長年相撲の取材にかかわってきたせいか、ブログを書く時でも、できるだけ客観的にと思ってきました。
ただ、今場所はその建前をちょっと外します。
この春場所、元大関で、現在東前頭4枚目の高安(たかやす)関に、なんとか優勝してもらいたい。熱烈に願っています。
8日目は横綱の豊昇龍を破り、9日目は大関琴桜を下手出し投げで転がしました。
そして10日目。同じ1敗の大関大の里と対戦。低く踏み込んで頭からガツンと当たり、最後は一気に寄り立てました。
力こもった相撲に、伸び盛りの大関が圧倒されました。
これで単独のトップ。優勝争いがどう展開されていくのかわかりませんが、勢いある力強い動きで一気に行きそうな気配も伝わってきます。
肩入れする理由がいくつかあります。
何度も優勝争いを繰り広げながら、最後の最後に及ばず、あと一歩を何度も繰り返してきた元大関だからです。
最近の大関で優勝まで届いていないのは、確か高安だけじゃないですか。
それでも、35歳になった今でも「やり残したことがある」と、あきらめずに頑張っている。
大関昇進前から彼を見てきた自分としては、なんとか優勝杯を抱かせてやりたいのですよ。
以前、高安の出身地の茨城県土浦市で、高安を応援する方に聞いた話が忘れられません。
新弟子時代、稽古がつらくて、所属していた鳴門部屋(当時は千葉県松戸市)から故郷の土浦まで自転車で逃げかえり、早朝の公園でしょんぼりしている姿を何度か見てきたそうです。そして父親などにさとされて、また部屋へもどる。
そんな力士が歯を食いしばりながら稽古を積み重ね、ついに大関へ。しかし故障で優勝にも横綱にも届かず、大関を陥落。
それでもあきらめず、今が「い相撲が取れて達成感がある」「一番楽しい」という。
しびれます。こんな力士のコメントはあまり聞いたことがありません。その元大関に、幕内の最高優勝の栄誉をぜひ味わってもらいたい。
肩入れしすぎですが、今回は勘弁してください。