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マルクスとヘーゲルの思想・日常生活で感じたことを、エッセイ風に

翻訳 現状報告

2023-11-23 17:23:29 | マルクス・ヘーゲル

ごぶさたしています。

『資本論初版』の翻訳で、一区切りがついたこともあり、自分の防備録、兼、近況報告として、ブログを久しぶりに書きます。

翻訳の方は、8月末に、初版商品章、初版商品章の注、付録、初版交換過程章、初版交換過程章の注と、目指す部分の訳出を全て行いました。9月から訳出のチェックに取り組み、先ほど、初版商品章と初版商品章の注のチェックを終えました。

今まで出版された初版の翻訳本の全ての文に目を通し、参考になる場合には現行版の訳本(4冊)にも目を通しながら、最善の訳を目指しました。私自身の感覚によってしまいますが、現在使用されている日本語に馴染みやすいことを目指す一方で、簡易にすることが目的ではないので、ドイツ語の構造に出来る限り忠実にすることを旨として、出来る限り、日本語とドイツ語のバランスを取ろうとしています。

予備校講師をしていた頃は、テキスト作成チーフとして、訳文のチェックの最終責任を負っていましたが、そのことを思い出しながら、自分の訳文のチェックをしていました。私は専ら私大の長文を扱うテキストを担当することが多く、26歳で講師になり、その翌年にはテキストスタッフになり、その翌年には新たに作成されたテキスト作成チームのチーフになり、それからずーっと、20数年にわたって長文を扱うテキストの執筆とチェックを行ってきました。

そんな調子で英文と格闘していたのですが、今回、マルクスのドイツ語の訳出をするにあたって、ドイツ語の文法の学習を2012年から始めたにも関わらず、なかなか文の構造が取れないということが、たまにありました。英語においては、動詞と主語がひっくりかえったりする「倒置」が出現するのは稀で、文法の授業でも例外的なものとして扱うことになっていましたが、ドイツ語は寧ろ「倒置」が当たり前なんです。ただ、名詞の性とそれに対応する冠詞の形態がきちんと決まっていますので、名詞の性さえ分かれば、どの要素であるかは分かるわけですが、そのためには、その名詞の性が男性か女性か中性かを知らないといけません。ですから、当然、ドイツ語を学び直すに当たって、単語とその性を冠詞を含めて覚えることを始めましたが、ドイツ語の単語集に掲載されている単語は殆どが日常生活で使用する単語で、資本論で登場する単語は、ホントに僅かしか掲載されていません。数年努力しましたが、結局単語を覚えることに専念することはやめました。辞書を引き引き頑張ることにしました。

都合10冊程度の訳本を参考にしながら、全て新たに訳出しましたが、本当に不思議なのは、その訳者の内、牧野紀之さんと長谷部文雄さん以外は、翻訳に当たって、ここはこう解釈した等の感想なりを残していないのです。長谷部さんも『資本論随筆』という本で語彙の訳出に関して数点取り上げているだけで、文構造や内容などに関しては全く書き残していません。後日読んだ『回想の長谷部文雄』という本の中では、本人は「職人でありたい」と言い続けて、結局資本論に関する注釈なり解説なりは書きませんでした。その代わり、訳本に関しては何度も改訂しています。『原典対訳 マルクス経済学レキシコン』という抜粋形式の訳本を出した久留間鮫造さんも、著作の方で一部(例えば「二者闘争的」と訳すべきか「二重性」と訳すべきか、等)に関しては述べていますが、ほとんど書いていないに等しい。牧野さんくらいです、まともに疑問に思ったことを注で書き残しているのは。いや、本当に翻訳をした者は、疑問に残っていることは書き残して、後世の者にその解決を委ねないといけないと思います。

ということで、今度出版する訳本では、私が分からないと思っているところと、他の訳者と異なるところ等々、訳出面に関することをわんさか掲載するつもりです。つまり、資本論の翻訳に関しては、まだ解決されていないところがあるということです。

とりあえず、一応のチェックが終了したら出版しようと思っていましたが、やはり現行版(第四版)の訳出をしないと、初版の意義が半減するという思いが強くなってきました。ということで、初版の訳出チェックをしたら、次は現行版の訳出に取り掛かることにしました。来年の前半はそれに時間を費やすことになります。その後、チェックを経て、初版との対照をして、なんらかの形で、初版と現行版をまとめてみたいと思うようになりました。まあ、初めの計画が65歳までに出版と思っていたのです、それよりは早くできそうです。


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