インテリアCGライティングを基本から徹底解説

インテリアCGを制作し始めた時、まず最初に悩むのがライティングだろう。
大きな開口部があり、太陽光が降り注ぐシーンではあまり問題はない。太陽を配置するだけで空間全体が照らされ、それ以外を設定する必要がないからだ。では太陽の光がなかったり、あまり期待できないシーンではどうだろうか。設計経験があれば、なんとなく解決方法は想像できるかもしれない。それでも最良のライティングにたどり着くには難しいのではないだろうか。

今回はライティングの基本やセオリーを説明した上で、インテリアCG制作の過程におけるライティング方法を詳しく解説していく。ライティングのアプローチ方法として理解を深め実践できれば、様々なシーンにも対応できる基礎技術が身につくことだろう。

目次

1. 建築CGライティングの基本

建築CGのライティングにおいて、とても重要な2つのポイントを紹介する。基本的なことなのだが、意外と意識できていない場合が多い。出来上がった画が、なんだかのっぺりしていると感じたり、立体感が乏しいと思う場合はこのポイントを意識してライティングを再度行ってみるとよい。

1-1. 陰影

対象物を立体として表現するには陰影が必要である。下の画像を見てもらいたい。

左右両方とも同じ立方体を、異なる配置のライトで照らしたものである。どちらがより形状を認識しやすいだろうか。
右側は明暗のコントラストがはっきりしているが、左はぼやけてしまって不思議な状態である。

ライティングを行う際には、右側のような明暗の差がなるべくでるように照明の配置を心がける必要がある。

1-2. グラデーション

ラウンドしているものや流線形状のものは、はっきりとした明暗ではなく、陰影のグラデーションによって立体感を表現する。

同じ円柱を、異なる場所からライティングした結果である。大きなグラデーションができた右側の方が、円柱としての形状をより把握しやすい。

1-3. 実例で見てみよう

実際にライティングを行ったシーンで、前述2つのポイントを見ていこう。

赤矢印は明暗、黄色が陰影のグラデーションが発生している箇所である。
太陽があるシーンでは、その位置によって明暗が出てこない場合があるので注意が必要である。太陽が落とす影のシルエットや光のバランスを見ながら慎重に位置・高さを決定する必要がある。
また、光が足りない箇所や、形状・アングルによってグラデーションが十分に発生しない所が出てくる。のちほど解説していくが、そういったところには補助的にライトを追加していく。そのの追加によって、不自然にならないか嘘っぽく見えないかを注視する必要がある。

2. 3点照明

このライオン像へのライティングを例に、照明技法の基本となる3点照明について解説していく。

2-1. メインライト(キーライト)

まずは、ライオンの顔を斜め上から照らす照明を配置する。最も明るい光量でメインとなるライトである。通常はカメラから45度斜め方向、高さも45度程度の位置に調整し、その反対側に影ができるといった構図になる。

2-2. フィルライト

メインライトの配灯によって発生した、お尻やたてがみ部分のコントラストを緩和するため、フィルライトと呼ばれる補助光源を配置する。強度はメインライトを10とすると3~4程度が目安となる。

メインライトだけでは背景まで光がとどかず暗くなってしまっているので、こちらにも少し大きめのフィルライトで明るさを調整する。

2-3. バックライト

バックライトはメインライトと対象となる位置に配置されることが多く、対象物の輪郭を強調するために設けられる。強度はメインライトを10とすると5~程度で効果のバランスを確認しながら決定する。


以上が照明技法の基本、3点照明の概要である。
インテリアシーンにおいてバックライトは限定的な利用で、アクセントライトと呼ばれる間接照明などの視覚化された光源や、ハイライトの発生を期待して設置するスペキュラーライトなどを配置して構成していく。次章より実例を用いてそれらを解説していく。

3. 実例によるライティング解説

実際に弊社で制作したインテリアCGをもとに、ライティングの方法を解説していく。

3-1. シーンを用意

今回はこちらのインテリアCGシーンについて、ライティングの方法をその意図や効果と共に解説していく。

壁を真正面にとらえ横に窓があるようなシーンは、インテリアCGにおいて比較的簡単に制作が可能だ。今回のような狭い範囲に限定している場合は、窓から差し込む強めの太陽光だけですべてを照らすことができる。その内容は以前にも解説しているので、併せて読んでみてもらいたい。
>>関連記事 インテリアパースのカメラ・ライト・レンダリング設定を解説

今回は太陽光に頼らず、細かく照明を設定する必要があるシーンにおいての解説となる。

3-2. メインライト

天井から吊るされたペンダントライトをメインライトとして設定する。
このシーンは、カメラが真正面に捉えているソファが主役となっている。メインライトはそのソファと暗くなりがちな背面の壁を照らすように角度をつけて配置している。

光源とオブジェクトの距離が近いとコントラストが強く出てしまうので、ライトの光源は実際にある場所ではなく、不自然にならないようにバランスを見ながらカメラの範囲外に配置している。
最初はこのあたりの感覚を理解するのが難しいと思うが、3DCGであるので現実世界と同じにする必要はなく、より美しくなる方を優先して選択するのが重要である。

3-3. フィルライト

メインライトを配置した後の画像を見ると、照らされてる範囲以外はとても暗く、なにがあるのか認識ができないほどである。この明暗のコントラストを緩和するため、補助ライト(フィルライト)を配置していく。

まずは下左画像の黄矢印部が暗くなってしまっているのを補うため、右側の窓から差し込む光を追加する。曇り空の夕方程度を想定しているので、画像右側を若干明るくする程度としバランスを見ながら調整していく。

また、見えてこない画像左側奥にはダイニングなどの空間があると想定できるので、そこからの光をイメージして反映していく。

メインライトの効果を緩和することを意識し、画角には入ってこない位置に光源を配置する。ライトをソファなどのオブジェクトに近づけすぎると、フィルライトによるコントラストが発生してしまい、違和感を生む原因になってしまう。

3-4. 詳細フィルライト

ここからは照射範囲を絞った補助ライトの追加を解説していく。

まずはソファ右側にあるローテーブル+アルコールセットをライティングしていこう。
真上に配灯し照射角度を小さくすることで、他への影響を限定的にしている。また、照明器具からの光ではなく、窓から差し込む光によって照らされている様を想定し、照明の位置を若干窓側へずらして配置している。


次は、ペンダントライトのパンパス本体が暗くなってしまっているので解決していこう。

有機的で複雑な形状をしているので、何灯かの照明を配置し、陰影グラデーションが発生するようバランスを見ながら進めていく。
まずは窓やその他の照明からのライトとして想定した「LIGHT:A」を、次に床からの反射光を想定した「LIGHT:B」、最後に真ん中の花部分にグラデーションが発生するよう「LIGHT:C」を配置している。

3-5. アクセントライト

インテリアシーンでは、間接照明によるラインライトや露出した強い光源など、人目を惹くライトが配置されることが多い。前述のメイン・フィルに続いて有用な照明方法のひとつである。

このシーンでは、強い光による明暗グラデーションを発生させるため、アクセントライトとしてペンダントライトの光源を2灯、パンパス内部に設置している。

3-6. 鏡面ハイライト用

最後に、細かいがとても重要な調整を行っていく。

光が不足し質感が十分に表現されていない箇所に、補足のライティングを行う。主に、黒など濃い色のマテリアルを設定しているオブジェクトやガラスなどは、光量が足らずにつぶれてしまっていることが多い。

上左画像のように黒系マテリアルの脚部は質感が十分に表現しにくい。右画像のようなハイライトを発生させるため、照明を追加する。


このシーンにおいては、ローテーブルのアルコールセットが暗く沈んでしまっているのが気になる。対応していこう。

まずはアルコールセットの斜め上部に、弱めのライトを設置する。(スペキュラーライト)
このライトはアルコールセットのみを照射する設定を行い、周辺に影響が出ないようにしておく。(3DCGのライトの設定では特定のオブジェクトだけ照らす・照らさないの設定ができる) また、光源自体は見えない設定にしておこう。

ハイライト用に設置したスペキュラーライトを含めレンダリングを行った。ガラスや飲み物の色などが際立って表現されている。
遠目では違いがわかりにくいので接写した画像を用意した。

近づいた絵になるとこのライトの有用性がよくわかるだろう。
大きなライトではカバーしきれない、こういった細かな表現を補っていくことが質の高いCGパースを制作するために必須である。

3-7. Light Mix

ChaosCoronaで利用できるLight Mixという機能はとても便利である。その設定を行いレンダリングを行えば、数値や色を調整するだけで、まったくイメージの異なるシーンを生成することができる。もちろん照明それぞれの強度も変更できるので、「もう少しここは強く」といった変更も容易になる。

Cinema4D+CoronaRenderによるLight Mixの利用方法はこちらの記事で解説をしている。
>>関連記事 【Cinema4D】インテリアパースのライティングを解説【建築パース制作】

4. まとめ

以上が、インテリアCGにおけるライティングの基本とアプローチ方法の解説である。

空間の大小に限らずインテリアCGライティングは、
1章のポイント2つを意識しつつ、3点照明の基本アプローチをベースに、3DCGならではのテクニックを駆使して行われる。

この手法で実際に制作してみると、ある程度のクオリティは表現できるはずだ。
だがストーリーを描く・バランスを見るなど、感覚で決定していかなければならないセンスは、日々の意識で獲得していかなければならない。少なからず、その要素が重要であることも最後にお伝えしておく。

☆この記事がお役にたちましたら、シェア・リツイート・ピン・ブックマークをよろしくお願いします。

  • URLをコピーしました!
目次