プライムビデオで観た。ネタバレ注意。
都を怪異から守る陰陽師たちの学校であり象徴である「陰陽寮」。ここでは若き陰陽師たちが互いの技術を切磋琢磨し、未来の宮付き陰陽師を夢見て日々研鑽を行っていた。
賀茂忠行の弟子として陰陽寮に入寮した安倍晴明は、その才能を見込まれながら、本人は陰陽道自体に興味を抱いておらず、授業も受けていない。
ある日声明は、音楽をたしなむ貴族・源博雅から、皇族の徽子女王にまつわる怪奇現象をどうにかしてほしいと依頼を受け、その真相を追う。
そのさなか、学生が死体となって発見され、清明は犯人として拘束されるが、すぐ疑いは晴れる。しかし、これは都全体を覆う巨大な陰謀と呪いの始まりに過ぎなかった・・・
陰陽師と言えば滝田洋二郎監督、野村萬斎主演の映画「陰陽師」が浮かぶ。どちらも同じ夢枕獏原作だが、こちらは佐藤嗣麻子監督による、清明若かりし頃の前日譚、という扱いになっている。ヤングシャーロック的な?(古すぎる)。
本作では改めて呪(じゅ)について、肉体や物質に直接どうこうするものではなく、暗示や思い込みを利用し、さらにそれが術を受けた側で真実と確信することで、肉体にも影響を及ぼしたり、無意識の世界へ飛ばしたりすることができるもの、という定義をしっかり行っており、ストーリーもこの呪を中心に進んでいく。
骨太な陰陽道の話なんだなぁ、と感心しながら少々地味な話を追っていたのだが、途中から雲行きが変わり唐突に派手なワイヤーアクションがバンバン飛び交う冒険ものへと姿を変えてしまい、なかなか頭が追い付かなかった。
確かにその方が絵的には豪華になるが、せっかく前半積み上げてきた実直な雰囲気がもったいないなぁ。
終盤は、映像美にこだわりがあるのはよくわかるのだが、そのおかげでストーリーがほとんど進まずやきもきする。クライマックスがこれだと肩透かし感は否めない。
途中からアクションに切り替えたのであれば、最後まで突き抜けてほしかったところ。いろんな映画に出ずっぱりの山崎健人は本作でも主人公の格をしっかりと見せつけてくれており、まだ若者ではあるが実力は十分という安倍晴明を演じている。
徽子女王の奈緒の雰囲気がすごくよい。美しく気品にあふれながらかわいらしさもあり、最後は哀愁を漂わせながら一つ大人になっていく様がよく描かれていた。
染谷翔太の源博雅が一番よかった。偉丈夫でも美丈夫でもないが筋の通った男であり音楽の腕は確かという、以前の陰陽師とは違うパターンを見せてくれた。この作品ではこの人が一番いい男だったな。