観たり読んだり備忘録

片端から忘れてしまう観たものや読んだものを、記憶にとどめておくためにちょいちょいと走り書きとして残してます。それ以外もちょこちょこと。

三体0 球状閃電(2022)

「三体」シリーズの前日譚。ネタバレ注意。

主人公の陳は14歳の誕生日、雷鳴とどろく夜にそれは突然現れ、壁を通り抜けて部屋を横切り、両親を灰に変えてしまった。
陳が最初に目撃した球電と呼ばれる自然現象であり、その存在を含め、謎の存在とされてきた。
それ以来、陳は球電の謎を解明すべく大学へ進み、憑かれたように研究を進める。
その過程で知り合ったのが軍の林雲。持っていると怪我しそうな危ないアクセサリーを愛用するイカレたセンスの兵器愛好家でもある。父が軍の高官でもある林雲は、そのコネや伝手をフル活用して兵器開発センターで雷を利用した兵器の技術者であり、少佐であった。
彼女に淡い恋心を抱く陳であったが、林雲にはお似合いの武官がおり、自分の思いは打ち明けられない。
様々な試行錯誤や失敗を繰り返し、球電の解明に行き詰った二人は、有名な理論物理学者である丁儀に助力を乞う。
三人となった球電開発チームは、丁儀の天才的な直観と思考により、ようやく球電の謎を解明した。
これは自然界に存在する形であり、捕獲が可能であった・・・

「三体」と関係があるのはほぼ丁儀。この人だけ三体に重要な役で登場するので、「あの丁儀がまだ元気だったころに活躍していた話」という意味においては前日譚である。
また、量子論的に「誰かが観測している場合のみに成立する」的な第三者視点が存在する、という点においても「三体」なのだが、ここは詳しく触れるのは野暮というものであろう。
球電自体は本当に存在する自然現象らしいのだが、そのメカニズムはいまだ謎に包まれているとのこと。本作はその正体について科学的SF考証による大胆な解を導き出したということのようだ。
どの辺までが本物の科学に基づいていて、どこからがSFなのか、文系の僕にはさっぱりわからないのだが、そのわからなさ加減がまたSFのよいところであり、あまり気にせずに「すごいな~」と感心して楽しめばよいのである。
林雲というキャラが本当にぶっ飛んでおり、それは母親にまつわるトラウマに原因があるのだが、それにしてもやりすぎだろと思うくらい。こんな危険な美人に惚れてしまった陳は苦労するよな~。
「三体」本編ではいろいろあって飲んだくれていた丁儀が実質回し役で活躍しており、本当はこんなに優秀な科学者だったんだなぁと面目躍如。そのための作品と言うことでもあるのかもしれない。
地味な話ではあったが、「三体」とは別のストーリーとして楽しめた。