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死刑確定囚・野比のび太 – 第二十三話・昇華するのび太の鬱屈

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殺意に昇華するのび太の鬱屈

のび太は部屋の薄暗い天井を見上げながら、昨日の出来事を反芻していた。

武に怒鳴られたあの瞬間が、脳裏で何度もフラッシュバックする。

「なんで僕だけがこんな目に遭うんだ……。」

自分が悪いなんて微塵も思わない。

それどころか、叱責されたこと自体が不条理であり、すべて他人のせいだという結論に至るまでの理屈を、彼の頭は休むことなく構築し続けていた。

のび太は、どれだけ自分が間違っていても、それを認めることなどない男だ。

それは幼少の頃から始まり、すでに生き方になっている。

母に怒られたときも、教師に叱られたときも、彼は常に言い訳を探し、自分がいかに正しいかを、自身の中で主張し続けた。

そして、最終的には「自分は被害者であり、周囲が悪い」という結論にたどり着く。

「ジャイアンが悪い。全部アイツのせいだ。なんで僕を雇ったんだよ……?」

のび太の頭の中で、ゆがんだ理屈がひねり出される。

「僕がどれだけ苦しんできたか、ジャイアンは知らないくせに。いや、知っていて、わざと雇ったんだ。アイツは僕を見下して、自分の成功を見せつけたいだけなんだ」

その考えは、武の行動のすべてを悪意という解釈に変える。

のび太にとって武が手を差し伸べた理由など、最初から存在していない。

その曇った脳内で、武は許しがたい敵となりつつある。

「静香ちゃんと結婚して、子供まで作って、僕の前に現れるなんて……嫌がらせに決まってる」

現実には、武はのび太のためを思い、どうにか立ち直らせようとしただけだ。

しかし、のび太はそんな善意を受け取れる心を持ち合わせていなかった。

逆に、その善意すらも「自分への攻撃」と解釈する。

「許さない……ジャイアンを絶対に許さない……。」

のび太は、これからも武に叱責される自分の姿を想像し、その度に憎しみが深まっていった。彼の中で、武は「幼いときから自分を傷つけ続ける存在」として膨れ上がっていく。

のび太の脳裏では、武に対する怒りと憎悪が巨大な渦を巻いていた。

「僕を、こんな目に遭わせた報いを受けさせる……!」

憎悪は次第に具体的な計画となり、のび太の中に確固たる決意が生まれる。

最初は曖昧だった思考が、夜を通して徐々に形を成していった。

「アイツを殺す」

その言葉を心の中で繰り返すたび、のび太は奇妙な興奮を覚えた。

自分が正しい、自分が被害者、だから武を罰するのは当然だ、という歪んだ正義感が彼を支配していた。

気がつけば窓の外は薄明るくなり、部屋の中に朝の光が差し込んでいる。

のび太は一晩中考え続けた末に、ついにその決意を固めた。

彼の顔は青白く、不健康な光を放っている。

「僕はもう黙っていない……」

のび太はベッドからゆっくりと起き上がり、荒れた部屋の中でぼんやりと立ち尽くした。彼の中にあるのは、一晩かけて育てた憎悪と、行動に移そうとする危うい衝動だった。

部屋の片隅に置かれた古びた机の上には、小学校時代に父親ののび助が映した写真が置かれている。

その中には、明るい笑顔を浮かべた小学生時代ののび太と武、スネ夫、そして静香が写っていた。

すでにこの時には武とスネ夫にいじめられ、静香にはそっけない態度をとられていたが、たまたま一緒にいたところをカメラ片手に通りかかったのび助が、仲よく遊んでいるのだと勘違いして撮影したのだ。

武やスネ夫、静香も、まさか父親の前でのび太を迫害するわけにもいかず、大人しく仲がよさそうなフリをしている。

のび太はその写真を見つめると、手に取って裏返した。

「昔のことなんかどうでもいい……」

彼の中で、過去は完全に断ち切られた。

残るのは武への憎悪と、報復の衝動だけだった。

続く

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