」ってなったとしましょう。ここであらゆる面倒なことを商社がサポートしてくれるなら、農家や飼料生産会社は今まで通り普通に売り買いするだけでOKみたいな感じです。

L…Logistics(物流)

農家から小麦を仕入れて飼料生産会社に売ると一口に言っても、実際は輸送やら貯蔵やらをどうするか考えないといけません

農家は陸運会社や海運会社の乗り物をチャーターする方法なんか知りませんし、飼料生産会社も倉庫を必要としますが、倉庫業界の事情やら交渉は商社に任せた方が楽です。という訳で、物流でも商社が面倒なことを引き受け、取引を円滑にします

M…Marketing(マーケティング)

これは情報の機能と近い要素があります。農家が自分で新たな販売先を開拓したり、売り方の工夫をすることは難しいです。また、例えば飼料生産会社が海外展開をしたいとなっても、初めての地で誰にどうやって売ればいいかなんて全く分かりません。

そこで、商社が登場。商社のネットワークやこれまでのノウハウ蓄積から売る相手を代わりに見つけてることで、生産者は安心して製品作りに励むことが出来ます。

事業投資とバリューチェーン構築

引用) 出光興産  ガソリンのバリューチェーン

トレーディングの話では、“農家はそんなの出来ないから商社が代わりに~”とか、“飼料生産会社はそんなの面倒だから商社が~”と説明してきましたが、農家と飼料生産会社が自分たちで全部できたら商社は要らないの?って思うはずです。

 

そう、実はこれまで何度も「商社要らなくね?」と言われてきました。俗に言う“商社斜陽論”とか“商社冬の時代”と言われたやつです。狭い意味でのトレーディングは縮小しているとは、このことです。

 

そういう訳で、商社は新しい価値の提供方法を考えてきました。それが事業投資をしてパートナーと一緒に手を動かし、バリューチェーンの構築というやつです。

事業投資して取引先に口出しをする

農家と飼料生産会社のたとえ話を見ていたら気付くでしょう。彼らに情報与えて色々サポートするのなら、いっそのこと商社が自分でやってしまえばいいのにと

ただ、商社はあくまでそっちのプロではありません。商社マンは農業も工場の操業も専門ではありません。したがって、彼らの会社に出資(株を取得して発言権を得るとか、共同で会社を作るなど)して、一緒に経営をしていきます

商社「僕らの情報網によると、今後こんな小麦が売れるぜ。作れれば、販売は任せて欲しい。」

農家「やってみる。他にも必要なことはサポートしてくれ。小麦作りは任せろ」

ってな感じで、事業投資先とタッグを組んでお互いの強みを掛け合わせて付加価値の高いビジネスを目指します。

バリューチェーンの構築

ようやく、なぜ農家と飼料生産会社を例を使っていたか理由が分かります。

飼料生産会社は作った飼料を畜産農家に売るし、畜産農家はニワトリを食品メーカーに売るし、食品メーカーは製品をスーパーやらレストランに売るでしょう。商品が原料から最終消費者の手に届くまでには、様々な業者を挟み、その中で価値が高められていきます。

ここで、総合商社の“総合”が効いてきます。総合商社は色んな取引をやっている訳で、飼料生産会社と畜産農家の間、畜産農家と食品メーカーの間の取引にも関わっています。

ということは、一連の取引の流れの中で、各部分がバラバラに動くより、全体に事業投資してコントロールすることにより、効率的で安定した供給を実現させることが可能となります。この一連の供給の流れのことをバリューチェーンといいいます

バリューチェーンは、よく川上(原料生産)から川下(最終消費者)までといわれるやつです。章の冒頭のガソリンで例えると、資源の採掘から、精製、物流、小売りを経て私たち消費者に届くまでの流れがバリューチェーンです。

総合商社 志望学生へのメッセージ

就活生が勘違いしてはいけないこと

ここまで商社の説明をしてきて、皆さんはどう感じられたでしょうか?「やっぱ商社ってスゴイわ。抱かれたい。掘られたい」なんてアンポンタンなことを言っていてはいけません。

あくまでこれは外から見た話であって、実際に働くときにこんな広い視点でビジネスを俯瞰できるとは限りません。また、バリューチェーンだって永遠に儲かる仕組みでいられるとは限りません。

実際に商社で働くとは

管理人は商社の社員じゃないから、実際に商社で働くのがどんな感じなのかはわかりません。ただ、確実に言えることは、華やかなビジネスに見えるのは上っ面だけで、実際は地道な作業の連続であるということです。

例えば、事業投資して作った会社と共同で仕事をするとき、商社マンは出向という形でその会社に勤務することになります。丸の内の綺麗なビルを出て、田舎で働くこともあります。出向先では、いい大学を出て就活頑張って商社に入ったタイプの人間はいないかもしれません。言い方は悪いですが、自分とは住む世界が違う人たちと仕事をするってことです。

説明会なんかだと、「出向先では社長になる」とか、「若手でも出向先では部長クラス」なんてアピールされますが、小さい会社で話の通じないような人たちに苦労し、本社との板挟みにあうという辛い会社生活を送る可能性もあるわけです。

バリューチェーンのその先

バリューチェーンだっていつまでも儲かる仕組みでいられる保証はありません

例えば、IT技術を駆使して、農家と飼料生産会社、畜産農家を結ぶプラットホームが出来たとしたら?そこに物流業者や倉庫業者も登録することが出来て、入力された様々な情報から人工知能が最適な取引を実現させる仕組みが出来たらどうなるでしょう。

人工知能に奪われる職業リストなんてのがニュースになりますが、商社マンだってランクインする可能性は否定できません。所詮はアナログな世界なんだから。

ということで、むしろ商社に入って自分が新たなビジネスモデルを作るくらいの気概を就活生には持って欲しいと思います。三井物産インターンの趣旨なんてまんまこういうことでしょ?

最後に

総合商社のビジネスモデル について解説しました

  • 商社のビジネスは“トレーディング” と “事業投資”
  • 3つの総合性(商品・地域・機能)を理解せよ
  • 商社の主要機能であるFILMを理解せよ
  • 以上を踏まえて、商社志望を語れ

総合商社のビジネスモデルについて、字ずら以上に理解していただけましたでしょうか?これだけのことが理解できていれば、脳筋しか取り柄のない体育会系や、飲みとノリで生きてきたようなチャランポラン就活生には絶対に負けないはずです。

ここで学んだ基礎をもとに、自分で問題意識を持って勉強を継続し、面接官を唸らせるようなビジョンを持った就活生になってほしいと心から願っています。

シェアする

フォローする