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2023.11.13
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第13章 真なる戦役 3


 「ええ~っ?どうして?」
 自身の両羽根が、少しずつ空間に溶けて消え始めている事に気が付いて、マヤは驚きの声を発した。
 「ヤバっ!ウチ、何か計算間違いをした?」
 マヤの三次元への降臨が解ける頃には、テンペスト機はワープトンネルを抜けて宇宙空間を漂っている筈だったからだ。
 「マジでマズいよ!若しかしてワープトンネルに繋がる空間の裂け目の場所が移動した?」
 マヤは色々な機器を操作して見たが、テンペスト機が未だワープトンネルから抜け切っていないと言う現実を変える事は出来なかった。
 マヤの二つの羽根は既に溶け終えていて、今は足先が溶け始めていた。
 「アッチャ~!トンネルの中じゃ救難信号を打っても意味が無いよ!トホッ!ウチの降臨がこんなサイテーな幕切れで終わるとは!」
 頭部が三次元空間に消えた瞬間にマヤの降臨モードは終了して、身体は元のエーテルボディに戻って、降臨元の上位四次元に存在する惑星ララに帰還するプロセスに移行し始めた。
 「ゴメンね、ユウカ!ハローズ!アンタ達を助ける積りだったのに、ウチがパープリンな計算間違いをしてしもうたみたいや!許せ!」
 その言葉が、マヤの降臨モードに於ける最後の言葉に成った。

 「マーヤ、気が付いた様ね?お疲れ様でした。思っていたよりもずっと早い帰還でしたね」
 「あっ、母上!只今、戻りました」
 マヤが瞼を開けると、母親のラッシーネが心配そうな表情で覗き込んでいる様子が眼に映った。
 「降臨明けだからコクーンは使わずに、暫くはここでゆっくり自然静養して頂戴!国王陛下にはわたくしの方からご報告をしておきますから、後で降臨中の出来事を聞かせてね」
 「ええ、かしこまりました、母上」
 マヤの寝室から去って行くラッシーネの後ろ姿を眺めながら、マヤは自身の故郷で有る惑星ララのパシェラ王国に帰還した事を実感した。
 同時に、使い慣れているエーテルボディだとこれ程まで楽で有る事も、マヤは痛感していた。
 自身の降臨中に様々な出来事が有ったけど、最も興味深かったのはアカシックレコードを探査中に、偶然、取り戻した過去世の記憶だったとマヤは思った。
 思い返せばウチが王女だったあの星は、四次元にアセンションする前の惑星ララだったに違いない!
 今と同じように妖精族が棲む世界だったし、ウチが指揮を執った国もピクシー族でパシェラ王国に瓜二つだった。
 マヤはそれらの諸点から、あの過去世の記憶がアセンション前の惑星ララで有る事を確信した。
 抑々、惑星ララは妖精が棲む星をして知られていて、天の川銀河の果て、東オリオンの腕宙域では最も早期にアセンションした惑星で有った。
 勿論、惑星と生命体分離型の一般的なアセンションだったが、妖精の霊性レベルが高い事と地母女神ララのアセンションに対する情熱の深さが早期のアセンションを実現させた。
 以前から、東オリオンの腕宙域の水惑星の中から次期の地球が選ばれると言う噂が絶える事は無かったし、その中でも母星で有る地母女神ティアマトが産んだ三姉妹、即ち女神ララ、女神テラ、女神セラが守護する3惑星が最有力候補だった。
 そして、最も早期にアセンションを終えた惑星ララが地球に選ばれると誰もが思った時、何故かしらオールザットイズは惑星テラを次期地球に指定した。
 やがて惑星テラが正式に地球に昇格すると、女神宗家は地球の地母女神をテラからガイアに交代させた。
 通説ではこの地母女神交代は、惑星テラが地球に昇格した直後に起きた、ニビル星アナンヌキのマルドゥークに依る惑星ティアマトの爆破事件に起因すると言われているが真偽の程は定かでは無い。

 「マーヤ嬢、惑星ララを代表しての三次元への降臨はご苦労で有った!女神宗家のユウカ様が母なるサラフィーリア様からパワーを引き継いで行使したのなら、恐らくフライズ軍との戦闘には勝利した事だろう」
 「国王陛下、本来ならフライズ軍との戦闘結果をご報告すべきなのに、事情が生じて途中で帰還してしまった事を深くお詫び申し上げます」
 「何の!マーヤ嬢は惑星ララだけでは無く、父親と同じ様に四次元世界を代表して従軍したのだから、その功績は非常に大きかった!ここに朕は、その褒賞として現在空位に成っているベルグスタン小公国の女公爵に貴嬢を封じる!マーヤ・ミルドレン女公爵は前へ」
 パシェラ王国ラインバッハ宮殿の大広間で、マヤは国王のシードライチ十六世からベルグスタン小公国女公爵の叙任状を受け取った。
 「過分なお計らいに感謝します。わたくしは未だ若くて未熟な者に過ぎませんが、陛下のご期待に沿える様、これからは誠心誠意を持って職務を全うする事をここにお誓い申し上げます」
 マヤの言葉に、大広間に集まっていた諸侯から大きな拍手が送られた。
 流石に国王陛下の前だったので自分の事をウチでは無く、わたくしと言ってしまった自分が、何となく可笑しくて笑い出しそうに成るのをマヤは必死で堪えた。
 「我々ピクシー族は小振りの身体ながら、マーヤ女公爵のお父上で有るロッキンガム・ミルドレン准帥も、やはり四次元世界を代表して三次元に降臨されてテッソン戦役を勝利に導かれた!惜しくも准帥はこの戦いでレーマンド大元帥の艦隊を撃ち漏らして戦死されたが、その勇猛果敢な遺志は一人娘のマーヤ・ミルドレン女公爵に引き継がれていると朕は確信している!」
  シードライチの話は更に続いた。
 「この所、争い事は三次元物理空間で起きて来たが、低位四次元のニビリアンズの勢力に怪しい動きが有るとの情報を四次元大銀河連合から受けている。備え有って憂い無しで有る!ついては朕はこれを機に大銀河連合軍の指導の下、我がパシェラ王国にも軍団を創設する事にした」
 このシードライチの決意表明に、集まっていた諸侯から驚きと賞賛する声が上がった。
 「そして、その軍団の総司令官にマーヤ女公爵を任命したい!」
 国王のその言葉で、一瞬にしてラインバッハ宮殿の大広間は凍り付いた様に皆が静まり返った。
 「陛下、お待ち下さい!光栄の極みで身に余るなお言葉ですが、わたくしはベルグスタン小公国の女公爵に任命されたばかりで、先ずはその国の統治に全力を挙げなければ成りません。従ってパシェラ王国軍の総司令官には、是非、他の方にお願いしたいと存じます」
 「その事は何の心配もいらんよ、マーヤ女公爵。軍団を創設すると言ってもその準備には相当な時間が掛かるし、貴公が総司令官に成るのは軍団が厳しい訓練を受けて一人前の軍団に成ってからの話だ」
 「陛下、時間的な余裕が有る事を知って、少しばかり安心しました。軍団が熟練した頃には、わたくしよりももっと適任の方が見つかる筈ですし・・・」
 「マーヤ女公爵。貴公の気持ちは分かるがここは祝いの場だ。今日の所はそう言う事にして置いて呉れ」
 シードライチの言葉が社交辞令だったと分かって、大広間に集まった諸侯から安息の溜息が洩れた。
 「それはそうと、朕はもうひとつマーヤ女公爵の望みを叶えたいと思っている。何か望みが有れば、遠慮無く申してみよ」
 「恐れながら、わたくしは三次元に降臨中、降臨が解けた為に大切な仲間を或る惑星に置き去りして来ております。ついては彼らを救出したく、わたくしのウォークインについてお力添えを賜りたく存じております」
 「何と!ウォークインだと?降臨が解けたばかりだと言うのに、また三次元に戻ると申すのか?」
 「ええ、その置き去りした惑星は、三次元物理空間の狭間に封印されていて、恐らく三次元のライツ軍では救出が難しいと存じております」
 「空間の狭間に封印されているのか?」
 「はい。その惑星は、マルドゥークがティアマトを爆破した時に消えたと言われている惑星セラに間違いが無いと、わたくしは確信しております」
 「惑星セラだって?セラだったら、我が惑星ララ星の姉妹星では無いか?」
 大広間の諸侯が、再びざわめき始めた。
 「う~ん、状況は理解したが、降臨は王室が大銀河連合と協議して決める事項だが、ウォークインは女神の専決事項だ。我が惑星ララで女神属性はウンディーネ族しか居ないが、族長のスウィンに許しを請う積りか?」
 「ええ、その通りです、陛下。陛下からスウィン聖巫女宛てにわたくしのウォークイン推薦状を賜りたいのです」
 「うむ、推薦状を書くだけなら容易い事だが、スウィンは孤高の巫女として名高い!そんなに簡単にウォークインを許可するとは思えないが・・・」
 「その点はご心配は無用です。陛下の推薦状が有ればスウィン聖巫女は必ずわたくしと会って下さいます。そして、わたくしが事情を話せば彼女は許可するでしょう。何故ならわたくしが置き去りにした仲間の一人が女神宗家の娘、ユウカ様だからです」
 「本当に、女神宗家のユウカ様が惑星セラに置き去りにされているのか?」
 「ええ、その通りです、陛下」


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    Last updated  2023.12.22 00:07:04
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