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「facebook friend - 安倍晋三」 元首相のインタビュー全文

2021年12月1日 23:00


 (2021年12月2日 11:13更新)


安倍晋三元首相は1日、日本経済新聞のインタビューに答えた。全文は次の通り。


――まずは自民党が261議席を得た10月の衆院選の総括を聞かせてください。


「大勝だったと思う。状況としては大変厳しいという報道もあり、220~230議席台を覚悟しなければならないと考えていた。新型コロナウイルス禍で経済を再生しなければならない時はやはり自民党だということで支持してもらえた」


――発足から2カ月近くたった岸田政権への評価をお聞かせください。


「岸田文雄首相は総裁選で勝利し衆院選も勝ち抜いて大きな自信になったと思う。岸田政権は国民の信を得た。選挙を通じて『新しい資本主義』をはじめ、首相の考えを述べ公約も示した。その上で勝利をおさめて自信のもとに人事を行われた」


「最初の人事は非常に重要だ。岸田政権が何をめざすか、党をどう運営するのかを人事で示していくことになるから思うようにやられたのではないか」


――首相とは11月30日、首相官邸で面会していました。


「清和政策研究会(安倍派)の会長に就任したので、宏池会(岸田派)の会長でもある首相にご挨拶にうかがった」


――首相が掲げる「新しい資本主義」をどのように理解していますか。


「新自由主義的な政策を転換するという文脈で話している。安倍政権も『成長と分配の好循環』を掲げ、働き方改革や最低賃金の引き上げ、経済界への賃上げ要請など新自由主義的政策と一線を画してきたつもりだ。首相はそれをより際立たせていこうという考えだろう」


「しかし成長していく意志と意欲は明確に示し誤解されないようにする必要はある。2012年に自民党が政権を奪還する前は、人口が減少するのだから成長しないし成長しなくても豊かな生活になればいいじゃないかという議論があった。成長しないと豊かな生活にはならない。高齢者人口が増えていくなか、伸びていく社会保障費に対応するにはしっかりと成長して社会保険料を確保する必要がある」


「成長する意志を失った国に未来はひらかない。成長のために改革すべきは改革するという基本姿勢を示せば誤解は解消されていくだろう」


――新自由主義からの脱却という主張は独自性を際立たせる一方で、安倍政権と距離を置くものだとの見方があります。


「政権が代わるときに新しい政権に何が期待されているかということだろう。第1次安倍政権は小泉純一郎首相の後を引き継いだから改革を受け継いだ。第2次政権は野党から政権を奪還したから違いを明確に示すことができた。同じ与党のなかで政権が代わったときも新しい首相は自分のめざす道を示す必要がある」


「政権が代わればそれまでの政権と違うものを期待される。その要請にこたえるのもトップリーダーの役割だ。同じ自民党だから料理そのものが変わるというより味付けが変わっていくということだろう」


――首相の政策は分配に力点がある印象が否めません。


「安倍政権は成長が先か分配が先かという論争に終止符を打つとし『次の成長に向けた分配』を掲げた。経済を成長させることで得た果実で大切な社会保障を強化する。企業は人材の育成や次のイノベーションに向けて投資する。新たな成長で生まれた成果を分配する。首相の方針も基本的に変わらないと思う。ただ立憲民主党の分配政策は明らかに間違っている。次の成長の種をまくための分配になっていないからだ」


――最大派閥として安全保障政策でどのような発信をしていきますか。


「台頭する中国にどう対応し北朝鮮の脅威にどう備えるかだ。安保政策の基本はなんといっても日米同盟のさらなる強化だ。有志国との連携をさらに強めていく必要もある。(米中間の)最前線に位置する日本こそリーダーシップをとり有志国との連携を強化する中核でなければならない」


「香港、台湾、チベット、ウイグルにおける人権問題がある。台湾への軍事的威圧を強める中国に世界が懸念している。台湾有事は日本の有事であり日米同盟の有事だ」


――台湾は環太平洋経済連携協定(TPP)加盟を希望しています。


「蔡英文(ツァイ・インウェン)総統はすべてのルールを受け入れる用意があると発言している。私も加盟を支持したい」


――米欧では北京冬季五輪の外交ボイコット論も出ています。


「選手は4年に1度の大会をめざして厳しいトレーニングを積んでおりそうしたことも考えながらの判断になる。人権状況をみると何らかの意志を示す必要があると世界は考え始めている」


――22年に外交・安保政策の基本方針である国家安保戦略の改定を控えています。


「それに合わせて防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画も改定するだろう。改定時期は10年ごと、5年ごとというくくりはあるが今の時代は変化に応じて次々改定していく姿勢も必要だ」


「安保環境の変化のスピードは非常に速い。技術の進歩で紛争や戦争のあり方も大きく変わった。特にサイバー分野では戦時と平時の境目がなくなりつつある。装備や体制を常に更新していく必要がある」


「21年度補正予算案で防衛予算を7700億円程度、確保する。補正予算としては大きな規模で非常に良かった。22年度予算案でも日本国民の生命を守り抜く、領土・領海・領空を守り抜いていくという意志を示す予算を編成すべきだ。戦争や紛争を防ぐには能力を高め、意志を明確に示し、相手がこちらの意志や能力を見誤らないようにするのが大切だ」


――防衛費は国内総生産(GDP)比1%が目安となってきました。


「日本は相当の防衛努力をする必要がある。米国は日本の防衛義務を負っているが日本の努力も当然求めている。米ソ冷戦時は欧州で北大西洋条約機構(NATO)があった。インド太平洋地域でバランスをとるとなると日米同盟だ。日米で足し合わせた戦力となるので当然、日本の戦力自体をあげていく必要がある。中国は潜水艦や航空機などの数が日本の2倍以上という現実がある」


――「抑止力」は戦争回避が目的だと言われます。


「抑止力とは事態が戦争に発展するハードルを高くすることだ。抑止力が弱いとハードルが低まり相手にとって武力行使の誘因になる。抑止力とは打撃力であり反撃能力でもある」


――周辺国に脅威を与えるという指摘も根強くあります。


「しかし相手が脅威に思うことが抑止力となる。そこでミサイルのボタンを押す手が止まる。押せば相当激しい攻撃にさらされることが分かっているからだ。皮肉だがそれが現実だ。反撃する力があって初めて攻撃を思いとどまらせることができる」


「日本が北朝鮮からミサイルを撃たれた際に、米国が報復攻撃するのに日本が対応しないとなれば日米同盟の危機に直面せざるをえない。主力は米国でも日本も打撃力を行使するというのが大切になる」


「抑止力としての打撃力をもっぱら米国に依存していては、相手は『日本をたたいても、もしかしたら米国は報復してこないかもしれない』と考える危険がある。日米で打撃力を行使するとなれば確実に抑止力になる」


――保有を検討している「敵基地攻撃能力」という用語は誤解を生みやすいのではないでしょうか。


「『反撃能力』『打撃力』でいいのではないか。そもそも敵基地に限定する必要はない」


――既存のミサイル防衛システムは本当に機能するのでしょうか。


「決定的な抑止力にはならないが相手の計画を狂わせることはできる」


――憲法改正の議論への姿勢をうかがいます。


「憲法制定から70年以上たつ。私たちの生活を守るために改憲は本来常に考えていくべきだ。議論そのものをさせないと主張する人たちが力を持っていた時代もあったが、今は議論をすべきだとの世論の方が強くなった」


「自民党はすでに4項目を示している。私自身は9条改正を主張してきた。自衛隊が憲法に明記されていない異常な状態に終止符を打つ必要がある。緊急事態条項についても緊急事態に国がどう私権を制限できるか、多くの国の憲法には記述がある」


「与党内で公明党の理解を得るようさらに努力すべきだ。日本維新の会や国民民主党は憲法の議論を進めることに前向きだと思う。国会の憲法審査会で議論を始めることが大事だ。清和研こそ憲法論議の先頭に立つべきだ。使命感をもって取り組んでいきたい」


――安倍派は岸田政権とどう向き合いますか。


「私も総裁選の決選投票では首相を支持した。総裁選で新総裁が選出されれば、まとまるときにまとまるのが自民党だ。最大派閥としてしっかり支えていく。これが我々の総意だ」


――安倍派内には岸田派や麻生派など源流を同じくする派閥がまとまる「大宏池会」構想を警戒する声があります。


「11月30日に麻生太郎副総裁と会ったが、麻生氏の方から『大宏池会を画策しているのではないかと言われるがそんな議論はない』という話があった」


――言葉通りに受けとめて良いですか。


「私はそうでないかと思う」


――次期総裁選に向けた安倍派内の人材育成にどう取り組みますか。


「岸田政権はスタートしたばかりだ。次の総裁選まで3年ある。派内に人材が多士済々いる。切磋琢磨(せっさたくま)して頑張ってほしいし私も支援していきたい。結果としてどうするかはそのときに考える」


――先の総裁選では無派閥の高市早苗政調会長を支持していました。


「高市氏は多くの予想を上回る票を得た。その期待にこたえていくことが今の高市氏の使命だと思う」


(聞き手は今尾龍仁)



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【櫻LIVE】第476回 - 安倍晋三・元内閣総理大臣 × 櫻井よしこ(プレビュー版)

122,200 回視聴2021/12/04

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