失敗。田舎暮らし ブログ

田舎暮らし、出版関係、原発・核などについて書いています。今は、田舎暮らし中です。役立つ情報になればと、書き始めています。

英国取材。小さなミスから起きたトラブル3E

2021年02月25日 15時49分54秒 | 記事

遠出をする取材日の朝、カメラマンが出てこない。

 

どうしたの?

「あの、動けないです」

 

えっ?

「ぎっくり腰みたいです。動けません」

 

昨夜、ビールを飲みながら寝たらしい。

その時の姿勢に無理があったのに、そのまま熟睡してしまい、

目が覚めたら、ぎっくり腰になっていた、という。

 

一歩も歩けないほど、痛みが激しいようだ。

それでは、取材は無理だ。

 

今日は、これから遠出になる。

取材対象者とも約束しているし、核の再処理施設にも行く予定だ。

 

写真は、私が撮影するから、君はホテルで横になっていた方がいいよ。

「そんなあ、アメリカからここまでやってきたのに、ホテルで寝てるなんて嫌です」

 

じゃあ、どうしたいの?

「車の後ろの席に乗せてください。歩けないけど、車にさえ乗れば、なんとかなるかも」

 

しかしね、写真を撮れないカメラマンを連れて……と言いかけてやめた。

幸いにして、大きなサイズのレンタカーだから、後席になら横になれるだろう。

「ホテルで寝ているのは嫌だ」というので、連れて行くことにした。

 

これで、私は写真も撮影しなければならなくなった。

動けないカメラマンを抱えて後席に乗せ、海岸に向けて出発した。

 

核の再処理施設で取材して、市民も取材して

慌ただしい取材もあと一人になった。

現地で市民運動をしている女性を乗せることになっている。

 

待ち合わせ場所で、取材対象者の女性を助手席に乗せた。

そして、ここで気がついた。

私は、運転手でカメラマンで記者の3役だけど、

全ての仕事を同時にはこなせない状況に直面したのだ。

 

その女性は、車に乗るなり、話し始めたのでインタビューが始まったが、

私は運転しているので、質問がおろそかになる。

 

また、彼女に取材現場に案内してもらっているので、

インタビューの途中で「この先を左に」などと指示がある。

そして、続けて市民運動のことを話し始める。

 

後部座席に移った通訳が、会話に対応できない。

そもそも彼女はオランダ人で、結婚して英国にやってきた。

道案内の英語は私にもわかるが、通訳は彼女の英語の一部を訳せない。

 

私は、運転しているのでインタビューのメモを取れない。

カメラマンは、後席に座っているだけだ。

 

車の中では、インタビューと道案内と雑談が会話されていたが

私には、落ち着いて取材ができない時間だった。

 

記者の仕事としては、メモが取れないのが致命的だったが、

そんな状況も、取材が終盤に近づいていることを実感して、

楽しくなった。

 

彼女を家の近くまで送って行くと

「景色のキレイな帰り道を教えてあげる。道が狭いけど、必ず着くから安心して」

というので、その道を選んだ。

 

今だから白状するが、夕暮れの景色は本当にキレイだった。

しかし、道が狭くて曲がりくねっていて、大きいレンタカーには無理がある道だった。

民宿に着いたときは、無事に帰ってこれってよかったあ、と力が抜けた。

 

私は2人に車を運転できるかどうか、事前に確認しなかった。

まさか、運転免許を持っていなく、地図も読めない、なんて考えもしなかった。

それが、連続して起きたトラブルの原因だった。

 

この後、ロンドンからフランスに移動して、

シェルブール近郊で取材活動をした。

 

カメラマンのぎっくり腰は、数日で治ったが

英国と同じで、取材対応、レンタカーの運転など、

すべて私の役割になってしまった。

 

いまは、20数年前の楽しい想い出になっている。

 

(この連載は終わり)



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