水澄む(みずすむ)

三秋・地理/秋になって、河川や湖、池、沼などの水が澄むこと。


水澄みて金閣の金さしにけり  阿波野青畝


小学生のときプラモデルの金閣寺をつくった。色を塗らなくても金色にぴかぴかと見事に光っていて、かっこよかった。われながら単純な子供だな。

中学の修学旅行で本物を見たとき、でっかいプラモデルみたいだなと思った。木々の緑を背景にして、派手な金色が妙にうそくさかった。

うまく表現できないのだが、本物が偽物に見えてしまうくらい、実は感動していたのだと思う。存在感が強烈すぎて、現実のものとして受けとめきれなかったのかもしれない。

そのとき金閣寺がどんなふうに池に映っていたのかまったく記憶にないのだが、もしもそこに池がなかったとしたらどうだろう。

この句は鏡湖池あっての金閣寺の魅力を如実に伝えている。


阿波野青畝(あわのせいほ) 1899-1992年。奈良県生まれの俳人。高浜虚子に師事。水原秋櫻子、山口誓子、高野素十らと「ホトトギス」の黄金時代を担った。「かつらぎ」を創刊・主宰。


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