(序)
仮住まいで、工具類をダンポール箱に詰め込んでしまい、鉄道模型に限られないと思いますが、工具のないモデラーがいかに無力かを痛感しています。
ちゃぶ台すら出せない狭い部屋で諦めていたのですが、転居してから半年が経つうち、何でもいいから、自らの手を動かして模型工作をしたくて、たまらなくなりました。
まず、何を作るかは置いておいて、ドライパー、ニッパー、ピンセットなどの工具を買いました。
さらに、ハンダゴテ、糸鋸(金工鋸)も欲しくなりました。
ハンダゴテは、大洋電気産業のKS-60という鉛筆型の小手先の付いたもので、板金から配線まで様々なハンダ付け作業に愛用していた製品です。
糸鋸の方は、Amazonで見つけた、弓が非可動の固定タイプのものです。
これは、取り回しがし易く、刃も緩みにくいので、ずっと欲しかったものです。
さあ、これで一通り工具が揃い(ドリルがまだありませんが)軽易な模型工作は可能になりました。(こうした出費を模型購入費に上乗せするとすれば、結構な値段になってしまいますが)
そして取り出したのは、ヤフオクで手に入れた古い天賞堂のEF58、東海道型です。
ここで天賞堂のEF58形電気機関車の模型化の足跡について、少しだけ触れておきたいと思います。
天賞堂のEF58は、特定番号機化以前の古い時代、東海道型と上越型の2種類が発売されていて、どちらも製品番号はNo.481で同じでした。
また、足回りの構造については、時代とともに変遷があります。
ここでは、詳細には触れませんが、ギヤシステムの改良、使用モーターの変更により、つぎのような流れになります。
①「ウォーム」
棒形モーターを床上長手方向に積み、片方の台車にキアボックスを介してウォームギヤで伝導する。反対側の台車にも床下のユニバーサルジョイントで結ぶ。
同時代他社の縦型モーター、インサイドギヤ電動とは一線を画すモデルとして、天賞堂ブランドの価値を作ってきた要素の一つになったと思います。
②「MV-8 スパー」
床上中央に両軸モーターを積み、両方の台車にスパーギヤて電動する。
「ウォーム」と全く異なる新機軸の伝導装置は、その後の天賞堂電機の標準になりました。
③「カンフラ スパー」
ギアシステムは「MV-8」のままで、モーターを缶モーターに変更、モーター軸にフライホイールを付けて、ぎこちない動き(スタート、加速、ストップ)の解消を約束しました。
④「TAギヤ」
床上中央に両軸モーターを積むスタイルはそれまでと変わらず、ギヤロックスをエンドウのMPギヤのような、ウォームギアのねじれ角を45°にとったヘリカルギアを採用している。
安定した静粛な走り、すり減りの少ない壊れにくいモデルとなり、より安心して長時間運転に耐えれらるようになったと思います。
上記の説明に、大きな誤りはないと思いますが、微妙なところはあるかもしれません。
しかし、天賞堂EF58は、時代とともに、スムーズで静粛な動力システム化を目指して改良を重ねられてきたことには疑いの余地がありません。
かつて、天賞堂にエバーグリーン ショップがあったころ、ウインドウの中に数多く並べられたEF58には、商品説明文に「カンフラ」の文字が付されたものがあり、高級モデルへの憧れの気持ちが高じたものでした。(実際には、予算の範囲内で購入できるMV-8を包んでもらい満足して帰宅していましたが…。)
そんなでしたから、「TAギヤ」付きでなくても、「カンフラ」が欲しいところですが、今回購入したのは、天賞堂製品の中で最も古い「ウォーム」製品です。
これには訳があって、もともと未塗装ポディ(キットからポディだけ外したものか?)を所有していて、それを完成に持ち込むために、とにかく惜しみなく下回りを移植できる安価な中古品が欲しかったのです。
ところが、ヤフオクで買った商品の包みを解くと、出てきたEF58ウォームを眺めていて、急に気が変わりました。
ヤフオクの商品説明写真よりも状態は随分と良いように感じました。
しかも、前面警戒色の色彩が、以降のモデルでは黄色味が強く違和感を感じていましたが、このモデルは本当にクリームなのです(写真左)。
塗装の剥がれこそ多々ありますが、凹みや傷はなく、製造当初の状態からさほど崩れていません。
下回りを未塗装キットに充てるのをやめて、世に出た製造当初の状態に少しでも残してあげたいと思います。
その修繕の過程は、次回にさせていただきます。