今日の仕事は辛かった~

あとは焼酎をあおるだけ~


夕方5時を回ると自然に口ずさんでしまう。

山谷ブルースは肉体労働者である私にピッタリの歌だ。

いつも心に寄り添ってくれる。

お洒落なJAZZやボサノヴァは要らない。

禿げた私に激しいROCKは必要ない。

山谷ブルースだけでいい。


私の名はつなわたり。

ごくありふれた初老だ。

毒にも薬にもならない釣りブログをひっそりと運営する不人気ブロガーでもある。

愛してやまないのはシーバス釣り。

私の数少ない生き甲斐と言っていい。

さあ今回もシーバス釣りについて、思うがままに語ってみよう。



令和幕開けと同時にシーバス釣りを始めた。
私のキャリアは令和の道のりそのものだ。
「飯を食う」「クソをする」「眠る」などの生活サイクルに「川で鱸を釣る」が新たに加わって今年で5年目。

山岡士郎が担当する究極のメニュー同様、振り返れば圧倒的な敗北の歴史だった。
何百回とシーバスに挑み、悉く敗れてきた。
それでもささやかな勝利を積み重ねていくことで、そこに一種の勝ちパターン「釣れる条件」なるものに気づくことが出来た。
私の考えるその条件とは…

【ベイト】【流れ】


この2つだと思っている。

セオリー中のセオリーではあるが、やっとこさその重要性がわかった。

ベイトに関しては前回記事に書いたので、今回は【流れ】について綴ってみたい。



河川シーバス釣りでは流れがないとまず釣れない。


気づくまで1年以上かかったろうか。

教えてくれるお友達がいないことも災いしたが、一番の要因は無知であろう。

あまり頭の宜しくない私は、シーバスの捕食行動を長らく誤解していた。

青物のように「エサとなる小魚=ベイト」を追い回す魚だと思っていたのだ。

ヤズやサゴシ釣りで体が覚えたジグ操作。

瞼を閉じればすぐに思い出せる。


早く、もっと早く…

ルアーを見切られたらおしまいだ…


それだけを第一に、昼夜問わず早巻き一辺倒の釣りを展開し1年目をドブに捨てた。


その内、少しずつ生態を知るようになった。


川のシーバスは捕食時に動き回らない。

捕食に適した場に陣取り、川の流れに逆らうように頭を向け、じっととどまっている。

「素早く泳いでエサを捕らえる」のはそもそも苦手な魚種なのかも知れない。

それ以上に賢いのだろう。

流されて遊泳力が落ちた小魚を下流側で待ち構え、体力の消費を抑えながら、より多く効率的に捕食する。

雑誌に載っていた「ドリフト」「糸ふけ」「ハンドル1秒/1回転」などの謎ワードがようやく理解できた瞬間。

そうか、そういうことだったのか…。



自身の釣果を振り返れば、昼であれ夜であれ、そこにはいつも「流れ」があった。

川は常に流れているが、そうじゃない。

轟々と激しく流れる瞬間があるのだ。

シーバスがルアーで釣れるのは、いつもそんなタイミングだった。


一般的な海釣りの時合は「上げ3分下げ7分」と言われるように、潮が止まる直前や動き始め、つまり潮止まり前後が最も釣れやすい。

もちろん自然相手のことだから絶対的なものではなく、あくまで目安の話。


河川シーバス釣りの場合は「流れが効く」タイミングであろう。

上げ潮にしろ下げ潮にしろ、水が大きく動く瞬間が魚の活性が上がる時合となる。

(汽水湖だとか日本海側の河川なんかは違うかも…)


偉そうに力説してしまったが、こんなことはシーバス釣りの一般常識。

初心者アングラーだろうが皆知っている。

便利な時代だ、スマホを開けばすぐ分かる。

私は理解まで1年かかった。



私は仕事柄出張が多く、普段から九州一円を車で飛び回っている。
行く先々でシーバス釣りをやるものだから、ルーティンとなる河川はおのずと増える。
その数、およそ15前後と言ったところか。
北へ南へ、東へ西へ。
そんな生活を数年続けるうちに、私はあることに気づいた。

流れが発生するタイミングは川によって異なる。

私はおかっぱりアングラーだ。
そのため、どちらかと言えば水の量が多い時間帯に釣行することが多い。
そもそも九州河川は干満差が大きく、護岸からでは干潮廻りは釣りにならないことも多い。
しかも上げ潮は大の苦手、そうとくれば狙いどころは「満潮からの下げ始め」となる。

私のホーム河川は流れが強い。
大きな一級河川ではないのだが、しっかりとした太い流れが発生するのでシーバス釣りは比較的やり易い。
例えば大潮で満潮潮止まりが21:00とする。
私のホーム河川の場合、21:00くらいから既に流れは効き始めている。
なんと言うか動き出しが早いのだ。
徐々に流れは強まりながら、マックスで流れるのがだいたい22:00~23:00ごろ。
潮止まりから約1~2時間後。
つまりそこが「満潮からの下げ始め」の時合となる。

もちろんタイドグラフ通りに潮が動かないことは多々あるし、川の流れは緩んだり強まったり非常に変則的だ。
流れが効く場面は何度となく発生する。
また、下流域や上流域など立ち位置次第で流れのタイミングや量は異なる筈だし、雨が降った降らないでも流れの行方は変わる。
時期によっても然り、日中と夜間でも潮の動きは変動する。

それでも自信を持って言えることがある。
「私のホーム河川は動き出しが早い」
これは他の河川を知ることで得た、私なりの貴重な情報なのである。


同じく満潮の潮止まりが21:00と仮定する。

ある川では21:00の段階では何の動きもない。
鏡のような水面をキープしたままだ。
22:00くらいで漸く流れが出始める。
最初の大きな流れが発生するのが23:00~0:00。
私のホーム河川を基準とすれば、この川の時合は「1時間遅れ」となる。

またまた別の川のお話。
21:00では同じように何の動きもない。
22:00…23:00…むむ、流れは一向に出ない。
おかしい、今日は長潮だったか?
流れは一体どこに行ったのだ?
諦めかけた0:00、待ちに待った流れが出る。
ややっ、ここで?
水もすっかり無くなった1:00~2:00、川は勢いよく流れ出す。
私のホーム河川の動き出しより「3時間遅れ」、こんな川も数多くあるのだ。


私は現在、自身のルーティン河川を徹底的に洗い直している。
新たな課題が見えて正直嬉しい。
川の流れ、つまりは「動き出し」について一つ一つ念入りにチェックしている。

これが功を奏したのか、昨年の秋、3年間全く実績の出なかった河川でようやくスズキクラスを釣り上げることが出来た。
しかも幸運は重なり、人生初の川ヒラ。
(Twitterでエキスパートさんらのご指摘により判明)

ふっ…もう死の川などとは呼べないな。
ファイトが終わってスカしてみても、煙草を持つ手の震えは止まらない。
時間と労力をかけた甲斐があった…。
とても興奮したし、下手くそながらも自力で釣果を得れたことに深く満足した。

川は同じように見えて、一つ一つ違う顔を持つ。

金子みすず「みんなちがって、みんないい」を彷彿させるこのフレーズは一応自前である。
どうか笑わないでやって欲しい。

小さな発見でも私にとっては大きい。
ゼロから手探りで始めた趣味だ。
シーバス釣りの奥深さを感じる5年目、まだまだ道のりは遠い。
しかし何年経っても色褪せない。
楽しい、楽しい、楽しい。
この釣りに出会えて本当に良かったなあ。
つくづく思う今日この頃。