カテゴリ:小説 マトリックス・メモリーズ
第11章 交換 3
果たして敵の残置艦隊は、私が思った通りペテルギウス守備艦隊と私達が最接近しても反撃する様子もなく、曳航艦に捕捉された。 パワー・オブ・ウォーウェアリネスの効果が有った事は間違いないが、それ以外にも何らかの事情か事態が有ったと思われるが、それが何だったかは定かではない。 何れにしても味方の被害はゼロで、敵戦闘艦65隻と空母2隻を捕捉出来た事はサラフィーリア様のお導きと言うしかない最高に幸運な戦果だった。 やがて、敵の残置艦隊はペテルギウス守備艦隊の捕虜収容艦を従えた曳航艦と共に、この位置から最も近い中立惑星で有るレギオナース星系のキナリに曳航されて行った。 「何ともあっけなかったですね」 「そうね、だけど戦いの本番はここからだわ!気を引き締めて行きましょう」 「そうですね、了解です!」 ハローズが私の言葉に同意した。 その後、ガルバラスとエルドラルドから、私達の的確な判断と勇気を賞賛する通信が入った。 「こちらレッドスコール!テンペスト、大ポータルから敵艦が続々と出て来ています!」 「本当だ!」 何気に指揮官達からの賞賛を喜んでいたハローズが、ジュンタールの連絡で慌ててレーダーを確認して後、思わずそう叫んだ。 「来るのが少し遅れてくれてラッキーよ!こちらの迎撃態勢も完了しているし」 「応援が来るまで、暫くはこの宙域で籠城ですね」 「ハローズ、今、何時?」 「21時15分です」 「何だ、敵が大ポータルを抜け始めたのは予定通りの時刻じゃない?ペテルギウス守備艦隊を待っても私達の到着がかなり早かったって訳ね。まあ、それが功を奏したんだけど。ところでハローズ、大艦隊から応援のワープ部隊の状況を報告して頂戴!」 「大ポータル出口の宙域からレーダーが届かないエリアで、現在、ワープ後硬直が治まるのを待っている状況です」 その時、ペテルギウス守備艦隊の旗艦ベロノアバ・オブ・レジェンドから指令が入った。 「全艦隊に告ぐ!連合大艦隊の先遣ワープ艦隊200隻は間もなくワープ後硬直が解ける。当宙域への到着予定時刻は23時30分!次報を待て」 通信は、それだけ伝えると切れた。 「23時30分か?敵が出口からこの宙域に超高速で来たら22時30分頃には戦闘開始に成りますね」 「先ずは1時間、絶えないとね!それより私達は距離が有るので非効率だけど、ポータルの出口付近を沈黙艦の山にしなくっちゃ!マスター、八木ちん聞いてる?ポータルから出て来たばかりで高速運航が出来ない敵艦を狙うよ!」 「由佳、俺の準備は万端だ!早く波動をくれ!」 「ユカちゃん、ボクの方もOKですよ」 「じゃ、パワー・オブ・ウォーウェアリネスをブチ込め作戦を再開!」 私は、パワーのキャッチボールを開始した。 「ハローズ、ポータルの出口付近で動かなく成った敵艦の数を数えてね」 「了解!後、当機とサンダーストームとレッドスコールとの位置関係や距離はこのままで良いですか?」 「ええ、このくらいお互いが近い方が確実だわ。一隻毎、着実に起動停止させましょう」 ハローズはその旨をサンダーストームとレッドスコールに伝えた。 「うぉ~!由佳、初弾が目標の敵艦に命中したぞ!この感触だと、近くにいた幾つかの艦にも一緒に命中している筈だ」 「やりましたね!八木沢さん!」 氷室の嬉しそうな声が、テンペストの機内にも木霊した。 「全艦隊に告ぐ!敵の第一陣がこの宙域に到着するのは22時30分と予測している。よって今より、各艦それぞれ最大防御態勢を構築する事!艦の損傷が激しい場合を除いて戦闘艇の出撃は別途指示するまで禁止とする!次報を待て」 「ハローズ、何故、戦闘艇を出撃させないのかしら?」 「恐らく勝負どころまで温存させる作戦でしょう。戦闘艇を早めに失えば、敵を攪乱させたりアンチャラプレーンに潜り込もうとする敵艇を追い払ったり等の機動力が使えませんからね」 「成るほどね。だけど戦闘艇が私達とガード部隊だけって言うのは、目立ってしまって集中攻撃を受けるかもね?」 「お~い、由佳!次の波動は未だか?」 「あっ、そうだった!ごめん、八木ちん、今から直ぐに送るから」 テンペスト、サンダーストーム、レッドスコールの三機はガード部隊に手によって、レモニアジャミング波シールドを再度展開すると共に、そのシールドの内側にゼロフィールド型バリアも構築して貰った。 更にミサイルの捕獲と破壊が可能な、グレースファイヤー式ネットの最新バージョンも張り巡らして貰った。 それでも愈々に成ったら、自慢の韋駄天で逃げるのみ! そうすれば敵は決して私達を深追いしないだろう。 何故なら、敵に取って攻撃目標は飽くまでペテルギウス守備艦隊だからだ。 それにしてもパワー・オブ・ウォーウェアリネスは、つくづく便利な武器だと思う。 敵が移動に一時間十五分も経かる距離、、パワー・オブ・ウォーウェアリネスなら一秒足らずで命中させられる。 その上、味方だけでなく敵のシールド、バリア、ネット等の防御システムに遮られる事もない。 パワーの充填と増幅に時間が経かる事を除けば、私にはパワー・オブ・ウォーウェアリネスは無敵の様に思えた。 「全艦隊に告ぐ!現在、ユウカ様達が順次、敵艦を沈黙させてくれてはいるが、何しろ敵艦の数は多い。現在のところ敵の第一陣は約千隻と予測。無駄玉は使わずに出来るだけ敵を引き付けてから攻撃せよ!次報を待て」 「何時まで、次報を待て!が続くのかしら?」 「ユカ、ウチがベロベロバーのガラパゴスに聞いてあげようか?」 三重の防御態勢が完成した事で安心したのか、それまで大人しかったマヤがここで減らず口を叩いた。 「そうね、マヤ、それは名案だわ!ガラぽん中将殿に次報がこれから後、何回有るのかを訊いて頂戴」 「嘘ピー!あ~あ、ウチもパワーが使えたら良かったのにな~」 「大丈夫よ。マヤは存在自体がパワーだから!」 「ユカ、ウチを慰めてる?」 ←ここをポチっと押して戴けると、この作者は大変喜びます。 ←PVランキング用のバナーです。ここもプリっと押して戴けると、この作者はプウと鳴いて喜びます。 ファンタジー・SF小説ランキング →ここまでグニュ~と押して戴けると、この作者はギャオイ~ンと叫んで喜びます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2023.04.28 15:12:58
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