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2022.10.16
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第6章 ゼブルズシャドウ 13


 「リノベーションをするのかと思ったら、これじゃ単なるリフォ-ムだね?」
 「前に棲んでいた大使の趣味が、あたしのセンスに合っていたのよ」
 「まあ、ミサトさんさえそれで良ければ僕には不満はないけど。それにしても、主なリフォ-ム箇所がガード達の休憩室とは?ミサトさんはやっぱり優しいんだね」
 「あたしは別に優しくなんかないわ。あたしの為のガーディアンだとしても、あたしは玄関先に人が立つ事に慣れていないから何だか落ち着かないの。だから待機場所を室内にして貰おうと思っただけよ」
 あたし達がシンガポールから東京に戻って未だ3日しか経っていないのに、スグルは重要な研究のひとつにアイデアが湧いたらしく、今夜、バミューダのソマーセット島に向かう事をあたしに告げに来ていた。
 ドバイとシンガポールでひと仕事が終わったので、スグルと何処かに小旅行でもして、ゆっくり話をしたり食事をしたいと思っていたあたしは、その事を知って急に機嫌が斜め気味に成っていたのだ。
 「ねぇ、スグル。ソマーセットにあたしも一緒に付いて行く事は出来ないの?」
 「ミサトさん、そんなに焦る必要はないよ。これから嫌でも僕に帯同して貰う機会が増える筈だし。先ずはここでの生活に慣れて欲しいんだ。それに葛アドバイザリーアライアンスにも一度は顔を出して貰いたいしね」
 「あたしがCEOだから会社には顔を出すけど、知っての通りあたし、会社の経営なんてズブの素人だよ」
 「はは、大丈夫!葛A.Aの経営については、楢崎って言う僕の会社の日本法人で役員をしている人に代行させているから、ミサトさんが実際に経営しても良いし彼に任せてもOKだよ。赤字には成らない仕組みにしてるしね」
 スグルはそう言うと、あたしに通帳と銀行印、それにキャッシュカードが入っている包みを手渡した。
 「この通帳に、ミサトさんの葛A.Aからの報酬が振り込まれるから」
 「もしあたしが仕事をしなくても支払われるの?」
 「勿論だよ!役員に就業規則は適用されないからね。でも恐縮する必要は全くないよ。この口座からこのマンションの賃料も引き落とされるから。残る金額はミサトさんが負担に思うほどの金額じゃないし」
 あたしは、残額が負担になるほど多額でも別に良かったんだけどと一瞬思ったが、それではスグルに依存し過ぎるので慌てて頭の中からその思いを掻き消した。
 「フリーレントじゃなかったんだ?」
 あたしは自分が思っていた以上に、金銭には未練がましかった。

 「このマンションの所有者は僕の会社だけど、一応、法人なので、長期間のフリーレントや譲渡や贈与では税務上の不利益が会社に生じるから。それに事情を知らない社員は、僕が女性を囲ったと思うだろう」
 「キャハハ、15歳の少年が24歳の女を囲ったって誰が思うと言うの?」
 「ジョークだよ、ジョーク。本当はマンションのひと部屋くらいミサトさんにプレゼントしたかったんだけど、ミサトさんと長いお付き合いをしたければ金銭的な支援はミサトさんが負担に思わない範囲に留めるべきだと言って爺やが譲らないものだから」
 執事のセバちゃんはあたしに現金やプリペイドカードを渡す時、あたしが負担を感じない金額にする様にとスグルから命じられていると言っていたが、実際は彼自身の考えだったのだ。
 「流石はセバち、いや爺やさんね。金銭的に甘えてしまって、あたしの依存心が膨らむと、しっかりとスグルをサポートする事が疎かになっちゃいそうだものね」
 「ミサトさん・・・」
 そう言ってあたしを見詰めるスグルの瞳は、あたしの言葉に感銘を受けた様に感じられた。
 「ついでに、休憩室を作って置きながら矛盾するみたいだけど、24時間のフルガードも止めて欲しいんだ」
 「えっ?何故?」
 「このマンションのセキリュティは超が付くほど厳重だから、どうしてもガードを言うのなら外出時だけで十分だと思うの」
 あたしは、成田を出発する時から考えていた事をスグルに伝えた。

 「いや、残念だけどそれは出来ないよ!ミサトさんはシンガポールで判明した通り、既にゼブルの影組織で有るフライから狙われているんだから」
 「でも、相手は天下のゼブルよ!シンガポールの件で分かる様に、彼らは周到な準備をしてから大掛かりな仕掛けを作って目的を果たそうするわ。あたしのマンションで寝込みを襲うようなチンケなギャングみたいな事はしないと思うの」
 「確かにフライはそんな安っぽい真似はしないだろう。だから僕もその点は心配してはいない。僕が心配しているのはミサトさんを拉致して、フライに高値で売り付け様とする知恵遅れの組織が有るかも知れない点だ」
 「そう言われると無下に断れなくなるけど、やはり2名体制のフルガードだと思わず気を遣ってしまうから、どんどん気分が重く成って行きそうだわ」
 「分かったよ、ミサトさん。じゃ、こうしたらどうかな?2名体制を1名体制のフルガードに変更する。そしてガーディアンにはセキレイやキキョウを付けるから、彼らから僕の近況とかの報告を受けて、もし何か僕にアドバイスが有ったら彼らを通じて知らせて貰う」
 「そうね、結局のところあたしは、成果の有無は別にして何時もスグルの役に立てる環境にいたいんだと思う。だから、今の話ならその体制は敷かれているので了解するわ」
 「良かった!」
 スグルはそう言うと、今から成田に向かうと言って玄関を後にしそうに成った。
 「一寸、待ってよ、スグル!まだ肝心な事を訊いていないんだから」
 「何?肝心な事って?」
 「マーセット島から日本に戻るのは何時に成るの?」

 「その事なんだけど、研究のアイデアって言うのは、それが物になるかどうかも分からないのでプロセス管理みたいな事が出来ないんだ」
 「何時戻ってくるか分からないって事?」
 「早ければ2週間で戻るし、遅ければ1年以上経かるかも知れないし・・・」
 「1年以上ですって?」
 あたしは驚いて、大声で叫んでしまった。
 「あっ、だから、結果が出なくても3か月後には必ず一旦は日本に戻って来るから!」
 「ふ~ん、3か月間もあたしを放ったらかしにする積りなのね。あたしは24歳の女盛りなのよ!大人しくスグルを待てるのは1か月が限度だと覚悟をして置いて頂戴!」
 あたしの発言が想定外だったのか、世紀の大天才に狼狽した様な仕草が見て取れた。
 「ミサトさん、僕は遊びに行く訳じゃないんだよ。ゼブルの魔の手から人類を守らなきゃならないんだ!」
 「ふ~ん」
 「あっ、そうだ!今度、日本に戻ったら二人で京都に行こう!丁度、調べたい事が有って、ミサトさんの助けが必要だから」
 「その調べたい事って、何日くらい経かりそうなの?」
 「うん、5日も有れば、何らかの手掛かりが掴めると思う」
 スグルと二人切りで4泊5日の京都旅行か?それは超ムフフかも?
 その状況を妄想してしまったから、あたしの頬がだらしなく緩んで隙だらけだったのだろう。
 スグルはつかつかとあたしに近付くとあたしを抱き締めた。
 「だから、3か月間は良い子にしていてね」
 そう言うと、スグルはあたしの唇に優しくキスをした。
 その時、あたしはスグルの何十倍も狼狽したらしく、我に帰った時には「分かった。良い子にしてる」と言ってしまった後だった。
 元々、3か月間とは言わず1年でも2年でも、悪い子に成るアテなどないのだから、少しゴネただけで、スグルとのファーストキスに加えて京都4泊5日の旅までゲット出来たのだ!
 この取引きに関して、あたしに不満が有る筈もなかった。
 この勝負、ミサトの勝ちぃ!


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    Last updated  2022.10.19 23:32:31
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