車中泊

昨晩のメジャーリーグの試合、大谷選手はホームランを打ったそうだ。

残念ながら、道場稽古だったのでそのシーンを見ることはできなかった。

そのボールを得たのは10歳の少年だったそうだ。

一生の思い出になったことだろう。

私も観戦に行こうとチケットの申込みをしたが、すべて外れた。

メジャーリーグの開幕戦が日本であること自体、奇跡的なことだ。

しかも、日本人選手が投打の主力として出場した。

こんな機会は二度とないかもしれない。

さて。

facebookには、過去のその日の投稿が上がってくる機能がある。

ちょうど一年前、車中泊に行った投稿が上がっていた。

私にとって、私たちにとってそれが最後の車中泊となった。

車中泊は私にとって馴染み深い。

妻と付き合っているときから、それは始まった。

旅好きだが、貧乏だったがゆえに、出てきたアイデアだった。

車で寝泊まりすれば、宿泊代が浮く。

二人でいろんなところを旅したものだ。

私が車の免許を取ったのもその頃だった。

20年近く前になる。

当時は軽バンに乗っていた。

それにはちょうどシングルの布団が敷けた。

大人二人が寝るにちょうどだった。

そう言えば、当時、そのシングル布団で家でも二人寝ていた。

私たちはそれほど貧乏だった。

暖房器具も買えなかったくらいだ。

今考えるとなかなかすごい。

パラパラ漫画家の鉄拳さんの「振り子」という作品に、家の中でふたりが布団を被って過ごしているシーンがあるが、まさにそんな感じだった。

この作品はいつ見ても涙が出る。

その時代があり、今がある。

その時代はその時代で楽しかったし、今も昔も人生は充実している。

その時代を、苦労したとも、嫌だったとも思うこともない。

もしまた貧乏な時代に戻ったとしても、私は別に何とも思わないだろう。

それはそれで楽しむはずだ。

私が価値を見出すのは、物質的なものではないからだろう。

話が逸れた。

子どもが生まれ、車も大きなものに変わった。

その車にはクイーンサイズの布団がちょうど乗り、家族三人で車中泊に出掛けることができた。

家族三人になってからも車中泊はよくやった。

今は車中泊の車を本当によく見かける。

私たちが車中泊していた頃は、ほとんどいなかった。

ちょうどコロナ禍前くらいだろうか。

一気に車中泊する人たちが増えだした。

道の駅をよく利用させてもらったが、阿蘇の辺りの道の駅は満車になるようになった。

コロナ禍に入り一気に車中泊する人たちは減ったが、コロナ禍が明けると昔を超えるほど車中泊の人たちが増えた。

インターネットで情報が溢れ、何をやるにも敷居が低くなった。

誰でもが車中泊をやれるようになったのだ。

これは車中泊に限らず何にでも言えることだ。

車中泊も誰でもやれなかったから、やっていたところがあったのだ。

昔は情報が少なかった。

その少ない情報を手掛かりに、いろんな工夫をして自分でやることが楽しかったのだ。

みながやり出すとやりたくなくなるのが、私の性。

誰でもやれるものをやっても、楽しいことはない。

工夫も何もない。

考えてやり繰りするところが楽しいのだが、その楽しさが大きく損なわれてしまった。

その頃くらいから車中泊にはほとんど行かなくなった。

私はよほど人と同じことをやるのが嫌いなのだろう。

窮屈なのもきらいだ。

以来、旅に出ると、旅館やホテルを取るようにした。

というわけで、一年前の車中泊が最後となったわけだ。

車中泊は車中泊でとても楽しかった。

いろんな思い出がある。

人がやらない旅が楽しいのだ。

考えに考え、調に調べ。

今はそれが省略される。

同じことをやって何が楽しいのだろうと思う。