ウォーキングによる健康効果を高める工夫

はじめに

ウォーキングは特別な道具を必要とせず、ランニングに比べ運動強度も低いため、体力が低い人でも手軽に取り組める運動です。

日々の歩数と健康との関連に着目した研究は多くありますが、万人に通用する共通の基準はありません。
これは体力や生活習慣などが異なれば健康への効果も異なることを踏まえると、ある意味当然です。

今回は1日12,000歩をターゲットとした上で、週3回は運動強度を高める追加のアプローチを加えることで運動効果が高まったことを報告した論文を紹介します。

論文概要

出典

Chiang, T. L., Chen, C., Hsu, C. H., Lin, Y. C., & Wu, H. J. (2019). Is the goal of 12,000 steps per day sufficient for improving body composition and metabolic syndrome? The necessity of combining exercise intensity: a randomized controlled trial. BMC public health, 19(1), 1215. https://doi.org/10.1186/s12889-019-7554-y

方法
18歳以上で定期的な運動習慣のない肥満者32名を対象
対象者はランダムに下記の3群に分類
ウォーキング群:平日の歩数が12000歩/日を目指す
ウォーキング運動群:平日の歩数が12000歩/日を目指す。加えて週3回は、103歩/分以上のペースで30分歩く
コントロール群:普段通りの生活を維持する

介入期間は8週間
食事は全群で通常のルーティンを維持するよう指示
日々の歩数はスマートウォッチを用いて記録し、参加者は日々の自分の歩数が確認できた

介入期間前後の測定項目は下記のとおり
体重、BMI、体脂肪量、内臓脂肪量、骨格筋量(インピーダンス法)
ウエスト周径囲、ヒップ周径囲
安静時心拍数、拡張期血圧、収縮期血圧
HDLコレステロール、空腹時血糖値、トリグリセリド

結果
介入期間中の歩数
→コントロール群(7978歩/日)に比べウォーキング群(11340歩/日)、ウォーキング運動群(12288群/日)で顕著に多かった
→ウォーキング群とウォーキング運動群との間に有意差なし

介入期間後のヒップ周径囲、内臓脂肪量、安静時心拍数
→ウォーキング運動群でのみ減少

血液指標
→ウォーキング運動群では血糖値、トリグリセリド、HDLコレステロールが改善
→ウォーキング群ではHDLコレステロールが改善
→コントロール群ではトリグリセリドが改善

解説

この論文は、肥満者(BMIの平均値が30.4kg/m2)を対象として歩数のみを設定した場合と歩数に加えて運動強度を意識させた場合で介入効果が異なるのかを検証しました。
その結果、ヒップ周径囲や内臓脂肪量、安静時心拍数の減少はウォーキング運動群でのみ認められました
また、メタボリックシンドロームに関係する血液指標についてもウォーキング運動群で多くの指標に改善が認められました

特に内臓脂肪量の低下率については、13%以上と顕著な効果が認められました。
論文の著者らは、内臓脂肪量と中-高強度の身体活動量との間には負の相関関係があるという先行研究を踏まえ、ウォーキング運動群では週3回運動群で中強度に相当するウォーキングを30分実施したことが内臓脂肪量の顕著な減少に繋がったと推察しています。

論文によると、実際にはウォーキング運動群は120歩/分以上のペースで30分歩いており、イメージとしては早歩きに近いと思われます。
また、歩数自体はウォーキング群と差がなかったことは、ウォーキング運動群の方が12000歩に必要な時間は短時間で済むことを意味しています。

気が向いた時に早歩きを取り入れると健康効果がグッと高められるのかもしれません。

まとめ

歩数と同時に運動強度を意識することで健康効果が高まる