魅惑の10月。
世間はアゲ、私はサゲ。
世間は爆、私は渋。
秋の名月も導いてはくれない。
私のシーバスは一体どこにいるのだろう?
私はいま川のほとりに立っている。
いや、正確には座っている。
体育座りだ。
心を空っぽにして空を見ている。
凡ミスのくるぶしソックス。
数分おきに足首まで登ってくる、ちっちゃな虫を払い落とすだけの無の時間。
私は陣取りの真っ最中。
ここは遠征先のある河川。
アングラーが燃えたぎる秋である。
貧果に喘ぐ私にとって一発逆転の大チャンス。
一番人気の橋脚明暗を何としてでも押さえるため、満を持して16時に現地入り。
私は本気だ。
スレの誘発を防ぐため撃ちはしない。
じっと我慢の子。
時合はおそらく19~20時ごろだと思われる。
到着早々、やはり自責の念に駆られてしまう。
3時間って長いよねぇ?
いくらなんでも早すぎなんじゃ?
何して過ごしたらいいん?
それノープランってまずくない?
様々な思いがぐるぐると回る。
空回り。
私の人生も空回り。
本音を言うならランガンしたい。
時間も場所も余るほどある。
でも、ここを離れるのが怖い。
かつて用足しのわずか10分の間に場所を取られた苦い経験を持つ私。(勿論その人が悪いわけではない)
石にかじりついてでもここを死守しなければ。
人気シーズンの橋脚明暗なんて尚更だ。
今日はうんこだってここでしなきゃ。
向かいの河川敷では学生さんが鳴らすトランペットの音色。
なんだか良い風情だなぁ。
おーい昔の金曜ロードショー吹いてくれよ。
おじさん今そんな気分なんだ。
もう少し若ければここで寝とくのにな。
今日は暖かくて風もない。
体力も回復して一石二鳥だ。
ただ…夕暮れ時の橋のたもと、おっさんが転がっていれば間違いなく110番。
橋上の車から見れば立派な変死体だ。
それにしてもやれやれ今年は酷かったな。
私は静かに思い返す。
しっかり釣行してしっかりホゲた。
シーバスへの道のりはまだまだ険しい。
私はデイゲーム6割、ナイトゲーム4割の具合でシーバス釣りを楽しんでいる。
どうせなら風景まで楽しみたい派なので、どちらかと言えばデイの方が好きだ。
今年やっとこさバイブレーションに手を出したものの、私はやっぱりプラグの釣りが好き。
だからデイであってもプラグを中心としたゲームを展開している。
私ごときボンクラが声高に言えることなどないのだが、この2年間みっちりデイをやってきて感じたことがひとつ。
ナイトに比べて、スレも見切りも早い。
私はデイゲームにおいて粘りの釣りでいい思いをしたことが殆どない。
振り返ってみると、流れの効いたタイミングでの一投目などドンピシャのヒットばかりだ。
また、デイは濁りがないと特にキツい。
とにかく無駄撃ちをせず、時合と思われるタイミングまでキャストをしない。
粘らずにランガン重視。
雨に拘る。(ただし頭をハゲ散らかしてしまうデメリットあり)
私のデイゲームにおける心得だ。
楽しい楽しいデイゲーム。
少しずつ時間をかけて、少しずつ理解を深められたらと願う。
ささやか過ぎて恥ずかしい限りだが、普段私のブログには恐ろしいほど魚が出てこないので、ここで愛用ルアーの釣果写真を並べてみたい。
(たまには釣りブログらしいことをしてみたいのです)
ザブラウィスパー96S
とにかく大好きなミノーだったのだが、とある事件により所有品を全滅させてしまった。ショック過ぎて継続利用は断念。いつか記事に書いてみたい。
フィンバックミノー75S
初めて上げ潮で釣れた忘れられない一匹。よく肥えてよく引いた。大きな潮回りの上げ潮では水が逆流することをようやく知る。本当に勉強になった。私的にはローリングベイト77よりバイト数は上回っている。
【後日談】
待ち時間の合間にこのブログを書いていたのだが、いよいよ辛抱出来なくなった。
苦しい。時合の19時が遠過ぎる。
なまじっかデイゲームのことなど触れてしまったものだから、日が残る内にどうしてもルアーを投げたくなった。
どうしても、だ。
試したいメソッドだってある。
でも、でも。
せっかく頑張って待ち続けたのに。
とにかく、苦しい…。
…
…
ああ、もうダメだ。
限界だ。
17:30 ちょうど満潮の潮止まりに差し掛かり流れはゼロ。
私は釣りを開始した。
鏡のような静かな水面。
いま思えば決して触れてはならないデリケートゾーンだった。
私は禁断の果実を食べてしまったのだ。
それでもまだ理性は残っていた。
明暗だけはあたためておこうと、手前の際を通すだけに留めた。
90度のアップキャスト。
ぶりぶりミノーは控え、波動弱めのシンペン。
スレさせるような野暮はしない。
暇つぶし、暇つぶし。
時合までのちょっとしたお遊びさ。
17:45 私は明暗を撃っていた。
気づけば手持ちルアーを全力投入。
今までの頑張りは何だったのだろう。
片道2時間半の苦労も忘れてしまった。
ここらの記憶は殆どない。
もともと緩めだった頭のネジ。
解放と同時に吹き飛んでしまったようだ。
流れが効き始める。
ついに時合の到来か。
いよいよ待ちに待ったチャンスタイム。
19:00 超ホットスポットのはずの私の明暗が死んだ。
悲しい。時間を巻き戻したい。
現場はすっかりスレきってしまった。
ご飯ではなくおもちゃだとバレてしまった。
旧ホットスポット。
泣いたらあかん、泣いたら。
悲しい色やね。
私の技術で出せる魚はもういない。
21:30 戦力外通告。
とうとう来るべき時が来たか…。
心身の限界。
4時間ノーバイト。
最高の季節、最高の明暗。
ずっと楽しみにしていた遠征ナイトゲーム。
ネガティブな私の予想を遥かに上回るエンディングに驚きしかない。
絶望。もう釣りやめてもいい。
最後にリアクション狙いでバイブレーションを明暗境目にキャスト。
一発で40弱のセイゴが釣れた。
ちっとも嬉しくはなかった。
22:00 帰りしな本日初めてのアングラーがやって来た。
「こんばんは!今日はどうでしたか~?」
気持ちの良い爽やかな御仁だ。
どうせならもっと早く来て欲しかった。
貴方のために私は3時間早く来たのですよ。
そのせいで明暗が潰れてしまったのですよ。
私に言えるわけがなかった。
「あ、いえ、全然…。」
モゴつきながら思う。
どうか私の分までお願いします。
良き釣果を。
教訓「人間、待って1時間 」
デイゲームの心得とか馬鹿みたい。
偉そうな講釈垂れた直後にこんなことになるとは…。
スレがどうのこうの、一体どの口が言っているのだろうか。
ごめんなさい。
私はスズキクラスのただの禿げかかった嘘つきです。