【前編】




私のこのブログはランキングサイト「に○んブログ村」に登録している。


大きな声では言えないが、告白しよう。


私は不正を働いている。


初めこそ軽い出来心に留まっていたが、味を占めた後は100%の全力インチキに変わった。

もう戻れない。

「最初は少しおこづかいが欲しかっただけなんです…」

長きに渡り勤務先の経費を不正横領する、表はマジメな経理社員の気持ちがよく分かる。



私のブログ、とにかく訪問者が来ない。

実生活で社会から疎外されているだけに、せめてこの世界くらいは日の目をみたい。

表はマジメな「醜い承認欲求の塊」なのだ。

歯がゆい、なんとかしなきゃ…。

そんな昨年の令和3年新春、藁にもすがる思いで登録したのがこのにほ○ブログ村だった。


先ず私はこのサイトを研究した。
登録者数こそ少な目だが「シーバス釣り」なるカテゴリーもある。
なるほど、ランキングサイトだけあって上位になるほど目につきやすい。
ページ切替をせずに済む10位以内に入ることがカギとなりそうだ。
ここに食い込めればアクセスの向上が期待出来るかも知れない。


しかし、このあたりの選手層は厚い。

黄金聖闘士、海南大付属、十二鬼月上弦…

私が普段イチ読者として愛読している人気ブロガー達ばかりなのだ。

ただのオールスターやん。

こりゃ完全な無理ゲーだわ。



ご承知の通り○ほんブログ村の歴史は長い。

最早説明は不要だろうが、念のため簡単にシステムを説明しておく。


まず登録ブロガーは自身の記事にこんなバナーを貼り付ける。

ここを読者にクリックして貰えばポイントが入る、という仕組みになっている。

(1クリック=INポイント10加算)

週毎にこのINポイントの数を締め、その獲得順にランキングが構成される。

金銭的なメリットがあるわけではないが、ランキングが上がればそれだけ人目につく。

登録ブロガーにとっては自身のブログの認知度向上に一役買ってくれるというワケだ。


当然ながら、沢山の読者がいて沢山の共感を呼ぶブログでなければランキング上位に食い込むことは出来ない。

当時の「シーバス釣り」カテゴリーであれば、トップ10で週間INポイント130くらい、トップ3で200くらい必要だったと記憶している。

(要は10位以内にランクインするには一週間で最低13人にバナーをクリックしてもらう必要があるということ)


私も恐る恐るバナーを貼り付けてみた。

するとどうだろう。

なんとクリックしてくださる親切な方がチラホラ現れたではないか。

おたんちんブログなのに…嬉しい。

私は感激した。

世の中まだまだ捨てたものじゃない。


自分のスマホでも押してみた。

えっ?

ポイント入るやん。

どういうこと?

こんなの自己クリックで無限にいけるやん。

流石にそんな甘い話はなく、あれこれ調べた結果、1台のスマホにつき1日1回までクリック認定されていることがわかった。

(1日10ポイントは自分で稼げるということ)



よし。

私は早速、正攻法を諦めた。

まずは自己クリックを寝起きのルーティンに加え、週間INポイント70を確実にGETする作戦を選んだ。

また、幸運にも優しい読者によるボーナスタイムが続き、コンスタントに計120~130/週のINポイントが獲得出来るようになった。


効果は劇的だった。

憧れの10位以内にも稀にランクインするようになり、みるみるアクセスが増えた。

こんなに来てくれるの (涙)?

特に新規参入者は目につくのだろう。

瀕死状態のこのブログがサマになってきた。

誰かと繋がるっていいね。

嗚呼…神様、仏様、にほんブログ○様。



だが幸せは続かなかった。
どうやらこのブログの数少ない読者のお慈悲も底をつき始めたようだ。
というよりウザがられ始めたみたい。
そのうち誰一人クリックしなくなり「自己クリックによる70ポイント=実質0」だけが、にほんブ○グ村における私の全てとなった。


当然みるみる順位は下がっていき、ブログアクセスも恐ろしいほど減ってしまった。

やはりランキング10位圏外だとアクセス数はがくっと落ちる。

この淋しさはなんだろう…。

今や誰も私と目を合わそうとしない。

パーティーは終わったのだ。


今思えばここで奮起するべきだった。

読んでくれた人に楽しんで貰えるよう、徹底的に内容を充実化させる。

己れ自身を磨くべきだったのだ。

だが甘い密をすすった私はもう戻れない。

「最初は少しおこづかいが欲しかっただけなんです…」

横領社員と同じように、結局私はずるずると不正の道を歩むことになってしまった。







【後編】

※もともと2回に分けて記事にする予定だったのですが、分割する価値が全くないことに気づきました。
長時間のお付き合い大変恐縮ですが、引き続き宜しくお願いいたします。



『前回までのあらすじ』


ブログをはじめたが誰も訪れない。

火星のごとき無人ブログを救うべく登録してみた「にほんブログ○」。

数少ない読者のお恵みにより、好調な滑り出しを達成。

みるみる増えるアクセス数。

だが現実は厳しかった。

早々にウザい認定されてしまい、誰もバナーをクリックしてくれない。

このままではマズい…。

みるみる減ってきたアクセス数。

焼け野原の恐怖から逃れるため、私はとうとう自己クリックでポイントを稼ぐ不正マシーンと化した。




次の一手として、家人のスマホを利用することを思いついた。

自力Vの可能性はとっくに消滅している。

これでかつての輝きを取り戻そう。

最初はたまに拝借する程度、それが日課へと変わるにはさほど時間を要しなかった。

借りる際に酷く怪しまれたが、何とかごまかし、その間に着々とINポイントを稼いだ。


myスマホ = 70ポイント

家人スマホ = 70ポイント

TOTAL = 140ポイント/週


なんということだろう。

あっという間に形勢が逆転した。

私は「シーバス釣り」カテゴリー内における、上位常連者となってしまったのだ。

周りにはあの著名ブロガーたち。

パッと見、私つなわたりは人気ブロガーにしか見えない。

自分が誇らしく、毎日が楽しい。

スマホを開く度に包まれる幸福感。

インフルエンサー気取りの日常を過ごすうち、不正で生まれたまやかしの姿であることもすっかり忘れてしまった。

ブログアクセス数も過去最高を更新した。



私の欲望にはキリがなかった。
あれほど憧れた「top10」のステージも、辿り着いてみればやけに色褪せて見えた。
私はこんなところで燻ってる器ではない。
もっと上を目指すべきだろう?

誰も押さないので記事にバナーを張りつけるのをやめた。

もうめんどくさい。

どうせ自分で押すだけだし。

そんなことよりメダルだ、3位入賞だ。

たけし、タモリ、さんまのBIG3。

「三本の指に入る」という言葉の響きは、どうしてこうも美しいのだろう。


熟考した挙げ句、学生時代の後輩を巻き込むことにした。


今や私の数少ない友人でもある。

釣りは一切やらない。

幾ばくかの金を握らせ、協力を仰いだ。

そして毎日必ず私のブログ内のバナーをクリックするよう指示を出した。

最初のうちは「残業で忙しかったから」「子供と遊んでて疲れた」とかしょうもない理由でよくポカをしたが、その都度、過度な熱量でゴン詰めしたり、泣き落としにかかったり、できうる限りのアメとムチを駆使した。

完全な不正ムーヴで進行しているだけに、彼のポカは100%バレてしまうことをようやく把握したようだ。

そんな私の本気度に共感したのだろう、やがて完璧な仕事をこなしてくれるようになった。


myスマホ = 70ポイント

家人スマホ = 70ポイント

後輩スマホ = 70ポイント

TOTAL = 210ポイント/週


とうとう2位にまでなった。



しかし、この虚しさはなんだろう…。

予想に反して全然嬉しくない。

だってただのインチキだもの。


また、ある事実にうっすら気づき始めた。


確かにアクセスは伸びた。

かつてないほど沢山の人が訪問してくれるようになった。

ただ、何故か皆さんすぐに帰られるご様子。

アップした記事には来てくれても、他の過去記事には決して飛んでいかない。


「ランキングが上の方だから見にきたけど、コイツ全然つまらないじゃん。長いだけで釣れないし。」


何処からか声が聞こえた。

どうやら中身がポンコツなこと、バレてしまったみたいね。

当たり前か。

私はそもそも人気ブロガーじゃないし、ランキングはただの不正操作だし。


このあたりでようやく正気に戻れた。

怪しげなネットワークビジネスよろしく近しい第三者を巻き込んでゆく姿に、我ながらドン引きしてもいた。

いい夢見れたし、そろそろ現実に戻ろうか。


家人と後輩に協力解除を申し出た。

これまでどうもありがとう。

これからは真面目に頑張ります。

コツコツやっていこう。

そんな気張りなさんな。

ブログなんて自分が楽しめればいい。

目の色変えてアクセスばかり追っかけてもしょうがないさ。


私はすっかり改心した。

ランキングに固執したあの日々も、今となってはもう懐かしい。

現在は自己クリックだけに留めている。





※に○んブログ村登録者の中でこんな馬鹿なことやっているのは私だけだと断言出来ます。
皆様、きちんと規定に沿って楽しんでらっしゃいます。
くれぐれも誤解なきようお願いいたします。
もしご覧になられたことがなければ一度如何ですか?
順位に関係なく、面白い釣りブログが沢山ありますよ。