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『特捜最前線』#215 (再)

2021-11-29 18:50:13 | 刑事ドラマ'80年代

さて、'80年代作品に戻りましょう。風吹ジュンさん繋がりで、テレ朝&東映系刑事ドラマの最高峰『特捜最前線』の、1981年に放映されたこのエピソード。

過去記事のリバイバルになりますが、自分でレビューを読み返しても泣いちゃうくらい、実によく出来たストーリーなので、より多くの読者さんに届けるべく画像を大幅に増量し、再掲載させて頂きます。



☆第215話『シャムスンと呼ばれた女!』

(1981.6.17.OA/原案=内館牧子/脚本=橋本 綾/監督=辻 理)

横浜のドヤ街で10kgの覚醒剤が取引されるというタレ込み電話を受け、日雇い労働者を装って潜入捜査する、桜井刑事(藤岡 弘)と紅林刑事(横光克彦)。

冒頭で披露される、藤岡さんのガテン系コスプレがあまりに似合い過ぎてて笑っちゃいますw ほんと、果てしなく肉体派ですよねw



で、場末のスナックで見かけた売春婦=通称シャムスン(風吹ジュン)がシャブ中である事に気づいた桜井は、彼女に接近し、思いっきり漢のフェロモンを撒き散らしますw

そう、桜井はシャムスンをナンパし、自分の女にして覚醒剤組織の正体を掴もうとしてる。かねてから麻薬絡みの事件には異常なほど執念を燃やす桜井は、組織摘発の為なら手段を選ばないのです。

そんな弘に騙されて、これまで誰とも口を聞かず、一切笑顔を見せなかったシャムスンが、徐々に心を開いて行きます。



ところで、なぜ彼女はシャムスンと呼ばれるのか? 書店で外国語の本を物色した桜井は、アラビア語の辞書にその言葉を見つけて、急にニヤニヤし始めます。

「冗談だろ? えらく冗談好きなヤツがいたもんだね、こいつは。ハッハッハ、参ったなあ」

ガテン系コスプレのまま、あの濃い顔で独り言を呟きながらヘラヘラ笑う桜井刑事。さぞ周りのお客さんは不気味だった事でしょうw



やがて、特命課の捜査でシャムスンの過去が判明し、それを知らせに来た紅林刑事は、すっかり男女の仲になった様子の桜井&シャムスンを見て驚愕します。

一匹狼の桜井は例によって、自分の捜査方針を同僚達に一切知らせてなかった。あまりにダーティーな桜井のやり方に、紅林は怒りをぶつけます。

「シャムスンは普通の人間から見ればクズみたいな女だ。しかし彼女だって人間だ! 感情のある生きた人間なんですよ!?」

「紅林!」

「それとも何ですか。あんた、本気であの女に惚れたとでも言うんですか? 平気でカラダを売るような淫売女に!」



次の瞬間、紅林は強烈なライダーパンチを浴びて、約25メートルほど吹っ飛びます。

「あ、すまん」

慌てて謝る桜井に、瀕死の紅林はシャムスンの過去を(自分が息絶える前に)教えようとします。

「いや、それなら分かってるんだ」

「そうですか。そりゃそうですよね、あの様子じゃ」

「他に無いんだったら、俺は……」

「シャムスンは人を殺したことも言いましたか?」

「!?」

桜井の濃い顔が固まります。シャムスンには、2人の男の死に関わったという過去があった。にわかに信じられない桜井は、シャムスンを問い詰めます。



かつてシャムスンと愛し合った2人の男は、いずれも不幸な境遇を背負い、彼女に心中を持ちかけた。シャムスンはそれを受け入れたんだけど、結果的に自分だけが生き残ってしまったという、まるで『嫌われ松子の一生』みたいな波瀾万丈バイオグラフィー。

「みんな、私がやったんだろうって。だから私、頷いた」

「頷いた? なぜ本当のことを言わなかったんだ?」

「どうでも良かったんだもん……捨て子で、施設で育てられて、15になったとたん世の中に放り出されて、助けてくれる人なんか誰もいなかった。頷くか、心を閉ざすしか、生きていけなかった」

自分と愛し合った男は、みんな不幸になる。シャムスンがそう思い込むのも無理ありません。

「だから、私が殺したんだよね」

「いや、殺したんじゃない。シャムスンは助けてあげたんだ。その2人の男をな」

「助けた?」

「ああ。俺がその男達だったら、きっとそう思うだろう」

最期の時間を、一緒に過ごしてくれるパートナーがいる。絶望の淵にいる人間にとってそれは、確かに唯一の救いだったかも知れません。

「ねえ……あんたも私のこと怒ってないよね? 私たち終わりじゃないよね?」

「……これからが始まりだよ、俺たちは。そうだろ?」

「本当? 本当にそう思っていいの? 本当にこれから始まるって思っていいのね?」



桜井は、本気でシャムスンを愛してしまったのか? それともやっぱり、覚醒剤組織を摘発する為に利用してるだけなのか? 顔があまりに濃すぎて、我々視聴者には彼の真意が読み取れません。

だけどシャムスンは、桜井を信じた。信じたからこそ「しばらく帰りません」という書き置きを残し、彼女は姿を消してしまう。

桜井は焦りますが、特命課がすぐにシャムスンの居場所を探し当てます。彼女は、ドヤ街にある小さな病院にいたのでした。



「シャブと縁を切ろうとしてるんです。これからが始まりだと言ってくれた男のために」

昔から知ってる町医者(織本順吉)に、シャムスンはクスリ抜きを志願し、隔離病室に籠もってた。

「生きたいと言ってるんですよ、シャムスンは。これからが始まり……シャムスンにとって、それ以上重い言葉はない」

これまで2度も人生を捨てかけたシャムスンが、桜井と一緒に過ごす未来の為に、大きく自分を変えようとしてる。桜井は、もう既に彼女の人生を背負ってしまった。

……ところが!



「桜井さん、あんた正気なんですか!?」

なんと桜井はシャムスンを退院させ、あえて泳がせるという手段に出た。つまり覚醒剤組織を摘発する為に、彼女をオトリに使おうとしてる。再び紅林が噛みつきます。

「シャムスンはね、あんたの為にシャブと縁を切ろうとして病院に入ったんですよ? それをまた引きずり出そうって言うんですか!?」

「お前さん達がどう思おうと構わん。俺は俺のやり方でやる!」

シャムスンは、桜井が外国に旅立つという情報を与えられ、病室を飛び出します。

「私、待っててもいい? あんたが帰って来るまで……私、あんたが帰って来る日までにちゃんとした女になってる! だから……」

そんなシャムスンに、桜井は優しい笑顔を見せ、甘い言葉を囁きます。

「待つ必要なんか無いよ。一緒に行こう。な? いつか言っただろ? 本当にシャムスンのある所へ……そこへ一緒に行こうって」

「一緒に?」

「そうだ。一緒だ」

シャムスンがすっかりメロメロになったところで、桜井は覚醒剤の包みを取り出し、こう言います。これを売って外国行きの資金を作るから、買い手を紹介してくれと……



かくして組織との接触に成功する桜井ですが、残念ながら……いや、天罰が下ったと言うべきか、正体がバレてしまいます。

「シャムスン、お前はハメられたんだ」

「ハメられた?」

「利用されたんだ、このデカに!」



組織の連中から真実を聞かされ、シャムスンはしばしボーゼン、そして自嘲の笑みを浮かべ、囚われた桜井を冷たく見下ろします。

鬼! 悪魔! 畜生! 濃い顔! せっかく芽生えた未来への希望を、この濃い顔の男に全て奪われたのです。

「私にこの人ちょうだい……今度こそ本当にあの世に行く。この人と一緒に……」

2人で心中してくれりゃ好都合って事で、連中はシャムスンにナイフを手渡します。

「あんたのせいよ……あんたがいけないのよ」



ためらう事なくシャムスンは、桜井の腹にナイフを突き刺します。一切抵抗せず、黙って潔く刺される桜井。縛られて抵抗出来ないし、猿ぐつわされて声が出せないだけかも知れないけどw

……と、その時! 桜井の持ち物から、組織の連中がある物を発見します。それは、赤い表紙の小冊子2冊。

「パスポートだ。ヤツとシャムスンの」

「!?」

シャムスンは理解します。やっぱり桜井は、本当にシャムスンと一緒に旅立つつもりだった! 刑事の職を捨てる覚悟で……

「知らせてあげる。あんたの仲間に」

シャムスンの言葉を聞いて、初めて桜井が、首を激しく横に振ります。

桜井の仲間、つまり特命課の刑事たちがアジト(ビル)の外まで来てるのに、部屋が特定出来ず踏み込めないでいる。4階にあるこの場所を知らせるには……



桜井は涙を流しながら止めようとしますが、どうする事も出来ません。

「本当に連れてってくれるつもりだったんだね、私の国に……私、それだけでいい。後のこと全部ウソでも……それだけでいいんだよ」

そしてシャムスンは、窓ガラスを突き破って……



外で待機してた紅林と神代課長(二谷英明)が、落下して来る女の姿を目撃します。

「シャムスンだ!」

「4階! 4階の西側だっ!」

かくして、覚醒剤組織は特命課によって制圧され、桜井は無事救出されます。もちろん、ナイフで刺された位でライダーは死にません。



シャムスンの面倒を見てたスナックのママ(横山リエ)は、桜井を人殺し呼ばわりして非難しますが、例の町医者がボソッと呟きます。

「知っていたのかも知れんな、シャムスンは」

そして、桜井にだけ告げていた、ある事実を告白するのでした。

「シャムスンはとっくに死んでた。いや、死んでもおかしくない体だったんだよ」

だけどシャムスンは、桜井を愛することで持ち直した。桜井は、危険を冒してでも事件を早く片付けて、彼女を少しでも長く生きさせようとしたワケです。本当に刑事を辞めて、残りの時間を一緒に過ごすつもりだった。

それが、桜井という男なんですね。藤岡弘さんが演じなければ成立しないキャラクターです。



「帰って行くようだな……生まれた所へまっすぐ帰って行くようだ」

シャムスンの葬儀に参列した神代課長が、焼却炉から空に向かっていく煙を見上げて、傍らにいる紅林に言いました。

「シャムスンだよ」

その煙が向かう先に見えるのは……

「太陽?」

「シャムスンというのは、太陽という意味だ」

「そうですか……太陽なんですか」



シャムスンは、桜井に殺されたんじゃない。きっと彼女は、助けてもらったと思ってる筈です。あの、濃い顔の男に……

このエピソードを経て、荒くれ暴走刑事だった桜井が、徐々にマトモな刑事へと進化して行きます。桜井自身もまた、シャムスンに救われたのかも知れません。


 


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4 コメント

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Unknown (ひさ)
2021-11-30 22:20:16
こんばんは。

私の最も好きな刑事ドラマは特捜最前線なのですが、
この話は自分のなかで特捜ベストエピソードの一つです。

真相を知ってから飛び降りるまでの風吹さんの表情、演技がホントに素晴らしいです。このシーンだけで何度リピートしたことか…

風吹ジュンさん、はみだし刑事情熱系でボスに抜擢されますが、大都会パートⅡなどの刑事ドラマでゲスト出演を経てのレギュラー刑事役に、感慨深く思ったものです。
Unknown (1938goo)
2021-11-30 22:23:32
ハリソンさんのフェロモンなどと言う口調(文調?)が面白いのですが、良いストーリーでした。ありがとうございました。風吹ジュンに「この人ちょうだい」と言われたいです。
しかし藤岡弘、の眉毛、サンダーバードの人形みたいに濃いですねw。
「男なら女の尻を追っかけるより、ジャングルでジャガーの尻を追っかけろ!合掌、藤岡弘、」
Unknown (harrison2018)
2021-11-30 23:20:58
>ひささん
風吹ジュンさんは若い頃は薄幸な役が多かったですよね。それも優作さんや藤岡さんみたいな野獣系アクターの相手役ばかりでw

思えば柴田恭兵さんもその系譜に入るアクターだし、そんな「猛獣使い」みたいな役が日本一サマになる女優さんかも知れません。
Unknown (harrison2018)
2021-11-30 23:26:53
>1938gooさん
「この人ちょうだい」って、すごい台詞ですよね。風吹ジュンさんでないとサマにならないかも知れません。

サンダーバードの人形w 確かに、眉毛以外の各パーツもサンダーバードっぽいですねw 『藤岡弘、探検隊シリーズ』復活して欲しいです。

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