正しい合格最低点の見方と受験対策【当てにならない?最低点以上でも落ちる?補欠は?】

受験対策
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1.はじめに

 ごきげんよう!椎名まつり(@417matsuri)です。今回の記事では、一般受験での大学受験について、深く掘り下げて考えていきたいと思っています。今日は受験直前になると話題になる「合格最低点」について、これまでの指導経験や受験に関する知識をもとにして徹底的に分析し、「そもそも合格最低点はどのような数値か」「合格最低点は信用することができるのか」「どのように合格最低点を理解すればいいのか」「合格最低点を学習においてどのように活かせばいいのか」について考えています。
 とくに、合格最低点をどのように学習に活かすのかということで、受験直前期の学習指針を決める上で役立つ合格最低点の理解の仕方を詳しく解説していきます。

 今回の記事はミクロな視点で受験を見た内容になっており、高校3年生・浪人生に特に向いている内容になっています。もちろん、高2以下の皆さんもこの記事の内容を知識として理解しておくことには意味があるでしょうが、すぐに活かせる内容とはなっていません。なお、よりマクロな視点で見た学習指針の立て方については以下の記事で紹介しています。合わせて参考にしてみてください。

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2.合格最低点を理解しよう

 そもそも、合格最低点は赤本や旺文社が運営する「大学受験パスナビ」のウェブサイト上で確認することができる、各大学の学部学科・受験方式ごとに公開されている合格者の最低得点になります。以下の画像は「パスナビ」のサイトから見られる東京大学の合格最低点になります。
 御存知の通り、国公立大学の場合は、以下のように共通テストの結果で行う第一段階選抜と、二次試験(個別入試)の結果を合算して行う第二段階選抜の二段階選抜方式となっています。そのため、合格最低点についてもそれぞれ得点が示されています。

東大の合格最低点
出典:https://passnavi.evidus.com/search_univ/0220/border.html

 なお、大学ごとに配点も異なりますので、合格最低点を見る場合は配点も確認をしましょう。配点についても赤本や「パスナビ」のサイトから確認が可能です。以下は「パスナビ」で見られる東大文系学部の配点になっています。上の「総」と書かれた部分の満点である550点は、以下のように細かく分かれていることがわかります(この場合は共通テスト900点を110点に圧縮換算し、二次試験の440点と合算して合否判定します)。

東大の配点
出典:https://passnavi.evidus.com/search_univ/0220/ippan.html

 もちろん、合格最低点を公開してない大学もありますが、いわゆる難関大学ではほとんどの大学が公開しています。そのため、基本的には合格最低点を勉強のための指針として使うことが可能です。

 しかし、合格最低点には注意するべき幾つかのポイントがあります。「合格最低点は当てにならない、信用ならない、そもそも嘘だ」と言う人もいるのですが、注意するべきポイントをしっかりと押さえれば、合格最低点は非常に役に立つ数字に変わります

 以下、幾つかの例を出していく中で計算を行いますが、文系で数学はキライ!という方も最低限結論だけでも理解してもらえればと思います。

1.気をつけたい「成績標準化」と「得点調整」

 様々な大学の合格最低点を見ている中でよく出てくるのは「成績標準化(標準化得点)」「得点調整」というワードでしょう。特に、これは社会や理科などの選択科目がある大学の一部で実施されており、基本的には選択科目間の不平等をなくすために得点の調整を行うことを指しています。

 これも実際の大学の例を見てみましょう。まずは得点調整の方法を公表している関西大学のケースです。関西大学では、「中央値方式」「標準得点方式」の2種類が用いられており、前者は中央値の得点を科目の得点の半分として全体を補正するもの後者は標準偏差を用いて素点を補正し、平均点を調整する方法になっています。
 詳細な方法については以下で詳述しますが、数式も出てくるので折りたたみにしています。

「中央値方式」の場合
 得点に応じ、以下のどちらかの式に得点を当てはめて計算を行います。

中央値方式の計算式

「標準得点方式」の場合
 以下の式に得点を当てはめて計算を行います

標準得点方式の計算式

 数式を理解しなくても、「中央値方式」については「中央値が満点の半分を下回って(上回って)いれば調整後の点数が上がる(下がる)」ということをまずは理解しましょう。具体的には下の図のようになります。

得点調整のイメージ

左図は中央値が30点の場合で、下の線から順に15点は25点に、30点は50点に、50点は約64点に、65点は75点にそれぞれ伸びます。右図は中央値が70点の場合で、下の線から順に35点が25点に、50点は約36点に、70点が50点に、85点は75点にそれぞれ落ちるため、中央値が高い場合は15~20点落ちる可能性があることを理解しておきましょう。

 また、「標準得点方式」についても同様で、調整後の平均点である「標準得点(S)」と素点の平均点(A)の間の関係により
・S>Aならば 調整後の得点は上がる
・S<Aならば 調整後の得点が下がる

という関係が成り立ちます。点数の動き方は多少異なりますが、上の図に似た形になります。
 ちなみに、関西大学では標準得点(S)を70点とすると公表しています。詳細は以下の大学ホームページをご覧ください。

 ここまで計算方法について説明してきましたが、科目ごとの「中央値」や「標準得点」、「素点の平均点」、そして「標準偏差」は通常一般に公開されません。そのため、正確な数字を出すことはできません。学習の参考とする際に、どのように役立てれば良いのかについては後述します。

 続けて、他の大学のケースも考えてみましょう。選択科目を採用している私立大学では多くの学部学科で、成績の標準化による得点調整を行っています。以下の画像は早稲田大学法学部のケースになります。

早稲田大学の合格最低点
出典:https://www.waseda.jp/inst/admission/assets/uploads/2021/06/2021_3.pdf

 今回のケースも基本的な考え方は同様ですが、得点の標準化の方法が一切言及されていません。こうしたケースではほとんどが、上述した「標準得点方式」と類似した方式を取っていると言われています。そのため、素点からの得点換算では「標準得点方式」の計算式を活用することをオススメします。なお、標準偏差については6~10程度にして計算することが一般的です。

 このとき、標準得点を何点とするかについて議論がありますが、基本的には受験者平均点と合格最低点の間の関係性を担保するために、補正前の各選択科目の平均点か満点の半分のどちらかを標準得点としていると言われます。そうでなく、特定の点数を標準得点とする場合は上の関西大学のケースのように、事前に公表しているケースが多いのではないかと思われます。

2.「偏差値方式」「偏差値換算」による合否判断とは

 次に、「偏差値方式」や「偏差値換算」による合否判断を行っている大学のケースも見てみましょう。これも、基本的には選択科目間の得点の差を調整するために行われる方式となっています

 そもそも偏差値というのは平均値(この記事で説明している標準得点)を50、標準偏差を10に変換したデータの集合であり、これは上で述べた「標準得点方式」による得点調整の一種であると言えます。偏差値を出すための式は以下の通りで、上で紹介した式とほとんど同様です。

偏差値法による得点調整

 偏差値方式による合否判定を行っている大学については赤本やパスナビで確認することをオススメします。以下の画像は東洋大学の文学部の一部の例で、(偏)と書いてあるものは偏差値方式による得点調整が行われています。

東洋大学の合格最低点
出典:https://passnavi.evidus.com/search_univ/2910/border.html

3.合格最低点に関するその他の疑問に答えます!

 その他、合格最低点について多く生じる疑問にどんどん答えていきましょう。

Q.合格最低点は補欠合格も考慮しているの?
A.これについては公表している大学はほとんどありませんが、一般的には、補欠合格や繰り上げ合格については考慮していない(=繰り上げ合格者は合格最低点以下である)と言われています。

Q.「合格最低点より高い得点だったのに落ちた!」というツイートを見ました。合格最低点は嘘なんですか?
A.前述した得点の標準化や得点調整が行われた結果、素点が合格最低点を上回っていたとしても、換算後の得点が合格最低点を下回れば不合格になります。

Q.「合格最低点や倍率は年度によって変動するから当てにならない」という人もいますが、どう考えていますか?
A.過去数年の倍率に極端なブレや低下・増加の傾向がない限りは合格最低点を信頼して構いません。特に国公立大学は倍率が安定しているため、合格最低点の信憑性は高くなります。
 また、問題の難易度の変化を反映することができるのも合格最低点だけなので、その点でも合格最低点にアドバンテージがあると考えています。

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3.合格最低点を活かした学習指針の立て方

 これまでの内容で合格最低点についての理解を深めたところで、直前期の受験生はどのようにこの数字を活かしていけば良いのかについて考えていきましょう。
 以下では国公立大学のケース得点調整のある私立大学のケースの二通りを検討していきます。

1.国公立大学受験における合格最低点の使い方

京都大学総合人間学部の目標点

 画像は京都大学総合人間学部(文系)の試験・科目別の配点と目標点になります。おそらく多くの方も、目標点を立てる際に合格最低点を参考にするのではないでしょうか。以下の手順で目標点を立てていきましょう。

1.数年分の合格最低点を見て、外れ値になる年度以外すべてで合格できる得点を全体目標とします。
今回のケースでは2021年と2018年、2013年を除きつつ、余裕を持って500点を目標点としました。2018年を外れ値にとせず、508~510点を目標としても、2018年を捨てて490点にしても構いません。

2.国公立大学の場合はまず、共通テストの得点を埋めましょう。配点は小さいことが多いですが、高3の冬になれば本番で取れる得点が見通しやすいため、目標点を定めやすいです。河合塾などが公表しているボーダー得点を参考にするのも手です。
今回のケースでは内容的に易しい理科基礎科目の配点が高いため、目標得点を高く設定しています。(京都大学だけでなく、一橋大学などの他の難関大学でも同様の配点パターンは見られます。)

3.全体の目標点から共通テストの目標点を引き、二次試験の目標点を求めます。得意な科目の点数を高めに取り、残りは均等に配分するのが良いでしょう。国公立大学の二次試験の場合は、理数科目は目標点がつけやすい反面、英語・国語・社会については目標得点が決めにくいので、理数科目から得点をつけましょう。
今回のケースでは英語が得意な学生を想定して点数を配分しました。

 難関大学の場合、共通テストは配点が低いので軽視する受験生が多いですが、共通テストで高得点を取ることができれば、二次試験で必要となる得点を思いの外下げることができます。同じケースで共通テストの目標点を変えながら二次試験で必要となる得点を見てみましょう。

共通テスト二次試験
142点(95%・A判定ライン)358点(55%)
135点(90%・ボーダー未満)365点(56%)
127点(85%・E判定ライン)373点(57%)
120点(80%)380点(58%)

 共通テストの得点が5%下がると、二次試験の目標点が1%ずつ上がっていきます。二次試験の1%は小さいように見えますが、共通テストに比べても難易度が非常に高く、得点を伸ばすことが難しいため、決して小さな数字ではありません。
 センターリサーチにおけるA判定とE判定の差も実は個別試験で換算すれば15点の差ですが、この15点を埋めることがなかなかできないのが現実です。
 また、京都大学総合人間学部は共通テストと個別試験の配点比が約1:4と最も二次試験の配点の高い学部のうちの1つです(東大・京大・一橋大は概ね1:4の比率です)。配点が1:3や1:1の大学では、共通テストの得点を伸ばすことで個別試験で必要になる得点をさらに下げることが可能になります。

2.私立大学入試における合格最低点の使い方

 続いて、得点調整のある私立大学入試における合格最低点の活用方法になります。地歴での得点調整のある慶應義塾大学商学部のA方式で今回は見ていきます。

 私立大学の一般入試のうち、個別試験のみで合否判定を行うものを今回は取り上げました。最もシンプルな英数地歴の3科目のみですが、地歴は選択科目となっており、得点調整が行われます。目標点の決め方は以下の通りです。

1.合格最低点は得点調整後の点数であることを踏まえ、過去の合格最低点より5点~10点程度は余裕を持った得点を全体の目標点にします。
今回は得点調整後で265~270点を狙えば良いため、275点を目標点としました。

2.得点調整のある場合は、得点調整がない科目から目標点を決めましょう。また、得点調整のある科目に頼った目標点を設定すると調整の影響を受けやすくなることにも注意しましょう。
今回のケースでは数学の目標点を高めに設定しています。数学が得意なら、数学の目標点を上げて学習を行うほうが、調整の影響を受けにくくなり、合格することができる可能性が高まるということになります。

3.私立大学の入試問題はマークシート法のような択一式試験が大部分を占めます。そのため、国公立大学二次試験の地歴のように自分がどれくらいの得点を取れているのかが分からないということにはなりにくいため、目標点を定めやすくなっています。今の自身の得点を基準に目標点を設定し、どの科目の勉強を優先するべきかを再度明らかにしましょう。
また、記述式の問題が入ってくる慶應義塾大学法学部・経済学部のような受験方式では、記述部分の少ない科目から目標点を決めるとよいでしょう。

 もちろん、上の部分で紹介した式を活用し、より詳細に合格最低点を計算すると、必要な得点をもっと細かく算出することも可能になります。ただ、学習の参考にするという意味ではある程度大まかな数値を出せば問題ないと考えます。

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4.おわりに

 今回は受験直前期の対策として、合格最低点についての解説を行っていきました。ぜひ合格最低点が持っている意味を理解して、皆さんの受験対策に役立ててくださいね!

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