ただ一人全勝できた関脇御嶽海に土がつきました。破ったのは平幕の北勝富士(ほくとふじ=西前頭4枚目)。
立ち合い、両者が低い角度からガツーンと激しくあたって押し合い。先に攻めたのは北勝富士。左、そして右からおっつけると、御嶽海の腰が次第に伸び、そこを一気に押し込みました。
北勝富士の相撲は見事の一言に尽きますが、前日まで盤石だった御嶽海の勢いはどこに行ったのか。
勝負を分けたのは、勝負に挑む両者の気持ちの違いだったと思います。
横綱が 敗れ、全勝は自分ただ一人。3度目の優勝、大関昇進も見えてくるなかで、御嶽海の緊張は高まり、ここは負けられない、と、構えは守りに入っていました。
一方、挑戦する北勝富士は、ここまでまだわずか3勝。優勝どころかこれ以上失うものは何もなく、勝つしかない。
相手は、同年齢で、大相撲界に入る前から競い合ってきたライバル。対戦成績はここまで10勝12敗。〝彼にだけは負けたくない、やれる、やるぞ〟という、燃えるような闘志だけだったのではないか。
守りに入った力士と、攻める気持ちしかない力士の差。これが勝負を分けたという見方は、うがちすぎでしょうか。
横綱や大関など上位でたたかってきた力士の話をいろいろ聞いてきました。誰もが指摘していたのは〝気持ちが守りに入ってしまうと、相撲までて小さくなってしまう〟というものでした。
御嶽海関は、諸先輩からこうした話をたくさん聞いてきたはずです。
それを思いだし、かみしめて、最終盤の土俵に上がるしかないと思います。