ソロツーリストの旅ログ

あるいはライダーへのアンチテーゼ

振り返ってみるとオートバイがいちばん好きだった

いくら天邪鬼でも満開のサクラにうんざりだなんて言うな

2023年04月03日 | R100Trad (1990) クロ介


早朝、花冷えの空気の中

伊勢道を南下していた

大袈裟かな、と思ったけどライトダウンを着てきたのにサブい



あのちゃんSA

正確には安濃サービスエリア

朝食に外のベンチでサンドイッチをつまんでいたら

震えがくるくらい身体が冷えて

仕方なくもう一度中へ行ってアツアツのコーヒーを一杯

それでもちょっとマシかレベルだ

経験上走ってるほうがサブくない気がするので走り出すことにする



それにしてもサクラだ

松阪IC辺りのすごいサクラ並木を皮切りに

今日はどこもかしこもサクラの大渋滞だ

熱烈歓迎 桜花爛漫

サクラ絵巻の走馬灯を見ているようだ

もうエエねん、ってくらいのサクラだ

日本人のサクラに対する情念を思い知らされる

過ぎたるはナンチャラ、ちょっとうんざりする

なんて贅沢なボヤキも出そうだ



勢和多気ICで高速を降りて国道166号線を西進する

参宮街道とも呼ばれている古い街道だ

もう兎に角ここもサクラ、サクラのオンパレード

おまけに日差しが一杯の青空

日頃の心がけの良さの賜物というより他ない日和ですよ

もうダウンもいらない

パニアからスイングトップを出して着替える



国道166号線は

中央構造線の中を激しく屈曲を繰り返す櫛田川を辿って

うねるようなワインディングが続く

もちろん大好きなヤツだ

交通量もほとんどなくて独り占めの快走

やがて前方には紀伊山地の山並みが幾重にも重なって迫る

谷筋が狭まり

民家が途切れると

国道は一気に高度を上げて高見峠へと向かう

全長2470mの高見トンネルを越え吉野へ出た

県道16号線を使ってショートカット

熊野街道 国道169号線に合流する

季節がら吉野山へ向かうクルマが多いのかなと思ったけど

なかなかどうしてこっち方面もクルマが多い

そのためペースはぐっと落ちたが、まあ仕方ない

おおたき龍神湖を見下ろしながらのろのろ進む

さらに上流の大迫ダムを過ぎると熊野へとさらに峠を越える

ずいぶんむかし、竜神スカイラインが有料だったころ

そこから見た「V字谷」のすごさは印象的だったけど

国内有数の降雨地帯の水量にはまったく圧倒される

ゴリゴリと隆起する紀伊山地をあんなにも深くえぐり取っていく水の力

紀伊半島の大部分を占めるこの山と谷の険しさは想像以上だが

国道は尾根から尾根へとループ橋でつないでワープするかのように

ダイナミックにルートをつなぎ

いとも容易く峠を越えていく

日本の公共事業費は防衛費とほぼ同額

この二つを足しても社会保障費には全く届かない

あ、どうでもいいか

交通インフラは行政の重要な柱

ま、ちょっと公平性の部分で地方に過剰かなと感じる

あ、またどうでもいい話

前後に伸びたのろのろの車列に交じって走ると集中力が落ちる



大峰山と大台ケ原に挟まれた北山川の谷を下っていくと

その川幅が徐々に広がっていることに気づく

この先にある巨大な池原貯水池の端部だろう

立派なトラス橋を渡るたびにさらに川幅が広がる

ダムは近い



「池原ダム」はアーチ式ダムの中で総貯水量国内第1位

洪水吐が別の斜面に設置されるため

ダム堤はすっきりとただ美しいアーチを描く

けれど堤高が111mもあるため恐怖しか感じない

そして総貯水量3億3840万㎥!の水量だ

夏に豊根ダムのことを書いたときに貯水量4040万㎥が

途方もなく想像できないと驚いたけど

この池原貯水池は桁が違うのだよ!



巨大なダム湖の向こうに

無数のサクラに埋め尽くされた下北山スポーツ公園が見えた

なんだここは

このクルマやオートバイの多さの意味をここに来てやっと悟った

下北山はサクラの名所だった

「ものスゴーい!」

こんなアホな形容詞がぴったりの桃源郷(桜だけど)

今日の行程のまだ半ばにも達していないのに

もうすっかり走る気喪失しちまったわさ



「カーブの店」という洒落た名前のコンビニでアレを手に入れる

アレだよ、アレ



思わぬ花見となった

サクラ目的でなくここに来てるのはこのオッサンくらいだろう

きてるというか、来てしまってるんだけどね

でもいい

花見だ



イスを広げ湯を沸かしている間もなぜか不思議な笑みが止まらない

なんなら鼻歌でも歌いだしそうだ

たくさんの人が来ていて、皆一様に楽しそうだ

―――みんな!いい日に来られたね!

サクラ、うんざりだ、なんて云ってゴメンナサイ



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