マイクロンの弱気な見通しにより半導体関連銘柄が急落

メモリチップ企業のマイクロン・テクノロジー(MU)が従来の予想を下回る四半期ガイダンスを明らかにしたため、半導体関連銘柄が急落しました。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は7月1日、3.83%下落しています。

今回明らかになったガイダンスは8月期の売上高が72億ドル、非GAAPベースの利益は1株当たり1.63ドルと見込んでいます。アナリストは、売上高91億ドル、非GAAPベースの利益2.62ドルを予想していました。下方修正は予想されていましたが、公表された数字は懸念されていたよりもさらに悪いものでした。

マイクロンは、PCとスマートフォンの売上が軟化していることが主な問題であるとしています。そのため2022年暦年のPCの世界販売台数が2021年比で10%減少すると見ていますが、従来同社は横ばいを予想していました。スマートフォンについては、以前は1桁台半ばの成長を見込んでいましたが、現在は1桁台半ばの販売台数減少を見込んでいます。

マイクロンは特に、中国における消費者需要が予想を大きく下回ることを指摘しています。最高経営責任者(CEO)のスミト・サダナ氏はインタビューで、マイクロンの8月期の中国向け出荷に関する修正された見込みは、1四半期前の予測から30%減少していると述べています。

マイクロンの厳しい警告は、他の半導体および半導体装置株の広範囲な売りを誘発しました。インテル(INTC)-2.86%、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)-3.66%、クアルコム(QCOM)-3.3%、エヌビディア(NVDA)-4.2% と半導体株が軒並み大きく下落したほか、受託チップメーカーの台湾セミコンダクター(TSM)は5.81%安、フラッシュメモリーでマイクロンと競合するウェスタンデジタル(WDC)は3.15%安となっています。

マイクロンは設備投資計画を縮小することも明らかにしましたが、その影響で設備関連株の下落はさらに激しくなっています。アプライドマテリアルズ(AMAT)とASML(ASML)はともに6%近く下落、KLA(KLAC)は7%安、ラム・リサーチ(LRCX)も8%近く安くなっています。

ウォール街のアナリストの中には、今回のガイダンスの引き下げは、ハイテク企業のより広範な見通しの厳しさを示唆していると考える人もいます。

マイクロンやその他のチップ銘柄を担当するシティのアナリスト、クリストファー・ダネリー氏は、「今後数四半期にわたってガイダンスを引き下げる多くの企業の最初のケースになりそうだ」と断言しています。

ウォール街では、データセンター・アプリケーションの見通しを懸念する声もあがっています。マイクロンは、需要は引き続き堅調であると述べていますが、サダナCEOは、企業顧客の在庫がコロナ以前の水準を上回っていること、潜在的な景気後退により顧客が支出を抑制する動きがあれば、在庫圧縮に拍車がかかり、それが需要に影響を与える可能性があることを指摘しています。

BoA グローバル・リサーチ のアナリスト Vivek Arya 氏は、ガイダンスの下方修正を受けて、マイクロン株の格付けを「買い」から「ニュートラル」に、目標株価を70ドルから62ドルに引き下げました。「株価のバリュエーションは依然として低いが、根本的な成長の回復は2023年以降になる可能性がある」と同氏は述べており、特に、クラウドと企業顧客から「黄信号」が出ていると指摘しています。

バークレイズのアナリスト、トム・オマリー氏も同様の指摘をしています。8月期のガイダンスが軟調だったにもかかわらず、マイクロンは「需要面でまだ十分な支払いを終えていない」とし、データセンターにはまだ弱さが見られないとリサーチノートに書いています。

オマリー氏は、マイクロンを「オーバーウェイト」と評価した上で、「消費者市場はさらに弱まり、サーバー市場ではすでに減速の兆しがあり、さらなる需要の縮小が進むと思われる」と書いています。

マイクロンは生産能力増強についてもより保守的な姿勢にシフトしており、2023年8月期のウェハー・ファブ装置への支出は、2022年8月期に見込んでいた約120億ドルから減少すると予想しています(サダナCEOはより正確な見通しの数字は示しませんでした)。

シティの半導体装置株アナリスト、Atif Malik氏は、2023年度の世界のウエハー・ファブ支出を800億ドルとする予想を維持しており、2022年度の予想950億ドルから16%減となるとしています。今後数ヶ月の間に、メモリチップ企業やティア2のファウンドリから「広範な設備投資削減の発表」があり、ティア1のファウンドリでは設備投資の遅れが生じると予想しています。

しかし、マイクロン投資家にとっては、いくつかのポジティブな要素があります。ひとつは、同社が5月期に10億ドル近い自社株買いを行い、8月期にはさらに積極的な自社株買いを行うと宣言していること。また、多くのアナリストが、株価は現在、簿価をわずかに上回る水準で取引されており、投資家にある程度の下値保証を与えていると指摘していることです。

マイクロン・テクノロジーの7月1日の終値は2.95%減の53.65ドルとなっています。

*過去記事「クラウドの投資減速で影響を受けるテクノロジー株4つ

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