初めてのスーツを手にするタイミング。
多くの方の場合、それは大学や専門学校の入学式前ではないでしょうか。私もそうでした。また進学ではなく就職するにしてもスーツが必要となってくる場合が多いので、やはり初めてのスーツは高校卒業の前後というのが一般的なようです。
実は私の義弟(妻の弟)も現在高校3年生で、彼は早いうちに推薦で大学進学を決めています。そして例に漏れず入学式の際に着用するスーツが必要となったので、そのアテンドを任されることになりました。
そこで今回の記事では私が義弟のために選ぶ入学式用に買うべきスーツのポイントをご紹介していきます。高校卒業を控えた当事者だけではなく、私のように購入のアドバイスをする立場の方にもご覧いただければ幸いです。
なお、当サイトはメンズファッションブログで、普段はやや専門的な内容も書いていますが、この記事はより幅広い方に読んでいただきたいので、あまりマニアックになりすぎないよう、できるだけ分かりやすくお伝えできればと思います。
(追記)思いの外ボリュームのある記事になってしまったので、お急ぎの方は「目次」から最後の「まとめ」に飛んで概要をご覧ください。
新・大学1年生が買うべきスーツとは?
入学式だけじゃない
入学式のタイミングに必要と迫られて初めてのスーツを買うことになるのですが、その機会を終えたらお役御免というわけでは当然ありません。そこで一般的な大学生が入学式以降にスーツを着用する場面をいくつか挙げてみましょう。
■成人式
数年前に成人年齢が18歳に引き下げられましたが、ほとんどの自治体では「はたちの集い」などと名称を変えて現在でも20歳を迎える学年を対象に式典を実施していますね。そして今でも男性の場合は一部の和装派を除きスーツを選ばれる方が圧倒的多数派です。ちなみに私はド派手成人式で有名な北九州市の出身ですが、大学の入学式用に買ったスーツで参加したと記憶しています。
■就職活動
いわゆるリクルートスーツなる物を別で用意する必要はありません。選び方を間違えなければ入学式で着ていたスーツをそのまま使っても何ら問題はないでしょう。なお、リクルートスーツのあり方については別記事で詳しく書いていますので、興味のある方はご覧ください。
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■就職後
就活時の消耗具合によりますが、できれば就職後にも使えるようにしておきたいところ。スーツ着用の職場であればそれに加えて2~3着を買い足し、最近増えてきたスーツ着用義務のないオフィスカジュアルな職場でも稀にスーツが必要となるケースも起こりうるので、学生の頃に使っていたスーツを大切に保管しておくときっと役に立ちます。
つまり目の前の入学式で体裁を取り繕うためだけではなく、もっと長い目で見てスーツを選んでいただきたいのです。一生モノとは言いませんが、それなりのスーツは手入れをすれば5年・10年と着続けられます。
どこで買う?
ファッションブロガー目線だと普段なら名前の挙がることない紳士服量販店(青山・アオキ・はるやま等)でも後述するポイントを抑えれば適切なスーツを選ぶことは可能です。ただ、それらのお店は10代後半・20代前半の若者が着るにはオジサン臭い物も多く混じっているので、同じ量販店でもスーツセレクトやオリヒカなど若年層をターゲットにしたお店の方がしっくりくる物が見つかりやすいかもしれません。
より感度の高いスーツを求めるならセレクトショップを利用するのも手ではありますが、やはりそれなりに値が張ります。それを踏まえて個人的におすすめしたいのはユナイテッドアローズ系列のグリーンレーベルリラクシングのオリジナルです。ベーシックなデザイン、本物志向の生地使い、そしてコスパの高さには目を見張るものがあります。地方都市でもショッピングモールや駅ビルに入店していることがあるので、比較的に利用もしやすいかと思います。
また、最近はリーズナブルなオーダースーツ専門店が増えているので、興味のある方は初めてのスーツはオーダーでというのも良いかもしれません。私自身も経験のある麻布テーラーやグローバルスタイルは初心者の方でも安心して利用できます。ただ、発注から受け取りまで余裕を持って2ヶ月は見ておきたいので、時期的にそろそろリミットです。
逆に避けた方が良いのはデザイン性の強いファッションブランドのスーツです。ファッション好きで私服で着ているお気に入りのブランドであってもシルエットや生地の色柄が個性的なスーツは入学式やその後の用途には適していません。スーツスタイルは単なるファッションではないので、他の人と違い目立つことは良しとしません。つまらないと思ってもベーシックな物を選びましょう。
予算
初めてのスーツは自身でというよりは両親や親族の方がお金を出してくれる場合がほとんどだと思うので、その方々の懐具合次第ではありますが、目安として4~5万円は考えていただきたいところです。量販店の広告で「〇〇セット 8点込々 3万円」なんて見かけるので、それと比べると随分高く感じるかもしれませんが、やはりそういう物は値段なりです。おそらく生地もポリエステルなので、見る見るうちにみすぼらしくなるでしょう。ある程度長い目で見るのであれば、天然素材の生地を選んでいただきたいので、どうしても価格は上がってしまいます。
一方で10万円を超えるような高すぎるスーツも考えものです。初めてだからこそ良い物を知ってもらおうとういう考え方も個人的には理解できますが、あくまでも本人が将来的に継続して購入可能な価格帯で選ぶべきです。私のような着道楽は10万円程度スーツであれば嬉々として買いますが、多くの人は服にそこまでの金額を割くことはできませんよね。
そうするとやはり予算4~5万円前後という金額はクオリティと価格のバランスで考えると妥当なラインではないかと思います。
色柄
調べたわけではありませんが一番人気はおそらく黒になるのでしょう。しかし私が選ぶのであればネイビー一択です。なぜか日本では勘違いされがちですが、そもそもブラックスーツはフォーマル(冠婚葬祭)でのみ着用すべきものです。式典という意味では入学式や成人式であれば黒も悪くはないのかもしれませんが、少なくとも就活を含めたビジネスシーンまで見据えるのであれば、ブラックスーツは適していません。それに入学式にしても成人式にしても式典といっても雰囲気としてはだいぶカジュアル寄りなので、そこでも黒よりネイビーが合うかと思います。
また、ひとえにネイビーといっても暗いものから明るいものまで色のトーンは様々ですが、おすすめはダークネイビーです。入学式や将来的なビジネス使いだけを考えると明るめのネイビーでも全く問題はないかと思いますが、就活時に着用するいわゆるリクルートスーツは多くの方が(個人的にはNGですが)黒を選ぶ傾向にあるので、周囲から浮かないように色味の深いネイビーが使いやすいかと思います。
あいにく適当なダークネイビーのスーツが手元にないので、他所から参考画像を拝借しましたが、イメージとしてはこれぐらいの色味が良いのではないでしょうか。暗いといってもほぼ黒のような色味はちょっと違います。
ついでに黒とネイビーと並びスーツの定番色であるグレーについても触れておきましょう。個人的にはグレーは大好きです。最近だとスーツに限ってはネイビーよりも好んで選びます。とはいえグレーは落ち着いた雰囲気が強いだけによく言えば貫禄があり、悪く言えばジジ臭いので、二十歳前後の方であればネイビーの方が似合うかと思います。
それと柄については当然無地がベターです。社会人になり複数のスーツを所有することになった際にはバリエーションとしてストライプやチェックも欲しいところではありますが、最初のスーツは無地にしておきましょう。地味に感じるかもしれませんが、例えば成人式で着用する際にもう少し華やかに装いたいのであれば、シャツやネクタイをそのような物に変えれば良いのです。逆に柄物のスーツだと色々と制約がかかりコーディネートの幅も狭まります。汎用性の高さは無地スーツの利点でもあります。
素材
安価のスーツだと素材はポリエステルなどの化学繊維100%か天然繊維が使われるているにしろ比率は半分以下の場合がほとんどです。先に述べましたが、入学式だけではなくある程度長い目でみるのであればウール100%の生地が正解。
伝統的に紳士服の生地に使われてきたウールは美しい見た目だけではなく、耐久性や防臭性などあらゆる機能面でも優れています。遠目だとポリエステル生地との違いは分からないかもしれませんが、ある程度近づいて見ると、そして実際に着用してみるとその違いは如実に感じ取ることができるはずです。
最近よく見かけるストレッチの効いた生地は不要です。ちゃんと身体に合ったスーツを選べばストレッチ機能なんてなくても十分快適に過ごせます。
また、同じウール素材でも生地の織り方や加工の仕方が異なれば全く用途が異なります。一番分かりやすいのは季節感で、秋冬向けであればしっかりと厚みがあって表面がわずかに毛羽立っている生地が多く、春夏向けであれば比較的に薄手でざっくりと織目の洗い生地が多くなります。これから買うのであれば売れ残りの秋冬物か徐々に増えてくる春夏物が店頭には並びますが、選ぶべきはそのどちらでもなくいわゆる通年物です。理由は簡単。入学式こそ春ですが、次の出番である成人式は真冬、その次の就活は春から夏にかけて行われるので、オールマイティな活躍が求められるからです。
また、季節物の生地は「ざっくり」や「ふんわり」などカジュアルな表情がありますが、ここで探しているスーツはより端正でドレッシーな趣が相応しいので、表面は「つるつる」として光沢のある生地が良いでしょう。具体的に例を挙げるとサージという生地になります。名前を聞いただけだと分かりにくいかと思いますが、学生服で使われている生地をイメージしていただければある程度見当がつくかもしれませんね。
サージは一般的に通年物と分類されるので、この生地を選んでおけば間違いありません。慣れてないと店頭では見分けが付かないはずなので、そこは素直に店員さんに「通年物のサージ生地を探している」と伝えてください。それで伝わらないようであればそのお店はやめたほうがいいでしょう。
シルエット
興味のない方からしたら気が付かないかもしれませんが、スーツに流行り廃りは存在します。一昔前であれば身体に沿ったスリムシルエットで、ジャケットの着丈もお尻が見えるぐらいの軽快な短丈が好まれていました。一方で最近はクラシック回帰の流れもあり、ファッショニスタの間ではゆったりとしたスーツが人気を集め、十数年前であればダサいとさえ言われていたプリーツパンツはいまや主流です。
度々繰り返しにはなりますが、ある程度長いスパンで着用することを念頭に入れておきたいので、極端にトレンドライクなスーツは避けるべきでしょう。なるべく時代に左右されないベーシックなシルエットが無難で、それは若い方であれば適度にスリムなスーツがおすすめです。
今の時代だと細すぎるスーツはあまり置いていないはずなので、スリムやレギュラーと分類されている物であれば大丈夫かと思います。流行っているからといってワイドシルエットなんかに手を出すと失敗する確立は高くなるので要注意。
スーツ以外のアイテムについて
当たり前ですが、スーツ意外にも買い揃える物はあります。シャツ・ネクタイ・ベルト・ソックス・革靴あたりですね。鞄は就活の時までは別になくても問題はないでしょう。
この中で特に気を付けていただきたいのは革靴です。スーツやシャツ、その他小物は量販店で揃えてもらって構いませんが、革靴だけは例外。紳士服量販店の革靴も意外とそこそこ値段ではありますが、包み隠さずに言うと「ちゃっちい」です。詳しく話すとマニアックになりすぎるので割愛しますが、素材も作り方も価格と全く見合ってないというのが私の感想です。
「餅は餅屋」ではありませんが、やはり革靴は専門店か百貨店の紳士靴売り場で買いましょう。もちろんピンキリの世界なので上を見たらきりはありませんが、界隈では比較的に良心的な国産のリーガルやスコッチグレインあたりを選べば多少高い買い物となっても長い付き合いができることになりますよ。
まとめ
随分長々と書いてしまったので、最後に要点だけまとめておきましょう。
- 入学式だけではなく、成人式・就活・就職後まで見据えたスーツを選ぼう。
- ポイントを押さえれば紳士服量販店でもOK。どこで買うより何を買うか。
- デザイン性の強いファッションブランドは避ける。スーツスタイルは目立ったら失敗です。
- 予算は4〜5万円は必要。ただし、高すぎるスーツもNG。あくまでも将来的に本人が購入できる範疇の物を。
- 色は黒ではなくネイビー。特に色が濃いめのダークネイビーが就活シーンでは使いやすい。もちろん無地。
- 素材はウール100%で通年使えるサージ生地なら時期や場面を選ばない。
- スーツにもトレンドはあるが、時代に左右されない適度なスリムシルエットが無難。
- 革靴だけは紳士服量販店の物は避けるべし。多少のコストをかけても専門店で購入すると後々幸せになれるかも。
ざっとこんな感じでしょうか。この記事では「大学の入学式で用意すべきスーツ」をテーマに書いてきましたが、仮に前提条件が「成人式で〜」や「就活で〜」となった場合でもほぼ同じ内容になるのでしょう。
日本のスーツ業界は販促のために「〇〇向け」と用途別にカテゴライズしがちですが、結局のところ必要とされる要素はどれも一緒なので、最初の1着目で間違いのないスーツを選んで頂ければと思います。
「安物買いの銭失い」とならぬようにとういのはファッションブロガーとしてではなく、社会人歴十数年のひとりの大人としてのアドバイスです。
今回は以上です。